第84話「ハズレ②」
そして、その望みを託された大悟達
突然煙のように消えた、善とレトインにエーコが不思議がる。
「善とレトイン、どこ行っちゃったんだろう…?」
「さぁな…」
大悟はとぼけて見せる。
レトインからの説明はなかった。
四天王が攻めてくる確証もなく、レトインの策はひとつの賭けに近い。
このレトインの策には、唯一大悟だけが理解していた。
志保とエーコは気づくことはない。
重苦しい雰囲気が漂う中で、場を和ませようとエーコが冗談を言った。
「ホントどこ行っちゃったんだし…
もしかして、2人で駆け落ちでもしてたりして!!」
ふざけるエーコに、志保が怒る。
「あのね!!エーコ!!
こんな時に、よくあんたふざけてられるわね!!
今、ジンが来たりでもしたら
私達終わりなのよ!?」
「冗談なんだからいいじゃん!!
まったく…冗談も通じないなんて…この女は…」
エーコの気遣いも、もはや裏目。
善とレトインがいないことで
3人はとても不安な状態であり、心に余裕などなかった。
一人気負う大悟は、気合いを入れ直す。
(正直、確かに俺たちだけじゃ不安だ…
でも、やるしかないんだ!俺達だけで!!
俺達を信頼して、レトインもこの作戦をとったに違いない…
俺達は、お荷物でもおまけでもない…
俺達だけで倒すんだ!!)
そう、大悟が覚悟を決めた時…
一人の男の声が聞こえた。
「あらっ!?ここって…
まえ使ってたライジングサンのアジトじゃねぇか…
まだこんなとこにいたのか!おまえら!!」
「!!!
だ、誰だし!!」
謎の男の声に反応してエーコが振り返る。
そして、察するように大悟が謎の男に尋ねた。
「ここにやってきたってことは…
貴様か…
ジョーカー四天王は!!」
「いかにも、俺が四天王の一人・ゲンジだが…
なんだ…
善とレトインがいないじゃねぇか…
まんまと騙されちまったってわけか…」
四天王・ゲンジの、その言葉の意味が志保とエーコには分からなかった。
「騙された…?」
「リミテッドの力がする方に
進んで来てみたんだ
そしたら、ここにたどり着いたってわけよ」
「えっ…?リミテッドの力…?」
そう言われて初めて、志保は気づいた。
「!!!
大悟…あんた今までもしかして…」
「あぁ 善達がいなくなってから、実はずっと力を放っていた
ごく僅かな力だがな…
それを感じて、ここにやってくるとは…
さすがは四天王だな!!」
大悟の罠にまんまと引っ掛かってしまった、四天王・ゲンジ
誘きだした大悟に、エーコは苦言を呈する。
「バカじゃん!!大悟!!
わざわざこっちに来させるなんて…
善達の方に行っちゃえば、簡単に倒せちゃいそうなのに!!」
(誰がそんなことさせるか!!
今、善達の邪魔をさせるわけにはいかねぇ!!
倒す…俺達だけでおまえを!!)
大悟の決意は固かった。
味方をも欺くほどに、強き思いがあった。
四天王・ゲンジは誘い出された自らを悔やむ。
「くそっ!はめられた!
俺はハズレを引いてしまったってわけか…」
「悪かったな…ハズレで!!
けど…
ハズレでも…
やるときは、やるんだぜ!!」
大悟は闘志をむき出しにし、土の大剣を作り出す。
「あなどった…
ハズレはハズレでも…
大ハズレではなさそうだ!!!」
そうゲンジが、言うと
次の瞬間、大悟は自分の目を疑った。
「!!!
な、なんだこれは…」
大悟達が今いるはずの場所は
辺り一面、草木が生い茂り、自然に溢れた場所。
しかし、大悟の目に飛び込んできたものは…
「一体どうなってる!!
高速道路!?ここは高速道路のど真ん中か!?」
車がもの凄いスピードで走り去る、高速道路の景色が写し出されていた。
「意味が分かんないし!!
あたしたち、急にワープでもしちゃったりしたの!?」
突然の出来事に、エーコも慌てふためく。
自分達の体の横を、猛スピードで車がびゅんびゅんと走り去っていく。
「うおっ!!あぶねぇ!!
ぶつかるとこだった!!
な、なんなんだこれ…!!」
冷静な大悟も、パニックに陥る。
何が起きているのか分からない…
しかし、ここで志保が感付いた。
「違う…これ…
私達はワ-プなんかしたわけじゃない…
もしかしてこれ…
“幻”…?」
その志保の一言に
ゲンジは驚きながらも、笑った。
「はっはっは!
ほんとだ!こいつはすげぇな…
以前、四天王・綾音の“音の呪縛”が
効かなかったやつがいると聞く!!
こりゃ驚いたわ…
そこまで分かれば、俺の能力を教えてやろう!!
“ファントム・リミテッド”
“幻覚”の力!!!」
第84話 “ハズレ” 完




