第36話「傷だらけの戦士①」
ライジングサンは何度も敗れそうになりながらも、ジョーカー・四天王の一人
音の力を操る、綾音を撃破することに成功した。
「勝った…勝ったんだよな!?
俺達四天王に!!
何が四天王だ!楽勝だぜ!!」
善がはしゃぎながら喜んでいる。
さっきまで死にそうになっていたのが、うそのようだ。
「おいおい…あまり調子に乗るな 善」
呆れている大悟だが、勝つことができて、ほっとした様子で、笑顔を見せている。
我を忘れてはしゃぎ続ける善。
しかし、善はふと大事なことを思い出した。
「あっ…!!
志保!!!」
志保の存在だ。
志保は綾音との戦いでやられ、瀕死状態。
善が慌てて志保のもとへと駆け寄る。
「志保!大丈夫か…?」
善は志保の顔を見て思わず、くすりと笑った。
なぜなら、志保は戦いでやられたと言うより
『こいつ…単に眠くて寝てるだけなんじゃねぇのか?』
それくらい安らかな表情をしていたからだ。
(よかった…この様子なら、しばらくすれば目を覚ましそうだな)
綾音との激戦。
間違いなくキーとなったのは志保だった。
志保まで己を忘れ、綾音の術に呑み込まれていたら、勝負は完全についていた。
唯一の希望であった志保が、その希望を善達に託し、勝利へと導いたのだろう。
初めてチームがひとつになった
そんな瞬間を、志保が創り出してくれた。
ライジングサンの一同は、この戦いで大きな収穫を得たのだった。
志保の体は心配ではあるが、ジョーカーの四天王を撃破し、ライジングサンにとっては喜ばしい出来事だ。
しかし、そんな中で素直には喜べない人物が、ここに一人いたのだった。
その人物とは…
土井大悟である。
大悟は、先程からずっと険しい顔をしながら、黙って何か考え込んでいる。
その大悟がついに重たい口を開いた。
「おい!レトイン!ちょっと待て」
志保の体を心配し、志保の所に歩み寄ろうとしたレトインを大悟が引き止めた。
「なんだ…?」
大悟はレトインを睨みつけながら言った。
「貴様…何をした?」
「……?なんの話だ?」
「とぼけるな!!!」
大悟はカッと熱くなり、声のボリュームも一気に上がる。
「善が気づかなくとも、俺の目はごまかせないんだぜ!?」
「何の話をしてるんだ?俺にはよく分からないんだが…」
「とぼけたって無駄だ!!
綾音が左手で力を溜め、トドメのソニックブームを放とうとした瞬間…
綾音のギターの弦が切れた」
「あぁ…ついてなかったみたいだな ヤツも
こっちにとっては運がよかった」
「運がよかった…?違う…!!
一気に全部の弦が切れたりするもんか!
俺には見えた…“何か”が…」
「何か…??」
レトインが大悟から目をそらし、大悟に背を向けた。
レトインの背中越しから、大悟は話を続ける。
「その何かが、一体何だったのかは分かりはしなかったが…
俺には見えたんだよ…
貴様の手から何かが放たれていったのが!!」
「………」
今まで大悟の話に応えていたレトインが、突然黙った。
そして、少しの沈黙の後、レトインが大悟の方を振り返る。
今度は大悟の目を背けることなく、しっかり目を見てレトインは言った。
「大悟…こいつは以前、善にも言ったことなんだがな…
俺のことを敵か味方かは、貴様が判断しろ」
このセリフは、善が自分がリミテッドだと分かった直後に
レトインが善に向けて言った言葉だった。
大悟は自分の気持ちを整理して、レトインに改めて聞いた。
「レトイン…そう言ってきたってことは…
『今俺が言っていたことを、すべて認めた』
そういうことでいいんだな?そうとらえていいんだよな…?」
核心をつく大悟であったが、レトインは軽く大悟をあしらった。
「さぁな
大悟、今は“そんなこと”より志保の体のことのが心配だ
志保のところに行くぞ」
レトインはそう言って勝手に話を切り上げ、志保のもとへと歩いていく。
「チッ……」
大悟はあと一歩のところまで詰め寄るが、レトインを逃がし、舌打ちした。
レトインの性格上、これ以上問い詰めても何も答えるわけがない…
そう判断した大悟は、もやっとしたものが残るも、渋々あきらめた。
(レトイン…一体おまえは何者なんだ…
正体不明、名前すら分からずじまいだが…
なぜか、やたらとリミテッドやジョーカーに詳しい…
今まで何一つ分からなかった
レトインは全て“謎”に包まれていた…
しかし、今ここで一つ、はっきりしたことがある…
レトイン……
おまえは何らかの能力を持つ“リミテッド”だ)
3BECAUSE
第36話
「傷だらけの戦士」
レトインが一体何者なのか、より一層悩み始めた大悟。
だが、レトインが言ったように、大悟も志保のことが心配だった。
気持ちは全く晴れないが、今はレトインが何者なのか考えるのを、一旦大悟はやめた。
大悟が志保のところまで歩みより、先に来ていた善に尋ねた。
「善 志保の様子はどうだ?」
「大丈夫だ 今は単に眠ってるだけみたいだ」
「そうか…よかった…
まったく…無理しやがって」
大悟がほっとしていると、すかさずレトインが
言った。
「それはおまえらにも言えることだがな」
善は照れ臭そうにして、笑ってから答えた。
「へへっ…確かにな!
けど、無理でもしなきゃ勝てる相手じゃなかった
運が良かった ついてたぜ…俺達…」
「あぁ…そうだな…」
大悟は善が言った言葉に対し、何の反論もしなかった。
レトインがリミテッドであろう事は、善には隠しておくことにした。
ここでそんな話をしたら、また善とレトインが揉める。
それに、大悟の中でレトインがリミテッドであることは“確信”したのだが
まだこれと言って決定的な証拠はない。
今レトインがリミテッドであると語るには、不十分な状況であった。
善は知るよしもないが、大悟とレトインに嫌な空気が漂う。
そんな時だった。
「ん…う~ん……」
「!!!
志保!!??」
綾音との戦いの最中に気絶した、志保が目を覚ました。
「おい!大丈夫か!?志保!!」
善の声を聞いた志保が、カバッと起き上がり、周りを見渡す。
「綾音は!?四天王は!?
あれっ……??」
一人慌ただしくしている志保を見て、善は茶化すようにして笑っている。
その善の素振りで、志保は気づいた。
「もしかして…勝ったの!!??
あの状況からどうやって…?」
「へっ…聞いて驚くなよ?」
善は得意気になり、ちょいと溜めて言った。
「実力だよ じ・つ・り・き。
まっ、俺の手にかかれば四天王なんてこんなもん!
ちょちょいのちょいよ!!」
(あのバカ……)
ここで出た。善の得意技・調子乗り。
レトインと大悟も呆れるほどだ。
唖然とする志保…
善の言ってることなど、これっぽっちも信用していない。
けれど、綾音を倒したということは事実だと分かり、とても安心したようだった。
しかし……
そんな安らぎの時間も、長くは続かなかった。
パンパンパンパン!!
どこからか聞こえてくる
実にわざとらしく、不愉快な拍手の音が…
ライジングサンの一同は、すぐに気づいた。
忘れはしなかった。この以前耳にした拍手の音を。




