第64話「リミテッド・エレクト①」
善の右手に刻み込まれた謎のマーク
そのマークが、強く光り輝いている。
善の体は真っ赤な炎に全身包まれた。
その姿を見たレトインは、心の中で呟く。
(そうだ…善…
それだ…その力だよ
今こそ、目を覚ますんだ!!
おまえは…選ばれたんだよ…
奇跡の中の奇跡…
“リミテッド・エレクト”)
3BECAUSE
第63話
「リミテッド・エレクト」
リミテッドとして、とてつもない素質を持っていると言われた男・橘善。
その善が、ついに眠られた力を発揮しようとしている。
善の目覚めに、いち早く気づいたのは遥か離れた地にいる、ジョーカー・ジンであった。
「!!!
こ、これは…
俺の左手にあるマーク…
こいつがいつに増して光輝いてやがる…」
即座に事態を把握したジンはほくそ笑んだ。
「そうか…!!
目覚めたか!橘善!!
ようやくだ…ようやくおまえも“俺達”のステージへと上がってこれたわけだ!!
これは楽しくなってきたぞ!!」
善の目覚めに笑いの止まらないジン。
この日をジンは心待ちにしていたのだ。
舞台は戻り、ライジングサンVSジョーカー四天王・琢磨
琢磨が善の姿を見て察する。
「この光…そして包み込む炎…
こいつが…
“リミテッド・エレクト”!!
ジンさん…
あんたからのもう一つの指令…
きっちり果たしましたよ」
彼に与えられていた任務のうちの一つ。
どうやらそれは
『善が“リミテッド・エレクト”としての力を発揮させること』 だったようだ。
「しかし、この力…
一体なんなんだ…
エレクトでもない俺でさえ、とてつもないパワーを感じる…
リミテッドである者同士が、共鳴しあっているというのか…」
何か不思議な力を感じ取る琢磨。
善の目覚めは、ジンだけではなく、すべてのリミテッドの者に影響を与えていた。
未だ善は、自分の身に何が起きているのか、理解していないようだ。
(なんなんだ…?この溢れる力は…
レトイン?あいつが俺に何かしたのか?
何かいつもと違う…
どんどん力が沸いてくる!!)
底を尽きたはずの善のメンタル
そのはずが、善の体からは火の力が溢れ出る。
琢磨はリミテッド・エレクトの力の恐ろしさを知った。
「やつの力は、メンタルはもう残っていなかったはず…
それなのにこの溢れんばかりの力…
エレクトの力は底なしなのか!?」
先程から琢磨が感じ取っていた、不思議な力。
その力が次の瞬間、なんとなくではあるが、目に見える形となって現れ始める。
「な…なんだ…?
この強い光…」
「!!!」
琢磨は驚いた。
なぜなら完全に戦闘不能となっていた、大悟が目を覚ましだしたからだ。
「大悟!!
なぜおまえが…俺が完全に貴様を叩きつぶしたはず!!」
それだけではない。
大悟までもか、今度はエーコまで立ち上がり始める。
「あれ…?あたし…
さっきやられてた気がするし…」
大悟、エーコ
そして……
「善!!!」
つい先程、瀕死となったばかりの志保までもが目を覚ましだした。
「志保!!
おまえまで目を覚ましたのか!!
大丈夫だったか!?みんな!!」
「ごめん…私…
気失ってたみたい…」
このタイミングで、ありえないほどに一斉に全員が同時に目を覚ましたのだ。
琢磨は疑問を抱く。
これがすべて偶然で片付けるにはおかしすぎる。
「こいつは妙だぞ…
橘善の覚醒…
これが何かすべてのリミテッドの者に、影響を与えてるというのか!?
俺にも感じる力…
これもすべて善のせいなのか…?」
突然目を覚ましたため、善の身に何が起きているかまるで飲み込めていない大悟達。
「善の体が炎に包まれている…
善から大量の力が溢れているのか…?
いや、違うな…
その逆だ
善から炎が出ているのではなく…
善が炎となっている そんなふうに見える…」
いつもとは違う善の姿に、一同は目がいったが…
志保は一人、“あの男”の存在に気づいた。
「!!!
あれって…レトイン!!!
レトインじゃない!!
やっぱり…助けに来てくれたのね!!」
「何!?
レトインだって!?」
気を失っていたため、当然レトインが助けに来たことなど知るよしもない。
その元・ライジングサンであるレトインは
工場の外へと通じる、2階の出入り口付近に立っている。
「なんだし…
あいつ助けに来てくれたんじゃないの?
なんか外に出て帰ろうとしてるし…」
志保達に気づかれたレトインは
この場を逃げるように立ち去ろうとした。
そこで志保が声をあげる。
「ねぇ!また行っちゃうの!?
助けに来てくれたんだしょ!?
戻ってきてくれたんじゃないの!?」
「………」
レトインは背を向けて黙った。
そして、志保の問いかけには一切答えることなく、善に向けて言った。
「善…覚えておけ…
それが…
“リミテッド・エレクト”の力だ
おまえは…選ばれたんだ」
「“リミテッド・エレクト”…」
(もうこれで…勝負は見えただろう…
俺の助けなど…
必要はない…)
レトインは振り返ることなく、工場の外へと出て歩き始めた。
「!!!
ねぇ!あれ見て!!」
立ち去るレトインに、志保がまた“あるもの”に気づいた。
「!!!
光ってる…あいつの右肩が…
善と同じように…」
その“事実”を知った善は、小さく笑った。
「はっ…またやられたな…
またあいつに、いっぱい食わされた…!!
(レトイン…
てめぇも“リミテッド・エレクト”…
なんだな…)」
善のエレクトの目覚めに、レトインは険しい表情を見せていた。
(善、ジン、そして俺…
ジン…
段々おまえが望むような展開になってきてるようだな…
どうするつもりだ…ジン…)
レトインは善に一言だけ残し、この場を立ち去っていった。
レトインはライジングサンに戻ることはなかった。




