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3BECAUSE  作者: Guru
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第54話「いらない覚悟②」

「でもあんたが寝付けない理由…


怖いからじゃないんじゃない…?」



「………」



志保の問いに善は黙った。


しばし二人の間に沈黙が流れたが、再び志保が善に問いかける。



「後悔しているの?善…」



「えっ…?」



「レトインのこと…


レトインを突き放してしまったこと…

そうなんでしょ?」



善はムキになって、カッと熱くなった。



「そんなわけねぇだろ!!

第一に、突き放すようなことをさせたのはあいつの方だ!!


後悔も何も…

いけないのはあいつだ…」



「そうね…」



善の声のボリュームは、しりすぼみに小さくなる。


しまいには、かすれるような小さい声で、善はうつ向きながら言った。



「なぁ…志保…


明日の四天王戦…

もし俺が負けそうになったら…



おまえらだけは逃げてくれ」



「!!!


何バカなこと言ってんの!!

それに戦うまえから負けること考えてるなんてあんたらしく……」



志保が弱音を吐く善を叱ろうとした時、善がその声を遮った。



「違うんだ」



「えっ…」



いつもとは違う善がいる。

いつもの善なら、ここで熱くなって反発してくるであろう。


しかし、善は声を張り上げた志保に対し、冷静に対処した。



「おまえ言ったよな…?


相手がどんな強い相手でも、生きてさえいれば、命あるかぎり勝てる可能性はあるって」



「い、言ったわよ…」



「確かにその通りだと思った…


死んじまえばすべては終わり…

でも生きてさえいれば、また戦いに挑むことができるしな…」



「けど私が言ったのはそういうことじゃない!!


初めから負けること考えて戦うのなんて…

そんなの意味ないよ…」



「東條に会って、自分の実力を知った

これが俺なりに真剣に考えて出た答えだ


全員死ぬわけにはいかない…

たとえ俺が死んでも、すべては終わらない」



志保はまた善がマイナス思考になり始めている…


そう最初は思った。


だが…

例え“自分が死んでもすべては終わらない”



この言葉を聞いて、これは善だからこそ出た

前向きな考えゆえの発言だということに気がついた。


普通ならば、自分の死は人生の終わり…

それはすべての終わりだ。


けれども善は、自分の死の先の世界を考えた。

これはなかなかできることではない。



この考えはあの時の悲観的な善では、決して出てこなかっただろう。

志保は善の覚悟を知った。



「善…あなたの覚悟は分かった…

十分伝わった…でも…


死ぬ時は全員で死にましょう

きっと大悟も許さない もちろん…


レトインもね…」



「志保……」



「あなたの決めた覚悟は、私たちもいっしょに背負い込むから


勝手な真似はさせないわよ?」



「そうか…

ちぇっ…一人かっこつけるわけにもいかなかったか…


ありがとう…」



善は照れながらニヤけて、志保に背を向けた。

それは恥ずかしかったと同時に…


目から溢れて、こぼれそうになった涙を隠したかったからかもしれない。


善は心底、志保の気持ちに感謝した。



「さぁ…いい加減寝ましょう」



「あぁ…」



二人はようやく寝袋に戻り、寝る準備を始めた。


そして二人が横になり、目をつぶったあと、もう一人の人物がそっと目を開けた。



(善のバカ野郎が…いらん覚悟決めやがって…


そんなの気持ちだけで十分だよ…)



大悟だ。

志保の言う通り、寝ているように見えていた大悟は実は起きており、二人の会話を黙って聞いていたのだ。


大悟は善の気持ちだけを受け取り、起きていたことは二人には告げず、また眠りに入った。




そして次の日を迎える。

約束の10時は刻々と迫っていた。


ライジングサンのメンバーは、案内された場所へと向かった。



「ここか…

四天王がいるって場所は…」



地図の記された先に到着する。

そこはあまり使われていなそうな古ぼけた工場があった。


かもし出す不気味な雰囲気に、志保は怖じ気づく。



「いかにもジョーカーが好みそうな場所ね…」



「さぁさぁ!開けるし!

なんでも来いだし!!」



その志保に対し、強気のエーコ。



「えらいやる気だなエーコ…


よし、中に入るぞ」



善は錆びて重たくなった大きな扉を、力いっぱい開けた。

その工場の中には……



「え~っ…マジで来ちゃったの!?


戦わなきゃいけないのか…

めんどくさっ…」



四天王の琢磨が待ち構えていた。

かったるそうに、琢磨が頭をかく。



「お、おまえが四天王か!?」



「そうだよ

俺が四天王の一人の琢磨 よろしくね」



(な、なんだこいつ…

こいつ本当に四天王か…?)



工場内は非常に暗かったが、今にも切れそうな電球の光が、わずかに残っている。


かろうじて、うっすらと周りが見えている状況だ。



「ふぁ~ぁ…眠いけど…


敵さん来ちゃったわけだしね…やるとしますか!」



あくびをして、のびをする琢磨。

とても四天王とは思えない立ち振舞いだ。



「なんだし!やる気あんのこいつ!?」



「エーコ 油断だけはするな!!」



「だって…」



エーコと大悟がもめていると…


謎の“ある物体”が善達の目の前に現れた。



「な、なんだこれ…?」



その物体をよく眺めると…

志保があることに気づいた。



「これって…大悟…?」



「おい!俺はここにいるって!!」



「だってこれ…どうみても大悟じゃない…


ぼんやりとしてるけど…全身真っ黒の大悟みたい…」



志保がわけの分からないことを言っていると、その謎の物体は突然志保を襲った。



「!!!

なっ、なにこいつ!!」



「大丈夫か志保!!」



心配する善であったが……



「善!!おまえの後ろにも“何か”いるぞ!!」



大悟の声に反応して善が後ろを向いた。


そこには先程とは違う、謎の黒い物体が立っていた。


そのシルエットはどうみても…



「お、俺か…?これ…?」



善にそっくり、いや、善そのものだった。



「もしかしてこれ…」



二つの謎の黒い物体…


またしてもここで、志保が重大なことに気がついた。



「影…?善と大悟の影なの…?」



「影ってどういうことだよ!?」



「だって今…


光に当たって映るはずの善の影がない!!」



「なっ、なんだって!?」



善が慌てて下を向くと、確かに志保の言う通り、普段はあって当たり前のはずの影がなかった。


唖然とする善だったが、ここで琢磨が呟いた。



「なーんだ もう気づいちゃったのね」



「!!!

いったいどういうことだ!?」



一同は未だにパニックに陥る中、四天王・琢磨が嬉しそうに笑顔で言った。



「そいつは俺の力で生み出された…


“ドッペルゲンガー”さ




“ダーク・リミテッド”


“闇”の力でね」






第54話  “いらない覚悟”  完

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