第97話「反乱軍①」
東條は笑みを浮かべながら、大悟に向かって言った。
「なるほど…私の力が読めない…
どんな手を使うかが、分からないわけだ…
だから怯える 恐怖を感じるわけですね!
その正体さえ分かれば、少しはまともに戦えますか?」
(こいつ……)
「それならば、教えてあげましょう!
私の力を!!」
東條はそう叫ぶと、突如大悟に向かって銃をかまえた。
(くそっ…!!
一体何をする気だ…?)
拳銃をむけられた大悟は、避けようと体を動かそうとする。
しかし……
(な、なんだこれは…
か、体が動かない…!?)
「これが私の能力です
潔く死になさい 大悟」
東條は動けない大悟に向かって、銃を発砲した。
危険を察したエーコが、氷の盾を持って大悟の前にすかさず立つ。
銃から放たれた弾丸は、エーコの氷の盾によって防がれ、大悟は致命傷を免れた。
「なにやってるし!ボーッと突っ立ってるだけじゃ…
大悟…?」
エーコが大悟を叱咤するも、どうやら大悟の様子がおかしい。
エーコがいなければ、大悟は四天王・ゲンジと同様に、あっけなくやられていただろう。
ここでようやく、動けなかった大悟の体が元に戻った。
大悟は正気を取り戻す。
「い、今…
俺に一体何をした!?」
大悟の問いかけに、東條は呆れ気味の様子だ。
「まだ気づきませんか…
今の力は、莫大なメンタルと技術が必要…
さすがに3人同時に、動きを止めるのは不可能…」
話の途中ではあったが、志保は虎視眈々と東條に狙いを定めていた。
今がチャンスとばかりに、志保は水のムチで攻撃を仕掛ける。
「まったく…落ち着きのない人達ですね…
まだ話は終わってないというのに…
これなら分かりやすいですかね?
スロウ!!」
志保の攻撃に気付いた東條は片手を広げる。
すると……
「えっ!!?
私のムチが…」
まるでコマ送りでもして映像を見ているかのように
水のムチは、ゆったりと動いていた。
「どうです?これで分かりましたかね?
私の能力は…
“タイム・リミテッド”
“時”の力です」
3BECAUSE
第97話
「反乱軍」
明かされた東條のリミテッドの力に、大悟は驚きと焦りを隠せない。
(時間を操るだと…?
そんな無茶苦茶な能力…
どう相手すればいいんだ…)
大悟の焦りは、東條に簡単に伝わった。
「安心しなさい
先程も言ったように、3人同時に動きを止めるなど不可能…
まぁそれでも、あなた達を倒すには十分すぎる力ですが…」
これで、四天王・ゲンジが
いとも簡単に東條にやられてしまったわけも理解できた。
人や物事は、時の流れによって動いていく。
その絶対的な“時”というものに逆らえるはずがない。
「さぁ…どうです?
この力を知った上でも、私を相手にしますか?」
負けることなど微塵も思っていない東條が、自信満々に言い放つ。
「当たり前だ!!時の力!?それがどうした!
俺達3人で力を合わせれば、絶対突破できる!!」
大悟は強がって見せた。
心の中では、“時”という絶対的な存在に、勝てるわけないと思っていた…
しかし、それでも諦めるわけにはいかない。
簡単には食い下がらない。
「行くぞ!!志保、エーコ!!」
「えぇ!!」
勇敢に立ち向かう3人に、敵ながらも東條は称賛をおくる。
「ほぅ…この能力を知っても向かってくるか!
いいだろう!相手をしてやろう!!」
東條の時の力の前に、一同は手も足も出ない。
すべてが東條の思い通りだ。
「さっきまでの威勢はどうしました?」
「はぁ…
だ、黙れ!!まだまだこれからだ!!」
大悟達を見る、この東條の冷めきった目…
その視線が意味するものを、大悟は感じ取っていた。
『東條は俺達を使って、ただ遊んでいるだけ…
いつ俺達が殺されてもおかしくない…』
大悟達が生かすも殺されるも、それも東條の気分次第なのだと。
「はぁ…はぁ…
くそっ…ふざけた能力だ…
こんなもの…敵うわけないじゃねぇか…」
苦しさのあまりか、大悟も本音を溢す。
「当たり前です
それなのに…
未だ諦めず戦ってくるのはなぜですか?」
3人は東條に一度たりとも攻撃を与えることはできていない。
けれども3人は、決して諦めず、力の前にひれ伏すことはしなかった。
東條の問いに、大悟は苦しみながらも答える。
「諦めないって…それは…俺がまだ生きているからだ…
この命さえあれば、まだ終わっちゃいないんだ…
死にさえしなければ、いくらでも可能性はあるんだよ…!!」
「そんなもの…
見苦しいだけですよ 惨めなだけだ」
もうさすがに志保とエーコにも分かっている。
今の状況は、東條に生かされているだけだということに…
そう分かってもなお、3人は必死に、真剣に東條に食らいついた。
「もう十分でしょ?いい加減諦めたらどうです?
敵わないんですよ…
絶対的な力の前にはね…」
一瞬、東條の表情が変わった。
大悟はその一瞬を見逃さなかった。
東條は一体何を言いたいのか…大悟達に何を伝えようとしているのか…
大悟の足が一旦止まった。
「大悟…?」




