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3BECAUSE  作者: Guru
81/131

第81話「5人①」

善の一言により、レトインの今まであった緊張が

一気にすべて解けた。


何一つ本当の自分というものを出すことのなかった


偽りの人格“レトイン”が

心の底から感情を表に出して、泣いた。



まるで子供のように大声で泣き叫ぶレトインに、善は優しく声かけた。



「レトイン…


どんだけ強がっても、泣くのを我慢しても…

何も変わることがないのなら…


泣きたいだけ泣けばいい



そこから立ち上がったって…

決して遅くなんかない」



レトインは今は亡きレイに語りかけるよう、天を仰いだ。



(レイ…


俺は今まで無理をしていた…

おまえのために、おまえの仇をとるためだけに…



おまえの望んでいたことは何だ?


おまえが天国で喜ぶ姿を見せてくれるのは

いったいどんな時だ…?



分からない…

今の俺には、どうすることが一番いいのかが分からない…


だから俺は…

あいつの言った通り…




今、泣いてもいいかな…?

俺は…


今を生きてもいいのかな…?)




レトインはしばしの間、泣き続けた。



何も考えることなどできない


これから先のこと…過去のこと…

何一つ…



今はただ、泣くことしかできなかった。



(善…


俺はおまえに言った…

“ジョーカーを変えろ”と…



おまえは人を変えてしまうような

そんな不思議な力を持っていると…


バカげた話だ…

ジョーカーまでもか…


俺まで変えてしまうとはな

とんだ才能だよ…)



気が済むまで泣いたレトインは、泣くのをやめ

ようやく立ち上がり、ふと顔を上げた。


今まで見せたことのない

安らかな表情を善に見せる。



「善……



ありがとう」



「!!!


お、おう…」



突然のレトインからの感謝の言葉に

善は驚いたが…


そのレトインの顔からは、何一つ曇りはなかった。



背負い込んでいた重荷を降ろし

重圧から解かれたようで…


すっきりとした表情だった。



そんなレトインの違いに志保もすぐさま気づく。



「もう大丈夫なのね…?


ここからが“本当の”レトインなんだよね…?」



「あぁ…


俺はすべてを犠牲にしようと…

いや、犠牲にしてでも、成し遂げなければいけないものがあった



けど…善が俺に気づかせてくれた…


犠牲にしてはいけないものだってある

レイ、トウマ…


そいつら以外にも、俺には守らなければならないものがあったみたいだ!!」



「レトイン…」




善とレトイン


この2人は何度も行き違い、すれ違った。



同じ思いを持っていながらも

うまくお互いを表現しきれずに


何度もぶつかった。



しかし、こうして今

2人の思いが、ようやく一つになろうとしている。



「バカ野郎が…遅ぇんだよ!!


覚えてんだろうな?おまえと

あの海の見える場所で交わした…



“例の約束”をよ…」




善はレトインに以前

こう言っていた。



『目の前にいるやつが、例えどんなやつでも、どんなに悪いやつであろうとも…


俺はそいつを殺さねぇ!!


それがジョーカーの頭だろうとな

俺の目の前で、死人なんてもんは絶対出させねぇ!!』



二人で交わした初めての誓い、約束。

善は片時もこの約束を忘れることはなかった。



「ちくしょう…守れなかったじゃねぇか…


もう破らせねぇぞ?

破るわけにはいかねぇんだぞ…?」



「あぁ…

分かっている 絶対に破るわけにはいかん」



「そうだ 忘れんじゃねぇぞ…」



二人の会話は、志保と大悟には何のことか理解できなかったが


おおよその予想はついていた。

恐らくその予想も、大きくは違っていないだろう。



「よし、レトインも戻ってきたことだ


あとはおまえだけだぞ…




エーコ」






BECAUSEスリービコーズ


第81話

 「5人」






エーコ


今となっては形すらなくなってしまった

キングのメンバー。


スパイといいながらも

ほとんどライジングサンの一員となりかけていた。



キング・ヤコウの死は

エーコにとってあまりにもショックが大きすぎる。


先程からの、善達の会話にも

一切入ってくることはなかった。


まだ現実を受けいることができず

死体と化した、ヤコウのまえで、うつ向き続けていた。




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