第86話「正義と悪②」
3BECAUSE
第86話
「正義と悪」
一方、善の修行を続ける
善とレトイン
善の不甲斐ない動きに、レトインは渇をいれる。
「どうした!?善!!
動きが鈍いぞ?
集中しろ!!」
「ふざけんな!
集中なんてできるわけねぇだろ…?
もう俺にも分かるんだよ!
少し離れたとこで…俺達のアジトんとこで
大悟達が四天王と戦ってる!!
今すぐ俺もそこに行かせろ!!!」
少し前までは、力を感じることすらできなかったはずの善…
もう善にも分かってしまう。
リミテッド同士が放つ、力の存在に。
「だめだ…おまえを行かすわけにはいかない…
そのために、わざわざ2手に別れたんだからな」
「何…?」
気合いの入らない善に、レトインは別行動を取った理由を暴露する。
「手っ取り早く、おまえの“エレクト”の力を開花させるために、ここに連れてきたんだ
俺達に時間は限られている
四天王と争ってる時間などない!」
この突如、何の説明もなく行われた、謎の別行動の真意を善は理解した。
「そういうことか…
おかしいと思ったんだ…
このジンが攻めてくるかも分からないって、危険な時に別行動なんて…」
「おまえはここで“エレクト”の力を完全に身につける!
それができたらだ…
大悟達のとこへ行ってもいいのはな!」
理由がはっきりとした善は、先程とは打って変わり
一気にやる気がみなぎり、スイッチが入った。
「言ったな?レトイン!
男に二言はねぇぞ?
だったら早く教えろ!!
今すぐにでも身につけて、今すぐに行ってやる!!」
「だから…!!
それをさっきからやっているんだろうが!!」
やる気に満ち溢れた善であったが、善は右手の甲にあるマークを見つめた。
すると興奮状態だった善は、一度落ち着き、レトインに尋ねた。
「いや…そのまえに…
“エレクト”
こいつは一体何なんだ…?
そっから教えてくれないか…?」
「そうだったな…
その説明がまだだったな
“エレクト”
この力は、まさに神に選ばれたと言っても過言ではないかもしれん…」
「神に選ばれた…?そんな大袈裟な…」
冗談で善は誤魔化そうとするも、レトインはきっぱりと断言する。
「いや、それが大袈裟ってこともないんだ」
レトインの真剣な眼差しに、善も茶化すのをやめ、真面目に聞き入る。
レトインは話を続けた。
「普通のリミテッドの力とは…
自分の体から発するもの…そうだろう?」
「あぁ…」
「しかし、エレクトの力を発揮すると…
“自分の体そのもの”がリミテッドの力と化す!!
放つ、発するんではない…
もう己のすべてがリミテッドの力なんだ!!」
「なんだそれ!!!
じゃあ俺が力を発揮したとき…
体中が力に溢れ、無限のように力が出てきた気がしたんだけど…」
「それもそのはずだ
おまえ自体が、リミテッドの力そのものだったんだからな!」
ずっとレトインが口を酸っぱくするほど言っていた
エレクトの力を持つものと、持たないものでは
まるで話にならない…
善はその言葉の意味が、ようやく分かったような気がした。
レトインが寂しげに、空を見上げながら語る。
「だから俺達は不運にも選ばれてしまったんだよ…
神に…
いや、そいつは悪魔かもしれんな」
「不運…?悪魔…?どういうことだ?」
「だってそうだろう…?
そのうちの一人に、ジンがいるんだ
ジンを止められるのはエレクトの俺たちしかいない!!」
「!!!」
もし、この世に神がいるとするならば…
なぜ神は、こんなにも世の中を平等にはしてはくれないのだろう…?
正義を生み出すのも神ならば、悪を生み出したのも神だ。
そもそも…
悪がなければ、正義など存在しやしない…
正義と悪
その境界線を決めたのは、人間であり、神ではない…
だが、生まれてしまった。
悪魔と呼ばれる者の存在が…
俺はその悪魔を生み出した神を恨み、生まれてきた自分さえも憎んだ。
けど、ひとつ…
たったひとつ、今決めたことがある…
それは……
「俺がジンを倒す…
いや、俺しかいないのか…?
まぁ…
その方が分かりやすくていいや…」
そう善はレトインに聞こえるように呟く。
そして、今度は心の中で、自分に戒めるように誓った。
(もう…誰も死なせやしないんだ…
志保、大悟、エーコ…
レトインも!!
俺がやってやる…
俺が“エレクト”の力で全部!全員守ってやる!!!)
善の気持ちにブレがなくなり、真っ直ぐになった途端…
善の体が突然、強い光に包まれた。
「善!!それだ!!
“エレクト”の力!!
今度こそ、掴むんだ善!!」
第86話 “正義と悪” 完




