4 生きるために食べる
クロウサギを倒したぞ。
RPGじゃないんだから、ゴールドとかは落とすはずがない。
でも、経験値は入ってるんだろうか? レベルって概念があるんだから経験値ってのがあっても不思議じゃないよな。
そうじゃないとどうやってレベルアップするんだってことになる。
クエスト制だったら嫌だな、森のなかにいたらレベルが上がる望みがなくなる。
別に経験値のために倒したわけじゃない。
生きるためだ。
すなわち食料ってわけだが、このままじゃどうしようもない。
俺は前にどこかで見た微妙な知識に従って、ウサギから血抜きを行った。
ウサギの首筋をサバイバルナイフで切りつけると血が吹き出してきた。これだけでずいぶん気分が悪くなってきたが、そんなことは言ってられない。
そのままバイクから取ったスポークでウサギを木に吊るして血抜きを行う。
内蔵を切り出したり、毛皮を剥いだりという気持ち悪くなりそうな作業を延々と。
こういうことにも早く慣れないとな。
なんとかウサギが肉塊となったので、今度は火を起こす用意だ。
落ち葉と枯れ木を集めてきてチャッカマンで火をつける。
正直言ってチャッカマンとかライターとかなかったら途方に暮れていたところだ。
木を擦って火を起こすとか絶対無理だって。
チャッカマンも永遠に使えるわけじゃないんだよな。その時までに人里に行き着けなかったらどうしたらいいんだろうか。
なんとか火を起こせたのでスポークに刺したウサギを焼くことにした。本当は適度な大きさに切り分けたいんだが、とてもそこまで俺のメンタルが持ちそうにない。
きっと焦げたり生焼けだったりするだろうが、一部でもまともに食べれたらそれでいいことにしたい。
ウサギが焼けると香ばしい匂いがしてくる。大いに食欲をそそる匂いだ。
焼けた肉の塊をフォークで突き刺して、サバイバルナイフで適当に切り分ける。
そして適当な肉片に焼肉のタレをつけて食べる。
焼肉のタレの味としか言いようがないな。微妙なウサギ肉の味わいとかはわからない。
やや生臭さはあるけど気にして食べれないほどじゃない。
そういえばラビは……これ食べないよな。もともと肉食じゃないし、ウサギ肉だし。
ラビは適当にまわりの草を食べているようだ。とりあえずラビの分の食料は気にしなくてもいいのが助かるな。
とりあえず、腹が満ちた。でも手とか血だらけになってしまったし、洗いたいんだが……枯れ葉で手をぬぐっておく。
残った肉をラップで包んでリュックに放り込むと、俺は再び歩き始めた。
なんとか、川か池かで水を確保したいところ。
ペットボトルに烏龍茶がまだ1/3ほど残ってるが、これを飲み終わると本格的に飲料水の心配をしないといけなくなる。
そのまましばらく進むと川を見つけた。
この水飲んでも大丈夫かなと思っていたが、向こう岸で鹿のような動物が飲んでいるので大丈夫そうかな?
鹿かぁ、倒すの大変そうだなぁ。とりあえず今はまだ肉があるので冒険は避けようか。
水もそのまま飲料水として大丈夫かどうか不安があったので、一口だけ飲んで様子を見ることにした。
俺は血で汚れた手を洗い、そして考えた末にリュックの中の汚れた下着も水洗いしておくことにした。
今日はこの川の近くで夜を明かすことにしたのだ。
再びスマホを眺めてみるとこの川と同じと思える川も表示されている。地形は日本のままと考えてあっているようだ。
とりあえず、このあたりでは危険そうな魔獣は出てきなさそうだ。
ウサギや鹿といったおとなしめの動物が多いこのあたりならまだ安全であろう。
これから先も安全とかそれほど楽観的ではいられそうにないからな。
「おやすみ、ラビ」
「キュイ」
夜は焼き肉の残りを齧った後、ラビを抱いて木陰で寝ることに。ラビのもふもふが心地いい。
こんなところで寝るのは不用心このうえないが、どうしようもないだろう。
どうやら昼と夜との寒暖の差も少ないようだ、異世界だからなのか、たまたまそういう季節なのかはわからないけど。
一夜明けて生きてることに感謝。
寝ているうちに襲われたりしてなかったようだ。
お腹も痛くなってないし、水も飲んでも大丈夫そうだな。
ステータスを確認してみると、
☆★☆
堂島雅史:レベル1
HP:250/250
MP:168/168
種族:人間
職業:ビーストテイマー
状態:平常
スキル
魔獣使役:レベル1
キツネの精霊の加護
使役魔獣
ラビ:レベル1
☆★☆
☆★☆
ラビ:レベル1
HP:59/62
MP:20/20
種族:プチシロウサギ
職業:なし
状態:平常
スキル
なし
☆★☆
俺の方はHPもMPも全快、ラビの方はHPが少し全快には届いてなかったがほぼ回復していた。
どうやら少しくらいHPやMPが減っても自然回復で十分なようなので一安心だ。
俺は朝食もウサギ肉の残りを食べる。中のほうが少し生焼けだったようで、そこは食べずに保留。
今日ちゃんと次の分が取れればいいが、そうでなければこの生焼け部分を再度焼いて食べよう。
俺は、このまま川沿いに下流へ向かうことにした。