16 絆
念話で意思疎通ができるようになったことで、ナナミからこの世界のことをいろいろ教えてもらえるようになった。
ちなみにナナミは故郷の狐人の村から旅立って、この先の町へ向かっている途中で、俺たちと出会ったのだそうだ。
この世界には俺のような人間以外に、ナナミのような獣人が何種族かいるらしい。
もしかしてエルフやドワーフも? って聞いたが少なくともナナミの知識にはないそうだ。少しだけ残念。
(この赤い宝石みたいなものってなんなんだ?)
(魔獣の核って言われてます。わたしは持ってませんが、魔道具に必要なので高く売れますよ)
(ふーんそういうものなのか、よくグレイは知ってたな)
(うぉん)
俺はグレイを思いっきりモフってやる。
(あっと、ナナミのほうもモフらないと……)
(ふえっ、別にモフらなくても……)
(ダメだ、思考がだだ漏れだ……)
ナナミが真っ赤になっている。俺は慌てて「念話終了」と念じて念話を終了した。
沈黙が流れる……
「ごめん、念話使う時は気をつけないとな」
「○○○○○」
いかん、念話を切ってしまうとまったく今のフォローができないじゃないか。
しかたなく、「念話開始」と再び念じて念話を通じるようにしておいた。
(ごめん、念話切ったらまったくダメだな。考えがダダ漏れになっちゃうから、気をつけるよ)
(え、今切ってたの? じゃ、今のはまったく聞こえてなかった? よかった……)
(切ってた間になにかあったのか?)
(マサシに撫でられるの気持ちいいからとか聞こえてなくてよかった……きゃー、聞こえちゃった)
(ごめん、聞こえちゃった)
(うー……いや、恥ずかしい)
(……)
(……)
(こら、グレイ。なんか空気を読んで席をはずさなくてもいいから)
こっそり離れようとしていたグレイを俺は引き止める。
(どうしよう、念話は普段は切っておいたほうがいいかな?)
(でも、ないといろいろ困るわよね。意思疎通できないし……)
(そうだ、これから町とかに着いたら必要になるし、こちらの言葉を俺に教えてくれないか?)
(そうしましょう)
それからは念話で伝えた内容をナナミが言葉でも伝えてくもらい、俺がそれを反復するって感じで少しずつ言葉を覚えていった。
その都度、いろいろ思考がダダ漏れしてたけど、それもなんとなく慣れていった。
まぁ俺がナナミに好意以上のものを感じてることは自然と伝わって行ったはずだし、逆にナナミの気持ちも十分に伝えられた。
それに混ざって俺のスケベな妄想がナナミに伝わって軽蔑されたり、ナナミのエッチな思考が伝わってその都度、ナナミは顔を真っ赤にしていたものだ。
こんな風に知性ある者同士が、完全に意識を共有することになると、その二人は結ばれるか、破局を迎えるかの両極端の選択しか残ってないようだ。
幸いなことに俺とナナミはいい方向に進むことができたようだ。
俺とナナミはすでに心は結ばれていたが、ある夜自然と体も結ばれた。
グレイは気を利かせて、少し離れたところで眠ったフリをしててくれるようだ。
まぁグレイが起きて寝たフリしてることは、俺もナナミも知っているけど無粋なことは言わないっていうか思わないようにしてる。
(町が見えるわ)
俺たちの旅の最初の目的地にやっと到着か。
町に行っていろいろな人達に出会うことで俺たちの旅に新しい展開が起こるかもしれないな。
まだスキルが足らないから、使役魔獣を増やすことはできないが、将来的には旅の仲間が増えることになるかもしれない。
でも、しばらくはナナミとグレイと俺、これだけでいいんじゃないか?
俺は、冒険者ギルドの門をくぐった。
---- 完 ----




