表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3BECAUSE  作者: Guru
5/131

第5話「First Because」

「ごめん ごめん…親父…今まで迷惑ばっかかけてごめんな…」



泣き崩れた善は、空に向かってひたすら謝っていた。


遙かかなたで見守ってくれてるであろう、今は亡き父にむかって。



初めて見せた素直な気持ち。


届いただろうか…?いや、届いてるに違いない。



不思議となぜかそんな気がしてやまなかった。






BECAUSEスリービコーズ


第5話

 「First Because」







「どうやら…やっと受け入れることができたようだな 橘善」



「信じるしかねぇだろ もう…」



善の右手の甲には、不思議なマークが描かれ輝いていた。


このマークは善が“火”を発したときに、浮き出てきたものだ。



「なんなんだよこのマーク…こいつがリミテッドの証なのか…?」



「いや…そういうわけではない

そのマークはリミテッドの者、全員にあるわけではない」



「……?」



すると、光輝いていたマークの光が消え

マークだけが善の右手の甲に残った。



「それにしても何者なんだあんた…


なぜそんなリミテッドなんつーもんに詳しい!?」



フードを被った男は、善の質問に応じようとしない。


「………


俺の名前は “レトイン”


俺のことは今後そう呼べ」



「答えろよ!!俺の質問に!!


(何がレトインだ…どう見ても日本人じゃねぇか!!

あくまで本名は出さねぇつもりか)」



「悪いがそいつは、答えるつもりはない」



「チッ…だったら…

俺を助けた理由は!?」



「理由…?」



「おまえは明らかに俺が危険な目にあうことを知っていた


なんで事前に知ってたのかってとこが怪しいが…

なぜ俺を助けようとする必要があった!?」



フードを被った男、改めレトインは、にやけながら言った。



「なんだ?人を助けることに、理由なんて必要なのか?」



「けっ!あんたそんなガラじゃねぇだろ」



「フン…生意気なガキだ…

仕方ない…正直に話そう


おまえの“力”が必要だったからだ」



「俺の力だと…?」



「そうさ おまえが授かった力だ


おまえみたいなどうしようもねぇガキに育てた父親…

そのクソみてぇな父親が残した、その力だよ!」



突如、暴言を言い放ったレトイン。

聞き捨てならないセリフに善は熱くなる。



「なんだと!!親父がクソだと!?


俺の悪口は構わねぇ…

けど親父のことを言うなら許さねぇぞ!」



「何をムキになる必要がある?本当のことを言ったまでだろ

父親がバカだからこうやって息子まで……」



一向に悪口を言うのを止めないレトインに、善も我慢の限界だった。



「てめぇ!!それ以上、親父を悪く言うんじゃねぇ!!!」



善はレトインに右手をかざし、怒りと共に叫んだ。


その瞬間、善の右手は光り、真っ赤に燃える“火”の力が放たれた。


その火の力はレトインの顔の左横をかすめた。



(これほどまでとは…想像以上だ…)


「そう それだ!橘善

そのおまえの持つリミテッドの力が必要なんだ」



「!!!


(こいつ…俺をわざと怒らせ挑発して、この力を出させやがったな…)」



「やつらを倒すためには必要なんだよ おまえの力がな」



「やつらって…誰なんだよ…?」



「“ジョーカー”の連中だ」




“ジョーカー”




この名前には聞き覚えがあった。



「ジョーカーって…

確かあの女が俺に誘ってきたチームの名前じゃねぇか」



「そうだ あのおまえを襲った女も、ジョーカーの一員だ」



「なぁ…いったい何なんだよ…ジョーカーって…」



「ジョーカーとは…

リミテッドだけで構成された、闇の組織」



「リミテッドだけでだと!?」



「そうだ…

今までジョーカーは息を潜んで闇に隠れていた


しかし、とうとうジョーカーは表に出てきて動き出した」



「やつらの目的は…いったい何なんだ…?」



「さぁ…それは分からない…

ただ一つだけ分かっていることがある



やつらはおまえを狙っている」



「お、俺を?なんでまた俺なんかを!?」



「スカウトだ ジョーカーへのな」



「スカウトだって!?誰がそんな危ねぇ組織なんて入るかよ!!


バカバカしい!!」



善は話を聞くだけ聞いて、レトインのまえから立ち去ろうと、背を向けて歩き出した。



「おい!善!どこに行く!?」



「帰るんだよ


もうだいたいの話は分かった 色々教えてくれて助かったぜ」



「おまえにはもう帰る場所なんてない…


おまえはこれから命を狙われ続けることになるぞ!?」



立ち去ろうとしていた善の足が止まった。

レトインは話を続ける。



「組織からの勧誘を断れば、おまえのリミテッドの存在は逆に邪魔になる…


そうなればおまえは殺される!!」



善は振り返り、レトインに助けを求めるかのように聞いた。



「だったら…俺はどうすればいいって言うんだよ!!」



しかし、レトインは表情何ひとつ変えず冷酷に答えた。



「戦え それしかない


ジョーカーに勝つ…もうそれしか手段はない」



「なんだよそれ…

闇の組織を敵に回して生き続けろって言うのかよ!!


