第71話「???VS???③」
ジンは完全にヤコウを見下していた。
そんな余裕からか、ジンは話を始めた。
「なぁトウマ…
レトイン…
分かるだろ?誰のことか?」
「………
あぁ…」
「なんであんなにまでジョーカーを潰そうとするレトインが
おまえのキングの存在に対しては、何も手出ししないのか、それがなぜだか分かるか?
実際、俺もおまえもやってることは、そうは変わらない…
なのにてめぇには目を向けない…
なぜだと思う?」
ジンの言うとおり、レトインは以前、善にこう言っていた。
『キングは相手にするな』、『ジョーカーだけ頭に入れておけばいい』
と、そう確かに言っていた。
このことをジンが知っていたわけではない。
だが、ジンには分かっていた。
そうレトインが善に言っているであろうことを…
「教えてやろうかトウマ…
それはな…
おまえが弱いからだよ」
「!!!」
「おまえなんていざとなれば、簡単に殺せる
そうレトインが思っているからだ!
確かにてめぇの能力は強い、最強だ
だが“それだけ”だ!!」
「さっきから言わせておけば好き勝手言いやがって…
(こうなれば、ほぼすべての力を消費する
“全身放射”!!
こいつをやるしかない!
これさえ放てれば、ヤツとてかわすことなど不可能!!)」
人の弱みにつけ込むことが大好きなジン。
ベラベラとよくしゃべる。
「それだったらおかしいじゃないかって…?
だったらなんでこの俺がキングにスパイを送る必要があったのか?
そりゃ変な話だよな…
いつでも殺せような相手なら、スパイなんて手、使う必要ない…
けど、キングに俺はそこまでした…
その理由も簡単だ…
教えてやろうか?
それは単におまえの絶望した顔が見たいから
なっ?簡単だろ?
最高だったぜ!ずっと信じてきたやつが敵だったと分かった時のおまえの顔!
悲痛、嘆き!!
俺にとっては最高だ!何年もかけて仕込んだ甲斐があったぜ!!」
ジンという男…
この完全なる“悪”の男が、人を馬鹿にしながら大笑いしている。
その間、ヤコウは自らが持つ最大の攻撃のための
メンタルをじっと溜めていた。
(楽しそうにしていられるのもここまでだ!!
もう終わりだ…ジン!!
今日でジョーカーは終わりだ!!)
ヤコウの最大の攻撃の準備が整った。
すべての力を放とうとしている。
恐らくこれをくらえば、ジンもひとたまりもない。
ヤコウがその力を放とうとした、その瞬間……
ジンの左手が、強く光った。
「あっ…
使っちった…エレクトの力」
ヤコウは力を放つ寸前…
ジンのエレクトによる攻撃を受けた。
「ぐっ…ジ…ジン…」
そのエレクトの攻撃は、今までにないほど強力な力で
ヤコウが溜めに溜めた最大の攻撃の威力を、遥かに上回っていた。
その力をジンは一瞬にして作り上げた。
「わりぃな 約束破っちまった…
まぁでも、俺にエレクト出させたんだ…
喜んでいいんじゃねぇか?」
ジンの攻撃をまともに受けたヤコウは、血を吐きながら崩れた。
(がっ…くそっ…ジン…
腕がなまってるどころか…
上がってやがる…!!
ジンの強さは…分かってはいたんだがな…
レトイン…
おまえがまえ言っていた言葉の意味が、ようやく分かった…
あの時は…
俺に対する、単なるひがみだと思ってた…)
『一人はおまえの方だろ』
(本当に俺は一人だった…
エーコもいつのまにか、善達にどんどん惹かれていっている…
一番信頼していた嵐は、ジンの手下だ…
おまえの言うとおりだ…
だいたい昔から、全部おまえの言うとおりだったな…
“あの時”の償いのつもりで始めたことだったが…
俺は何一つ、一人ではできやしなかった…
なぁ…
この思い…どう伝えればいい…?
死にゆく者が、今ここでどう伝えればいい…?
じゅ…
いや、レトイン…
俺は…俺は………)
「じゃあな 友よ」
ジンは嵐を連れて、血を吐き続けるヤコウを背にして去っていった。
あまりにも早すぎた決戦
キング・八光VSジョーカー・ジン
その結末は無残なものとなってしまった。
仲間を失い、すべてをヤコウは失った。
そして、この数分後…
キング・八光 灯馬は
誰に気づかれることなく
死亡した。
第71話 “キング・八光 灯馬 VS ジョーカー・二階堂 仁” 完




