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3BECAUSE  作者: Guru
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第50話「無力②」

構える二人を見て、その人物の正体、東條は不適な笑みを見せる。



「ん?あぁ…


久しぶりだね 裏切り者の志保に大悟」



青ざめる二人を見て、善も遅ればせながら戦闘体制をとった。



「おい…誰なんだよ…こいつは?」



善の問いに、志保が後ずさりしながら答える。



「こ、この男はね…


ジョーカー四天王の東條よ」



「四天王だって!?」



「それだけじゃない…


こいつは四天王の中でも、最も強いと言われている男…

いや、次世代のジョーカーを担う人物、ジンの次に強い男!!」



「!!!


(ジンの次に…だと…)」



満更ではない様子で、東條は微笑む。



「そこまで言ってくれるとは志保…


照れますね

でも…ジンさんにはまだまだかないません


次の世代なんて当分来ませんよ」



この東條の見せる余裕が、大悟は気にくわない。



「そんなことはどうでもいい…


なぜ貴様がこんなところにいるんだ!!」



「なぜ?おかしなことを言う人ですね…


あなた達の居場所は、とうにこちらに割れている…

そんな場所を拠点としてる方がおかしいと思いますけどね!」




善は焦っていた。


キングのヤコウと出会い、ジンをジョーカーを倒すという気持ちが、ますます強くなっていた。


レトインを失った今の善に、冷静さなど欠片もない。



(こいつがジンの次に強い男…

てことはジョーカーのナンバーツー…


こいつをここで倒せばジョーカーの勢力は一気に弱まる!!

こいつを倒せば…倒せば!!)



無意識のうちに善は、闘志をむき出しにし、東條に攻撃を仕掛けようとしていた。


だが……



(うっ!なんだこれ…こいつ…

いったい今何を…?)



善の気持ちとは裏腹に、体一歩たりとも動くことができない。

何もすることができないでいる。



(な、なんだこれ…?

こいつは“何か”している!?どんなリミテッドの能力だ…!!)




一切情報のない強敵をまえに、何もできない自分がいる…


ここでようやく善は多少の冷静さを得る。

そして、初めて気づく。



まだ相手のリミテッドの力を感じ取ることがうまくできない善でも分かる


未だかつてないほどの大きなリミテッドの力。

それに伴う殺気。



「す…すげぇ…」



思わず善も、声に出して本音が漏れてしまっていた。



(リミテッドの力がハンパねぇ…


これが…これがジョーカーの二番手…


こ、こんなの…かなうわけねぇ…!!)



普段は超プラス思考、負けず嫌いの善もすんなり認めた東條の強さ。


どこかキングの黒崎と、口調や雰囲気が似ていたと思われた東條だったが…


このにじみ出るほどの殺気…


この一点が、大きく黒崎とは違った。

東條の瞳の奥底には、どこか深い闇を感じる。



それと善は、この東條の殺気と同時に、今気づかされることとなる…



恐らく東條と同等の力があると予想される


キング・ヤコウ


強さは未知数だが、間違いなく力はあると思われる


レトイン



この二人がいかにして、善と対峙しても敵意を殺して接してくれていたのかが…



(キングの嵐の力もすごかった…

でもこいつの場合は比じゃねぇ!!


けど…

ジンは…これ以上に力が上…?)




「やめておきなさい 橘善

キミでは相手にならない」



「くっ…」



東條はとうに察していた。

善が自分に攻撃を仕掛けようとしていたことに。



「何も私はあなた達を倒しにやってきたわけじゃないのですよ…


今日は招待状を渡しにやってきただけです」



「招待状…?」


(このパターン…もしや…)



「このメモが書いてある場所に…


明日の夜10時 私とは別の四天王がいます


決闘を…

ライジングサンとジョーカー・四天王の決闘のお誘いです」



どうせ罠に決まっている…

志保がかみついた。



「決闘ですって…?そんなふざけた話を…」



「いいではないですか キングの誘いは受けて、ジョーカーの誘いは断るんですか…?


そんなの理不尽すぎますよ」



手口からして、大悟にはそんな予感がしていた。



「やはりな…やり方がキングと同じ…


俺達がキングと会ったってのも、すでに情報として入っているってわけか」



「えぇ…ジョーカーの包囲網の広さ…


元ジョーカーのあなた方ならよくご存じでしょう?」



元ジョーカーの志保と大悟は、その言葉を聞いて黙った。

思いあたる節があったのだろう。



「では…用件は済んだので…


私は帰らせていただきますね」



東條は招待状だけ手渡すと、足早にライジングサンのアジトから立ち去り始めた。

  

噂の男の善と初めて対峙した東條。

東條はため息をこぼした。



(橘善…ジンさんが恐れているから…


どれだけすごいのかと思えば…

この程度の力…


それに、まだ幼すぎる

これでは…琢磨に勝てるかも怪しいですね…



期待はずれもいいとこだ

つまらない…実につまらないよ…)



東條はゆっくり歩きながら帰っていく。


善はその東條の去りゆく背中を、ただじっと見るだけで…


結局、一歩も動けずじまい。

緊張の糸がとけたと同時に、善はひざまづいた。



「何も…何もできなかった…」



善は悔しそうな表情を浮かべ、握り拳を作り

地面を何度も何度も叩いた。



東條がいなくなり、安心している自分がいたからだ。

そんな自分に嫌気がさした。


幾戦もの死線を乗り越えてきたはずなのに…

死への恐怖は消えることはない。



「何も…何も…


俺には何一つもできないのか…」




圧倒的な力の差を見せつけられた、四天王・東條。 


善はただ見過ごすだけで、後を追うことも、叫ぶこともできずにいた。



すでに遥か遠くに消えたはずの東條だったが…


善の目にはその後ろ姿が、いつまでも焼き付いて、消えずに残っていた。






第50話 “無力” 完

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