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3BECAUSE  作者: Guru
35/131

第35話「一度目の終わり②」

「くっ……」



倒れていた善が、ゆっくりと立ちあがった。

それを見た綾音が、舌打ちをする。



「チッ!これじゃ力が足りないか!」



大悟が急いで善にかけより、立ち上がる善の体を支えた。



「おい!善!大丈夫か?


それに…まさか今の攻撃って…」



「あぁ…間違いねぇ…今のは


“ソニックブーム”だ」



「や、やっぱり!!

しかし、なぜだ…あいつのギターはもう…」



この言葉を聞いて、綾音が反論した。



「勘違いしては困るね!

私の力が一体なんなのか、忘れたのか?


私の力は“音”だ

ギターから奏でられる音楽はもちろん音だが…


私の“声” これだって音

十分立派な武器となる」



どうやら大悟は完全に勘違いしていたようだ。



(!!!

そうか…ヤツの能力は“音”


すなわち、音が出るものなら、それが全て武器と化す…


声然り、足音然り…なんだっていいわけか!!


その中で、音を出すのに特化していた楽器を使用していただけだったのか!!)



今頃気づかされた大悟であったが、更にレトインが綾音の能力を暴き出す。



「なるほどな…

しかし、貴様の声だけでは、ソニックブームも先程までの威力はないと見える


それにギターがなければ、もう貴様のくだらんメロディーとやらを、奏でることはできんようだな」



痛いところをつかれたのか、少し綾音は黙り、静かに答えた。



「そうさ…

こっから先は、あんたらと直接戦わなければならない」



綾音のメロディーがなくなったのがはっきりとし、善は安堵する。



「よし!もうさっきみたいに、ギターからの変な術にはかからないってことだな!」



嫌な予感がした大悟が、善にすかさず声をかける。



「だからって油断は禁物だぞ

まだソニックブームが残ってる」



「あぁ、分かってるって


大悟 俺には作戦があるんだよ

おまえにしか頼めねぇ作戦がよ」



「作戦…?」



「あぁ メンタルも残り少くねぇ

一気にカタをつけちまう作戦だ」



「どんな作戦だ?」



善は大悟の目をじっと見つめた。



「がむしゃらに突っ込こむんだ 綾音に向かって“同時”にな」



「おいおい…そんな能のない攻撃じゃ…」



「おまえにだから頼んでるんだよ

もし志保なら頼みやしねぇ


いいか?“同時”にだぞ!?」



善は一向に大悟から目を離そうとしない。

善の熱い思いを感じる。



これが善の精一杯のアピール


これ以上、事細かく話せば敵の綾音にまで伝わってしまう。



「!!!」



はっきりとはしないが、大悟が善の思いを汲み取る。

善の必死のアピールを受け取ったつもりだ。


そして、その作戦を感じ取った大悟は苦笑いした。



「断る権利はなしかよ 嫌なリーダーだ」



「へへっ!愚痴はあとで言ってくれ


行くぞ!!!」



そう言うと、善と大悟は一斉に綾音に向かって走り出した。



「!!!


なんだこいつら!?真正面から突っ込んで来て…バカか!?」



拍子抜けする綾音。

あまりにも能がない二人の行動に、慌ててレトインが止めようとする。



「何やってる!!突っ込めばヤツのソニックブームの餌食だ!!


死ぬぞ!!」



そのレトインの忠告を、大悟が素直に受け止めた。



「あぁ…死ぬんだよ…」



「何!!??」



謎の行動に、綾音はもう笑うしかない。



「はははっ!わけ分かんない

つくづくおもしろいね!あんたたちは!!


そんなに死にたきゃお望み通り殺してやるよ!!」



スピード緩めることなく、躊躇せず、二人がどんどん綾音に近づいていく。


それに合わせ、綾音がソニックブームの準備を始める。


相変わらず、二人の勢いは止まることはない。

不安そうにレトインは固唾を飲む。



(本当に大丈夫なんだろうな…

頼むぞ 善!!大悟!!)



