第80話「???VS???②」
レトインがゆっくりと起き上がり、善を睨み付ける。
「き…貴様…!!
やるつもりならやるぞ善!!!」
ヒートアップする二人に、志保が仲裁に入る。
「何してるのよ!!
なんでここで2人が揉めてるのよ!!
大悟、2人を止めてよ!」
「いや…
やらせていろ」
「えっ!?」
「エレクトの力をうまく扱うことができていない善が、コツをつかみかけている…
今ここでやめるのはおしい…」
「今はそれどころじゃないでしょ!!!
いいから二人を止めようよ!!」
強烈な一撃をもらったレトインは
完全に我を忘れ、すかさず善に反撃した。
「本当のエレクトの力の使い方がまだまだだな…
エレクトとは…
こうやって使うんだよ!!
“サンダーボルト”!!!」
レトインの光と共に纏っていた雷の力が
一気に放たれ、善に向かって飛んでいった。
その攻撃は、目にも見えぬような速さで
善の体に命中した。
「ぐわぁぁっ!!!」
「善!!!」
攻撃を受けた善は、後ろから倒れた。
「はぁ…はぁ…
何も知らないガキが…
ふざけたことぬかしやがって…!!」
レトインの息づかいは荒れている。
初めて見る、レトインの抑えきれぬ感情。怒りを爆発させている。
その感情むき出しのレトインに、倒れこんでいた善は
安堵するように、空を見上げながら呟いた。
「なんだよ…
できるんじゃねぇか…」
「何……?」
善は立ち上がり、レトインに言った。
「今のが“本当のおまえ”だろ?
できるんじゃねぇか…なれるんじゃねぇか…
何無理して、別の人格偽ってやがる!!」
「!!!」
「何もおまえは特別な人間なんかじゃねぇ
普通の人間だ
“リミテッド”だって
普通の人間だ
ちょっとした宴会芸ができるぐらいなもんだろ?」
「ふざけるな…
何が宴会芸だ…この力で…
いくらでも人は殺せる!!
そんな容易く言えるような力なんかではない!!
その力のせいで、俺は大切なものを…人を失ってしまった!!
確かにレイもトウマも、戻ることなどはない…
けどな…
俺がそいつらのために、そいつらの仇をとるために
生きなければならないんだ!!
そのためには、強くならなきゃいけない!!
どんな時も、何があろうと冷静で、ジンを倒すこと…
それだけに全てをかけて生きるしかないんだ!!!」
レトインの心の中にある強き思い。信念。
しかし、それは……
「間違ってる
死んでいった者の分まで生きる…
確かにそれが俺達リミテッドだ
だけどよ…
それじゃおまえは死んでんだよ!
生きてなんかいねぇんだよ!
別人になりきって、必死に強くなろうと強がって…
そんなもん、生きてるなんて俺は呼ばせねぇ!!
本当のおまえを…自分を出せ!!!」
「そんなこと…できるわけがない…!!
大切な人を失った俺に、昔の頃の自分など…」
レトインは目をつぶり、うつ向いた。
過去の自分を思い出していた。
あの頃の仲間と過ごした楽しかった日々…
レトインを名乗るまえの、何も作り飾る必要のなかった自分…
あの頃の自分は、もういない。
レトインは目を開け、訴えかけるように善に聞いた。
「もう昔のように戻ることができないなら…
変えることができないのならば…
俺は…俺はどうすればいいんだ!!!」
そんな過去と葛藤するレトインに、善は躊躇なく答えた。
「今を生きろ!レトイン!!
何も偽る必要なんかない…
何も強がる必要なんてない…
泣きたいなら…
思いっきり、泣けばいい」
「!!!」
レトインの体が固まるようにして、ピタリと止まった。
「死んだ者の命、俺ら背負ってんだろ?
見てるぜ レイ
きっと偽者のレトイン見ててレイ…
何一つ笑っていやしないと思うぜ…?」
レトインに衝撃が走った。
(そ、そんなこと…今まで考えたことなかった…
俺はジンを倒すために…
おまえの仇をとることだけを考えて生きてきた…
いいのか…レイ…?
俺も普通に生きて…
おまえは死んでるのに
俺なんかが生きてていいのかと、ずっと思っていた…
俺もいいのかな…?
普通に泣いたり…笑ったりしても…
いいのかな…レイ……)」
レトインに張りつめていた緊張の糸が、プツりと切れた。
目頭は熱くなり、全身の力が一気に抜け
レトインはがぐりと膝から落ちて、地面にひれ伏せた。
そして…
「うわぁぁぁぁっっっ!!!!」
レトインは泣いた。
大声で泣き叫んだ。
“レトイン”として生きてから初めて
本当の自分を…本来のあるべき自分を…
何偽ることなく、さらけ出した。
第80話 “ライジングサン・善 VS 元ライジングサン・レトイン” 完




