第60話「窮地①」
「琢磨は俺が一人で倒す 俺を信じてくれ、善」
「言ってくれるねぇ~…大悟!
おまえの意地…プライド…
立派なもんだ!サシでの勝負、受けてたつよ!!」
大悟の挑発。
普段やる気を出すことのない、四天王・琢磨の闘志に火を着けてしまった。
「何言ってんだよ…何やってんだよ!!
こんな時に、勝負なんかにこだわってる場合かよ大悟!!」
大悟のプライド…
善の心の中は揺れていた。
(俺だって大悟が勝つことを信じたい…
どうしたらいいんだよ…俺は…
今すぐ1対1の戦いを止めるべきか、それとも…
大悟の意志を尊重すべきか…
こんなとき俺は…
“あいつ”みたいに冷徹にはなれない…
俺はどうすれば…
どうすればいいんだ…)
3BECAUSE
第60話
「窮地」
大悟が善に、必死に目で訴えかけてくる。
「善!!俺を信じろ」
悩んだ善は、とうとう決断をした。
「………
分かった
大悟、俺はおまえを信じる!
1対1の真剣勝負、琢磨はおまえに任せた!!」
まさかの善の判断に、志保は驚いた。
「ちょっと善!あんたまで何言ってんのよ!
私達が琢磨の影を倒したところで無意味なのよ!?
本体を倒さなきゃ意味がないっていうのは分かってることでしょ?」
「あぁ…分かってるよ
だから本体の琢磨を、大悟が一人で倒すんだ
俺は大悟を信じてる」
エーコも善の考えには呆れて物も言えない。
「あんたバカだし!!」
大悟は自分を信じてくれた善に感謝した。
「ありがとよ…善」
琢磨にたった一人で大悟は挑む。
それに対して、琢磨の影
ドッペルゲンガーの相手をする
善、志保、エーコ
影相手に人数を注ぐことは明らかに無駄である…
そう思われたが、実はこの大悟のサシの勝負には、理由があったのだ。
決して大悟は、己のプライドで勝負を申し込んだわけではない。
(なんとかうまくいった…
口で説明するわけにはいかないからな…
仮に本体に多人数で挑んだとすれば…
きっと琢磨の影が、本体を守ろうと、いっしょになって戦うはめになる…
今一番脅威なのは、本体と影が同時に襲ってくることだ…
一人だけでもこんなに強いのに、その強さが同時に攻めてきたとしたら…な
だから本体と影を別々にさせて、戦うしかない
恐らく善一人では琢磨を倒すことは不可能…
となると、挑むのは俺しかいない
俺も一人では、正直無理かもしれんがな…
これに賭けるしかないんだ
俺が…なんとしてでも倒す!!)
そんな大悟が考えた苦肉の策
もちろん善は知ることもなく、善は大悟の熱意に応じた。
善達3人は琢磨の影に挑むが、気分屋のエーコは、影相手にはどうもやる気が出ないでいるようだ。
「まったく…意味ないことと分かってて戦わなきゃいけないなんて…
まるでやる気出ないし」
「そんなこと言ってると、影にやられるぞエーコ
大悟と琢磨の勝負に手出したら、俺が許さないからな
特に志保!」
善はエーコに忠告し、志保には大悟の勝負に関与させないことを促した。
「わ、分かってるわよ!
そんなことより行くよ!」
少しその気があったのか、志保は慌てたが、すぐさま影との戦いに切り替えた。
こちらには影に相性のいい、善がいる。
「俺の火の力で、消えてろ!
ファイヤー!!」
善が火の力を放つ。
すると、琢磨の影は善達の影のように、火を恐れて逃げまとうのではなく反撃をする。
善が火の力を放ったように、影は闇の力を放つ。
その互いの力は、ぶつかり合って消滅した。
「なるほど…さすがは琢磨の影…
一味違うみたいだな…
そう簡単にやられてくれはしないか」
善は大悟に琢磨を任せている。
だが、そうは言っても、どうしても大悟の方が気になってしまう。
気にならないわけがない。
琢磨と大悟の力の差は歴然。
琢磨が呆れ気味に大悟に言った。
「どうした大悟?本当にこんなもんなわけ?
この程度の力じゃ四天王にはなれねぇなぁ…」
「黙れ!!そんなもの、なりたくもない!!」
(やっぱり大悟がおされている…
俺の判断は、間違いだったのか…?)
善は大悟の戦いを眺め立ち尽くしていた。
そこに大きなスキが生じる。
「善!!危ない!!」
よそ見をする善に、影が大きな闇の鎌で斬りかかったが…
「何よそ見してんだし
あんたあたしに助けられてばっかじゃん?」
エーコが氷の盾で守ってくれていた。
「エーコ…」
「しっかりしろし!
あんたが大悟に任せるって言ったんじゃん?
だったら黙って自分は影との戦いに集中しろし!!」
「そうだよ!善!
善の火の力があれば、なんとか協力すれば
影ぐらいなら倒せるよ!!」
善はエーコに最もな指摘をされ、志保には励まされ…
そこでようやく善は気づいた。
(大悟を一番信じてなかったのは、俺か…)
善は両手で自分のほっぺたを軽くひっぱたき、再度気合いを入れ直す。
「エーコ、志保…
悪かった…!
2人とも、力を貸してくれ!
まずはこの影を倒そう!!」
ようやく善は目の前の敵に集中することができ、ここからの善は見違えるような動きを見せた。
3人の歯車は、うまくかみ合い始める。
エーコは守りに専念し、志保はアクア・ウィップで敵の体を縛り付け拘束する。
もちろん攻撃の主体は善である。
「よし!うまく決まった!
私の水のムチで、あいつは今身動きが取れない!
今がトドメよ!善!!」
「おし、任せろ!!」
影・闇の弱点をつく善の攻撃
イフリート・ソードで善は琢磨の影を切り裂いた。
「やったし!!
やっぱ協力すれば、琢磨の影でもなんとかなるし!!」
ターゲットを影だけに絞った善達は
ほぼ無傷で、琢磨の影の撃破に成功した。
これで今度こそは琢磨本体、と勢いづくはずだったが……
「遅かったね 待ちくたびれたよ」
そう琢磨の声が背後から聞こえ、善は即座に後ろを振り返った。
するとそこには……
血だらけになって横たわった大悟の姿があった。




