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3BECAUSE  作者: Guru
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第61話「窮地②」

「大悟!!!」



善がすぐさま、大悟に駆け寄る。



「おい!大丈夫か!?しっかりしろ、大悟!!」



「……善…」



「!!

大悟!!


(よかった…まだ息はある…)」



「すまなかった…俺一人では…


勝てなかった……」



「もういいんだ…


話さなくていいから、静かにしててくれ…傷口に響く…」



善は大悟を琢磨と1対1にさせたことに、責任を感じていた。

うつむく善に、琢磨がふっかける。



「見てくれよこの斬り傷…

あ~痛ぇな…


2、3太刀ほどあびちゃったよ…」



「てめぇ…!!!


大悟、あとは俺たちに任せろ!!」



大悟の策など、誰も理解してはいなかったが…

1対1の対決に挑んだ大悟 それを許した善


あのエーコでさえも、決して大悟や善を責めることはしなかった。



一仕事終えたかのように、琢磨はリラックスし、背伸びをした。


「もう俺は十分だよ…大悟との戦いでお腹いっぱいだ


あとはテキトーにやらせてもらうかな」



「!!なんだと…?」



そう琢磨が言うと、琢磨はまた新たに自分の影を作り出す。


そして、琢磨と琢磨の影が一斉に善達に襲いかかる。


大悟が最も恐れていた事態が、とうとう起きてしまったのだ…



「あとは…

テキトーに遊んでるだけで終わるかな…」



気だるそうに琢磨がぼそりと呟く。

先程までのやる気は微塵も感じない。


琢磨と琢磨の影による大鎌の乱舞。


倒れて身動きの取れない瀕死の大悟にも、うっすらとこの光景は見えていた。



大悟の目に写った戦況は…


琢磨本人が言っていた通り…まるで琢磨が遊んでいるかのように、無惨なものだった…




(つ、強い…

勝てるのかここから…)



そこまで時間は必要なかった。


善、志保、エーコの3人が瀕死の状態になるまでには……



「大悟同様、本当にしぶといんだな!おまえらは!


善…まずはおまえから殺してやるよ!!」



「!!!」



中々諦めることをしない3人に、琢磨がしびれを切らした。


まず狙われたのは善だ。


だが、ここでも幾度となく善を助けてきたエーコが、氷の盾で守りに入った。



「そうはさせないし!!」



しかし…

瀕死のエーコに、もはやそんな力は残されていない…


琢磨の闇の鎌は、氷の盾を貫き、エーコの体にもろに入った。



「エーコ!!!」



「あたし…何やってんだろ…


(もともとスパイで来てたはずなのに…

なのに…



こんなにも…勝ちたい…)」



善を守りにいったはずのエーコが、まずは倒れた。



「おっと…先に違うやつが…


残りはあと2人」



琢磨はとぼけながらも、余裕の表情だ。


そんな琢磨に焦り、善は怒りまかせに、闇雲に飛び込んだ。



「くっ…


くそーーーっ!!!」



「善!!やめて!!!」



志保の叫びも聞くこともなく

火の剣片手に善は突き進む。



「なんだ…ついにヤケを起こしたか?」



「そんなんじゃねぇよ!!!」



善はイフリート・ソードを琢磨目がけて振りぬく。


しかし、そんな容易い攻撃は、いとも簡単に琢磨の大鎌によって止められてしまう。



「随分と遅い…

大悟の剣のがよっぽど速かったよ…


おまえじゃ役不足だ…」



完全に止めたイフリート・ソード…


のはずだったが、そのイフリート・ソードがなぜだか琢磨の体を切り裂いていた。



「ぐあっ…


な、なんだと…?」



思わず琢磨が声をあげる。

琢磨は自分の身に何が起きたのか理解できていない。



止められたはずのイフリート・ソードがなぜ…?


不思議な表情で、琢磨がふと善に目をやると……



善の手には、“2本”のイフリート・ソードが握られていた。



「二刀流!!??」



右手と左手、片方ずつ握られた2本のイフリート・ソード

見たことない善の二刀流に、琢磨だけでなく志保も驚く。



「善…二刀流なんていつの間に…」



(そんなもんできやしねぇし、うまく扱えやしねぇ!


力も残り僅かだし、どうすることもできねぇけど…


最後まで攻めて攻めまくるしかねぇ!!!)



善も窮地に追い込まれ、とっさに出た閃きにすぎなかった。


善の戦闘のセンスに琢磨が気づく。


すると今まで余裕ぶり、遊んでいるかのように戦っていた琢磨が急に表情を変えた。


そして、脅威となっていたはずの、自分の影のドッペルゲンガーを戻し


元の自分の普段の影へとおさめた。



「!!!

影を消した…なんで…?」



拍子抜けの善に、険しい顔つきで琢磨が言う。



「橘善


ここに来てもまだその気力…

窮地にたたされ、この土壇場で閃くその発想力…


久しぶりに俺もやる気になった…」



「やる気になった…?」



善は首を傾げた。

先程大悟との戦いで、十分に琢磨はやる気を見せていたはず…


なのになぜ…?



まだピンときていない善に、琢磨が自ら告げる。



「忘れたのか?


一番おまえたちが恐れていたことは、俺と俺の影の一斉攻撃なんかではないはずだ…」



(こいつ…急に何を言ってやがる…


今までと、雰囲気が全然違う…)



「今日は大悟だけで十分だと思っていたが…

おもしれぇ逸材だ…


リーダーが、少しおまえを恐れていた意味が分かった…



けどよ…

まだ俺は“見てない”んだよな…それが今回のもう一つの指令でもある…」



「………?


どういうことだ…?さっきからわけ分かんねぇよ!!」



善には琢磨の言葉の意味が理解できないでいた。


善の頭はこんがらがっている中、琢磨は片手をあげて大声を出した。



「それは…

こういうことだよ!!!」



琢磨はあげた片手から、天井目がけて無数の闇の力を放った。



パリン!パリン!!



天井にある、いくつもの電球がひとつ残すことなく、破壊された。

そして…



すべてが“闇”に包まれた。



「!!!

そ、そうだった…


最も俺達が恐れていた事態…

それは…これか…」




すべての光は失われた。

すべては闇へと変わった。


善に宿る希望の光も…



すべて消えた。






第61話 “窮地” 完

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