第47話「一滴のしずく①」
雨風が吹き荒れ、雷まで鳴る悪天候の最中、ついにレトインが自ら口を開いた。
「善…正直に答えよう…
俺はリミテッドだ
そして、ジョーカーを作ったのは…この俺だ」
善の体は固まった。信じがたい事実だ。
「レトインが…リミテッド…
レトインが…ジョーカーの創設者だと…?
そんなバカな……」
善はレトインの両肩を掴み、目一杯の力で体を揺すった。
「嘘だろ…?嘘なんだろレトイン?
なぁ!嘘だって言ってくれ!!」
善は何度も何度も体を揺すり、レトインに問いかけた。
しかし、レトインは何も答えようとはしない。
キング・ヤコウは空を見上げ、真っ黒に染まった雲を見つめた。
「さすがだ…天候まで操れるのは…
貴様ぐらいかもしれんな」
すかさず志保も空を見上げる。
「えっ!?このおかしな天候…まさかこれもレトインが…?
いや…待って…
この光景、以前どこかで…」
先程までの天気とはうって変わって、激しい雷雨。
あまりに急激な天候の変化だ。
一同が空を眺めていると突然
ドーーン!!!
と、バカでかい音をたてながら雷が落ちた。
その雷はレトインめがけて真っ逆さまに落ち、レトインの体に直撃した。
「うわっ!!なんだ!?」
レトインの隣にいた善は慌てた。
まさか雷が人に直撃するとは思うまい。
周りも慌ただしくなる中、レトインがまるで何事もなかったかのように、平然と話し出す。
「信じられないというならば善…
これなら信じてくれるか?
俺はリミテッド
“サンダー・リミテッド”
雷の力だ」
3BECAUSE
第47話
「一滴のしずく」
レトインの口から真実を告げられ、善はショックを受けた。
全身の力が一気に抜けた。
「この天気…この雷がレトインの力…
なんだったんだよ…
今まで俺達は何を信じてきたって言うんだよ!!」
キング・八光以外の人物は、この事実を初めて知ることとなる。
普段クールで冷静な黒崎も、驚きを隠せない様子。
「まさか…ジョーカーを創ったのが、このレトインと言う人物だとは…」
大悟はもちろん、レトインがリミテッドだと睨んでいた。
しかし、レトインがジョーカー創設者とは思ってもみない。
そして、今まで共にレトインと行動し、何の疑いも持っていないと思われた志保だが…
実は志保もレトインには疑惑を抱いていたのだった。
(ジョーカー創設者とは驚いたけど…
やはり彼はリミテッドだったのね…
どうりであの時……)
これは、大悟がまだジョーカーの一員で、善と大悟が戦闘中の時の話。
『あいつは…
志保!志保じゃないか!!なんで志保がこんなところに…』
レトインは善に頼まれ、買い出しに出かけていた。
その間に、ジョーカーに送り込まれた刺客・大悟が善を襲う。
レトインは善のもとへ急ぐ。
その際、数時間前に決着をつけたばかりのジョーカー・志保とレトインは遭遇する。
『!!
あ、あなた…善といっしょにいた…』
『チッ!!もしや復讐に来たか!?
(この急いでるときに…なんてタイミングが悪い…)』
『今、橘善がジョーカーに襲われて、大変な目にあってる!!
早く…急がないと!!』
『これは一体どういうことだ!?さっきまでおまえは俺達とは敵で…』
『いいから!!早く!!善を死なせたいの!?
早く助けに行くわよ!!』
『あ、あぁ…!!』
志保は復讐などではなく、善に借りを返すために、善の救出へと向かっていた。
これがきっかけで、志保は善と行動を共にすることになるわけだが…
この時、志保はレトインにひとつの疑惑を抱いていた。
(この男…なんでなの…?明らかにこの男は…
善の居場所が分かっている…?)
善達が拠点とした場所は、夜になると真っ暗で、明かりなど何ひとつない。
草木が生い茂り、あたり一面同じ景色が続いている。
一度入り込んだら、簡単に迷ってしまいそうだ。
(こんな場所なのにあのレトインは…
迷うことなく一直線に善達の方へと向かっていた…
まるで…
善と大悟が放つ“リミテッドの力を感じ取っている”かのように…)
「やっぱり…レトイン…あなたはリミテッドだったのね…
それにこの光景は……」
まじまじと志保は空を見上げて眺める。
その横で、エーコがあることに気がついた。
「この天気…なんか変だし…
うちらんとこだけ、雨に雷じゃん…」
善達の真上にある、真っ暗に染まった雲。
激しい雨が降り注ぐ。
しかし、少しばかり遠くの方に目をやると…
いたって何てことない普通の天気で、一切雨など降ってはいなかった。
この善達がいる一部分だけ、局所的に天気が荒れていたのだ。
「だから言っただろ?この天気、あいつの仕業だってな…」
不思議がるエーコにヤコウが、そう声をかける。
その言葉を聞いて大悟は頷いた。
「ヤコウの言うとおりのようだな…
これこそがレトインの力…それに…
なぁ、志保」
「えぇ…このおかしな天気…
“あの時”とまったく同じ」
志保と大悟には、この不思議な天候には見覚えがあったのだ。
志保は当時を振り返るようにして語る。
「忘れもしないわ
この光景は…
私と善が手を組んで、大悟と戦っていた時に起きた
あの奇跡の“勝利の雨”と同じ!」
「そうだったな…
あの時もこんな不思議なことが起きた
雨さえ降らなきゃ、2対1でも俺が勝つことができたんだ…
なのに、突然の大雨…
そのせいで俺は負けた
運が悪かったなんて思ってたけど…
まさかレトインが仕掛けてた雨だったとはな…」




