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3BECAUSE  作者: Guru
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第91話「Final Because②」

まだ気持ちの整理がついていない善だったが、レトインは話を続ける。



「火事となったあの日…


俺はその日も、ジンを見張っていた」



「えっ…?」



呆然とする善に、レトインが当時の出来事を語り始める。



「なんとしてもジンの悪事を止めようと

連日連夜、俺はジンを見張っていたんだ


しかし、阻止することはできず…

“あの事件”は起きてしまった…」






その時だ


真っ赤に燃える炎の中から

これまでにない、見たことのないほどの強い光を放ったのは…



恐らくその光は、善がリミテッドなった時に引き起こされた光


そして、その強すぎる光は…


“エレクト”が生み出されたために起きた光だったのだろう…




『はぁ…はぁ…

くそっ!!また止められなかった!!


な、なんだ!!この強い光は!!』



『はっはっはっは!!!』



燃えさかる炎の中から、笑い声が聞こえる。


その炎の中から、“ヤツ”は出てきた。



『よう!

また俺を阻止できなかったってか!?』



『ジン!!!』



『もう手遅れだ

とうとう生まれちまったよ…


ただのリミテッドじゃない…



神に選ばれたリミテッドがな!!

はっはっはっは!!』



『なんだと!!?

くそっ…!!


(もう遅いよな…)』





「手遅れだと思いながらも、俺はすぐに消防、救急に連絡を入れた


火は間もなく消えたが…

強く放たれた光が意味するものは…



もう遅かった…

すまない…俺がジンを止めることさえできれていれば…


善をこんな目に遭わすこともなかったんだ…

本当にすまなかった!!」



レトインは深々と頭を下げた。


レトインが謝る姿を見るのは、これで何度目になるだろう…


もう善にも分かっている。



悪いのはレトインじゃない。

レトインに責任などない。



頭を下げるレトインを、善はぼーっとした表情で遠くを眺めるようにして見ていた。


色々な思いが善の頭の中を駆け巡る。


まず善が第一に思ったこと。

それは……



(レトインは俺がリミテッドと教えてくれたとき

こう言ってたよな…



『おまえはあの大火事の中、無事に帰ってきた…


しかも“無傷”で焼け跡すら残っていない…変だと思わないか?』



まるで火事が起きた出来事を見ていたかのように…


そうだったのか…

見ていたかのようにではなく、実際に見ていたんだ!!


そして、俺を助けようとしてくれてんだな…)



レトイン対する感謝だった。


しかし、それと同時に、怒りにも近い感情が

善に芽生える。



「レトイン…謝ることなんてどうでもいい…


それよりも…

なんでもっと早く教えてくれなかった!?



親父を殺したのはジン…!!


そう分かってれば、断ることも、俺がやる理由もはっきりした!!

そしたら俺はジンを倒そうと…」



「そうなると思ったからだ」



「!!??」



「言えば熱くなり、ムキになり

おまえはきっと無謀と分かりながら、ジンに挑みに行く!!」



「!!!」



「そして、あっけなく終わっていただろう…



恐らくジンが、火事を起こし続けていた理由は

リミテッドを生み出すためだったに違いない


しかも、より強力な、おまえのような“エレクト”の存在を生むためにな」



「それが…ジンが放火を続けてた理由…?


親父を殺した理由か…?」



「恐らくな


そのジンの悪行によって、無残にもエレクトという奇跡は起きてしまった…」



「くそっ…!!」



悔しがる善は地面を蹴った。

なだめるようにレトインは言う。



「そう悲観することはない


確かに今まではジンの思い描いた、筋書き通りと思われるがな…

ジンの計算が崩れる出来事がある…!!


それは自らが生み出した、エレクトの男にジンが敗北することだ!!」



レトインは本気だ。

本気でジンに勝つつもりでいる。



「ジンの中にある、絶対の自信を崩すんだ


その時が、ようやく来たんだ善!!

だから俺はおまえに話した


最後の理由をな!!」



「あぁ…


倒す!!


親父の仇をとるためにも…

俺が絶対な!!!」



レトインの強き思いを受け取り

さぁ、これから!と言ったとこだったが…



今の善には、そんな力は残されていなかった。




バタン



と、突然、善は後ろ向きに倒れ

地面に寝転がって空を見上げた。



「善……?」



「わりぃ…俺…エレクトの反動で疲れてんのかな…?


しばらく動けそうにねぇや…」



「そこで休んでろ

大悟達のことは、俺に任せとけばいいんだ!



(ショックだろうな…辛いだろう…

すまない善…


でも俺は知ってるぞ…?



おまえの“強さ”を…

四天王なら俺がなんとかする!


だが、相手がジンとなればおまえの力が必ず必要となる…


その時までに、気持ちの整理をしててくれ!!)」



レトインは、善の気持ちを察して

静かに善から離れ、大悟達のもとへと向かった。





一人になった善は、真っ暗な夜の空を

じっと眺めていた。



(親父……



なぁ…なんなんだろ…俺って…?


親父が俺に、あんたの命をくれた…



そこにどんな意味が…どんな理由があるんだろうな…


素直にそこで俺がジンの起こした火事で死んでれば…


こんな辛い出来事も、思いもしなくて済んだんだ…

親父も今頃、まだ人生続けられたんだぜ…?



教えてくれ…親父…


俺が生きる理由ってなんだろう…?

“リミテッド”って一体なんなんだろう…?)






第91話 “Final Because” 完

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