とうとう目の前まで二人は迫り、準備が整ったソニックブームを、綾音が放とうとした瞬間。


綾音がいる付近の地面が、突如光り出した。



「!!!


(これは…大悟の攻撃だな?)」



大悟が走りながら、土の技を唱えている。

それにすぐ綾音が感づいた。



(残念だが大悟…もう意味はない!!)



時すでに遅し。綾音のソニックブームはもう準備万端だ。

しかし、それでも大悟は止まることなく攻撃を続けた。



「“ノックアップ グランド”」



「もう遅いって言ってんだよ!!!」



綾音のソニックブームが放たれた。

それとほぼ同時に、大悟の土の技も放たれる。



光る地面が爆発し、土が空高く舞い上がった。



「ははっ!何やってんだか!


バカみたいに突っ込んでくるどころか、大悟の攻撃も私に当たりやしないじゃないか!」



大悟の放った土の攻撃は、無情にも綾音にかすりもせず、はずれていた。



地面が爆発したと同時に、土煙も立ち上がる。

土煙が煙幕と化し、辺りは見えなくなった。   


土煙は風に流され、次第に晴れていき、人影が現れる。


ソニックブームが直撃し、倒れている大悟の姿が見えた。

だが……



「!!!

やつは!?橘善はどこにいる!?」



そこに善の姿はなかった。

綾音が焦るようにして、必死に善の姿を探す。





「ここだよ」



「!!!」



思わぬ方向から声が聞こえた。

すかさず、綾音が声のする方を向く。


綾音の視線の先には善の姿があり、その遥か後方には“空”が映っていた。



「上!?

な、なんであんたがそんなところに!!??」



「あぁ~…痛かったなぁ…大悟の攻撃」



「!!!


ま、まさか…狙いは初めから私ではなくあんたで、ソニックブームをかわすためにわざと……」



なんと大悟の土の攻撃は綾音ではなく、善に当たっていた。


善の体は立ち上がる土と共に、上空へと飛ばされていたのだ。



ソニックブームをくらい、血だらけになりながらも、大悟が根性で起き上がる。



「バカ野郎が…


痛ぇって…俺に比べたら大したことねぇぞ…!」



見事な連携プレーに、レトインは驚いて大悟に尋ねた。



「これが…作戦通りなのか…?」



「たぶんな…俺もイマイチ分かっちゃいねぇよ…


俺が身代わりになってなんとかしろってのは確かだ

志保には頼まないってので、ピンと来てな!


それと、どうも“同時”ってのが気になってよ…

きっとソニックブームは連発できやしねぇ!


だからこの一発を俺が身代わりになって受け止めれば、チャンス到来だ


善がどう考えたが知らねぇが…

まっ、こんなもんだろ!」



(すごい…ここまでの連携を、あんなごく僅かな時間とワードで…)



空高く舞い上がる善は、残された力を振り絞り火の力を溜め続けている。



「終わりだな 四天王さんよぉ!!」



うろたえる綾音。

綾音は思わず後ずさりし、足を絡ませ尻餅を着いた。



「あ、ありえるわけない…

負けるわけがない…


めちゃくちゃじゃないか!あんたら!

こんなやつらに私が負けるはずがない!!」



「負けるんだよ おまえは俺達に

そりゃおまえには理解できないだろうよ


これはおまえにはできない戦い方だ!!」



「嘘…嘘だ!!こんなのありえない!!」



「じゃあな!綾音!!


“メテオ シューター”」



空からいくつもの“炎”が降り注ぐ。

善の渾身を込めた攻撃は、綾音に炸裂した。




何度も死を頭がよぎったこの勝負…

ライジングサンは、見事な逆転勝利をおさめた。



ジョーカー・四天王の一人撃破。

ライジングサンにとっては、喜ばしい出来事だ。



しかし、心の底からは喜べない人物が、ライジングサンの中に一人いたのだった。






第35話 “一度目の終わり” 完

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