そんなの嫌に決まってんだろ!!」



「しかし…もうどちらかしかない


ジョーカーに服従するか…ジョーカーに反発して戦うかの…な」



「そんなの…


(どっちも嫌に決まってるじゃねぇか…)」



まるで納得はいかなかった。いや、納得いくわけがない。


腑に落ちない善の表情に気づいたレトインが言った。



「だがな善…おまえはジョーカーと戦わなければならない


おまえには“その理由が3つある”」



「理由…?」



「あぁ


通常、リミテッドになってから、その能力を操るには最低でも半年はかかる」



「!!!」



「それなのにおまえは、能力に目覚めたばかり

にもかかわらず、もう力を操ることが可能だった


おまえには十分にリミテッドとしての素質がある」



(そんな素質…いらねぇっての…)



「だからこそジョーカーはおまえの力がどうしても欲しいんだ


逆に敵に回せばおまえの力はジョーカーにとって脅威になる」



「そんなこと知るかよ…」



「“リミテッドとしての素質”


それがおまえがやらなければならない理由のひとつだ


その力を活かし、おまえはジョーカーを倒さなければならない」



「素質があるから、俺はジョーカーを潰さなければならないって?

ちょっとそれ…そうとも言えないんじゃねぇか…?」



「……?」



先程まで落胆していた善が、笑みを浮かべながら言った。



「素質があるからこそ、俺がジョーカーの一員になる


そしたらどうする?」



「………」




もし本当にそうなったとしたら……




『世界は終わる』




そう善に言いかけたが、レトインは言うのをやめた。



「冗談だよ!ジョーカーになんか入るわけねぇだろ!そんな怖ぇ顔すんなっての!


第一、なんで素質があるからって俺がジョーカーを潰さなきゃなんねぇんだよ!


それ自体、理由として成り立ってないんだけど」



「おまえはまだ、事の重要さを理解してないんだ…」



「あぁ そうなの?


で、俺がジョーカーを潰さなきゃならねぇ理由が3つあんだろ?


別にやるわけじゃねぇが、ついでにあと2つも教えやがれ」



「………


今のおまえには、言うつもりはない」



「なんだよそれ!あんた肝心なとこはそうやってぼかすんだな!!


そんなんだから、どうもあんたは信用できねぇんだよ!!」



「別に信用されたいとは思わない


俺が敵か味方かどうかは、おまえが判断しろ」



「興味ねぇよ あんたのことなんて」




レトインの話に呆れた善は、また振り返り歩き始めた。



「じゃあな!今度こそ本当に帰るからな!」



「知らないぞ…?どうなっても…


少し考えれば分かることだ

おまえの今置かれている状況を考えれば、どれほど危険な目にあうかが…」



「どうぞ おかまいなく」



「リミテッドの、ジョーカーの、何の知識もないおまえがだ


俺といっしょに行動することが一番安全だってことがな!!

無い頭で、ちょっとは考えてみるんだな」



「あーっ!!うるせぇ!!あんたになんか守られたくないっての!!」



善はレトインと散々言い合いながらも、その場をあとにした。






学校を出てから色々とあったが、善はようやく家へと帰ってくることができた。



「ただいま 叔母さん…


(やっべ、学校サボって帰って来てたんだった!

バレないようにゆっくり入らなきゃ…)」



そっと玄関のドアを開け、忍び足で自分の部屋へと入る。



(ふぅ~…今日はなんだか一日疲れたぜ…)



善は部屋に入るなり、すぐさまベッドに寝転んだ。


朝からとても現実とは思えない連続の体験に、善の身体は肉体的にも、精神的にも疲れきっていた。


そのせいなのか、横になると善はすぐに眠りについてしまった……





「ん…う~ん…


俺…寝ちまったのか…今何時だ…?」



昼過ぎに寝たせいか、あまりよく寝ることはできなかったようだ。


時計を見ると、まだ夕方頃だった。



(なんだ…まだこんな時間か…)



レトインと別れて、あれから数時間がたった。


レトインにまた『命を狙われる』と脅されたが、何も起きる気配はない。



(ほれ見ろ…何も起きやしねぇじゃねぇか

これから俺は普通の人生を過ごすんだよ)



そう安堵し、善はまた眠りにつこうかと思ったが、はっとした。




もし…レトインの言ったとおり、俺がまた命を狙われたら…



いっしょに住んでいる、叔父さんや叔母さんが危ない。




もし…俺が学校に行ってる間に、あいつらが襲ってきたら…



学校にいる、みんなが危ない。



“もし”…“万が一”…

そんなことを考えていたら、キリがない…


けど…起きてしまってからでは、もう遅い。



レトインは善に向かって、こう言っていた。



『おまえにはもう帰る場所なんてない』



それを聞いた善は、その時こう思っていた。



『俺には帰る場所がある 居場所はいくらでもある』



両親は亡くなってしまったけど…


俺には大切な人がまだたくさんいるから…

そう思っていた。




でも…それは“逆”だった。




大切な人だからこそ…



“失いたくないんだ”



そういうことだったんだ…

今になって、レトインの言葉の意味に気付いた


俺の周りには、危険が伴う…




俺にはもう…帰る場所なんてなかったんだ…






第5話 “First Because” 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