第74話「すべての始まり③」
ここまで来るのに、多くの時間を費やした。
レトインが初めて善達を信じようとしている。
“仲間”と認めようとしている。
とうとうその時が、やってきたのだ。
「よく聞いておけよおまえ達…
今から話すことが“真実”であり
すべての始まりであるんだ」
「あぁ…
頼む、レトイン」
レトインは何か肩の荷がおりたような
今までより安らかな表情を、そっと善達に見せた。
そして、一呼吸おいたあと、レトインは自分の過去を語り始めた。
「今から9年前…
俺はリミテッドとなった
いや、そもそもその時代には、“リミテッド”などと呼ばれているものはいなかった」
「えっ…?
じゃあもしかして、レトインがリミテッド、第一号ってことか?」
「そういうわけではないだろう
俺よりも前に、リミテッドとなった者はいるはずだ
だが、俺より前に“リミテッド”と呼ばれたやつはいない」
善の頭は困惑し、善は首を傾げた。
「……?
相変わらずレトインの話は分からん…」
「少しは考えろ…
いるはずがないんだ
なにせ、“リミテッド”と名づけたのはこの俺なのだから」
「!!
名づけ親はレトインだったのか!」
「そうだ
俺は落雷の事故に巻き込まれたにも関わらず
命を取り留めた しかも無傷でな
そんなもの、人間の構造上ありないことだった
自分が生きていることが、奇跡というより、謎だったのだ
そして、俺はある時、不思議な力があることに気づいた…
こんな力、人間の成し得ることではない…
自分に恐怖を覚え、人とは違う自分に
孤独感を味わい続けた」
レトインの当時の心境に、志保も頷く。
「分かるわ…その気持ち…
私もリミテッドだと自分が知った時…
すごく怖かったもの…」
リミテッドの者、全員にその気持ちはあったことだろう。
共感できることばかりであった。
レトインは話を続ける。
「そんな孤独さを抱えていた俺は考えた
この不思議な力…
持っているのは俺だけではないはずだと!
きっとどこかに俺と同じようなやつがいて
俺と同じような悩みを抱くやつが必ずいるはずだと!」
レトインの以前とはまるで違う表情。
今度こそ嘘、偽りなく話していてくれていると
大悟も安心して聞いていた。
「そう考えるのが普通だよな…
自分一人なはずはない
でも、同じリミテッドの者を探すのは
とても困難だっただろう…」
「あぁ…だが、今は便利な世の中だ
信憑性の高いものこそ数少ないが
ネットってもんがある
誰か俺と同じような悩みを持つやつが、必ずどこかにいる
そう信じていた俺は、頭がおかしいと思われても構わない…
分かるやつには意味が分かるはず…
俺はネットで呼びかけた
俺のように不思議な力を持つやつがいたら、集まろうと
俺は“孤独”が嫌だった…
仲間が…いや、単に“友達”が欲しいだけだったんだ!!」
だんだん話しているレトインの表情が暗くなり
話すのが辛そうになっているのが分かる。
「もしかして…その集まりで現れたのが…」
「あぁ…もうだいたい検討がつくだろ?
もちろん中には冗談半分で嘘ついてるやつ
自分に力があると思い込んでいるやつ…
そんなやつらは何人もいた
しかし…
その中に、本当に“リミテッド”であるやつがいたんだ!!」
もう全員が予想はついていた。
だが、その予想とは、一箇所だけ違う部分があった。
「そこに現れたのが…
“二階堂 仁” “八光 灯馬”……」
「やっぱり…その2人だったのか…」
「いや、それともう一人いたんだ」
「えっ…?もう一人…」
「そう…
リミテッドだった者が
ジン、トウマ…
そして…
“レイ”」
第74話 “すべての始まり” 完




