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3BECAUSE  作者: Guru
33/131

第33話「失われた希望②」

大悟の狙い、大悟が志保に何を求めていたのか、ギリギリのところで志保は気付いたのだ。


そして、志保はすぐさま溜めていたリミテッドの技を使った。



「“ウォーターエリア”!!!」



すると、志保を中心にして、周りの地面に大きな水たまりができあがる。



「うぉっ!!なんだこれ!?」



突然足元に現れた大きな水の力に、善は驚く。



「な、なんだと!?」



綾音は驚きの光景を目の当たりにしていた。

志保が作り出した“ウォーターエリア”


そこには、志保を斬りかかりにいった善と大悟が、見事なまでに


“ウォーターエリア”の餌食となり、体半分ぐらいがその水たまりに浸かり

体が抜け出せないぐらいにハマっていた。



「か、体が…


この変な水たまりにハマって動けねぇ!!」



必死に善は脱出を試みるが、底なし沼のごとく、外に出ようともがいても、一向に動けない。


しかし、その“動けない”ということは、こちらにとってはまさに今、好都合だったのだ。


ようやく綾音も大悟の真の狙いに、遅かれながら気づいた。



「まさか…大悟…貴様!!


最初からこれが狙いだったのか!!」



「志保とはジョーカーにいた時、幾度となく訓練と称して戦っている


あいつの持ってる技は、全部頭に入ってる」



「おのれぇ!!!こざかしい真似をしやがって!!!」



してやったりの表情で、大悟が、にやけながら志保に言った。



「ギリギリのところで大正解だな!


あと少し気づくのが遅かったらアウトだったけどな!!」



「ホントよ…一か八かの大博打ね


生きた心地しないわ」



「“信じてた”


おまえなら気づいてくれると」



「気づかなかったら、一体どうするつもだったのよ!?

信頼しすぎるのも、ちょっと問題ね」



冷静に対処する大悟だったが、善は想像もしない出来事に、パニックになっていた。



「おいおい!初めからこれが狙いだったなら俺にも教えてくれよ大悟!!」



「悪いな善


すべて伝えれば、綾音にも作戦を知られることになる…こうするしかなかったんだ」



少し不服そうな善だったが、善があることに気づいた。



「これで綾音の術が俺達にも効かなくなったのはいいけどよ…


一向にこの水から抜け出せなければ、俺達からの攻撃もできねぇぞ!?」



「まぁ…またさっきみたいに仲間同士で斬り合ってるよりはマシだろ」



「それもそうか…俺達はここでおとなしくしてろってわけだな」



ウォーターエリアの技にも慣れ、善もようやく落ち着きを取り戻した様子だ。


自分の立場を受け入れ善に、志保が声をかける。



「この“ウォーターエリア”は、私のメンタルが続く限り、ずっと消えないから

この勝負が終わったら解いてあげる


だからあなたたちは黙ってそこで見てて」



大悟の作戦は、策士のレトインさえも驚かしていた。



(やるじゃないか…大悟

だが…この“ウォーターエリア”って技…


使用している間、メンタルを消費し続ける…

今の志保に、そんなメンタルは残っていない


早く勝負を決めなければならない…

時間が限られている それに…


これで、やつの音の魔術にかかることは無くなったわけではあるが…



“それだけ”だ


志保と綾音の1対1の勝負…

この勝負に志保が勝てなければ、全くもって意味がない…)



大悟の作戦により、綾音のサウンドリミテッドによる、音の魔術は通用しなくなった。


しかし、やっとここまできて、初めてスタートラインに立てたと言うべき状況になっただけだった。



ここから先は、志保と綾音の真剣勝負。

ようやくまともな戦いができる。


そんな段階に来ただけでしかないのに、すでに志保の体はボロボロ…

こちら側が、一方的に不利な状況であるのは一目瞭然だ。


それを分かってか、術を封印されても綾音は余裕の表情を見せてくる。



「まぁいい…もっと仲間割れを見ていたかったけど…

これで別に私が負けたわけじゃないし」



綾音がゆっくり志保に近づこうとする。

すかさずレトインが声を張り上げる。



「志保!!

やつの“ソニックブーム”に気をつけろ!!」



「えぇ…分かってる」



さらに続けてレトインが志保に助言する。



「ソニックブームは相手との“距離”を頭に入れて動くんだ


今の距離は最低でも保ち続けろ!それ以上はヤツに近づくな!

近づけばソニックブームが体に届いてしまうかもしれん!!」



「そうね…分かったわ!」



そう志保が頷くと、綾音が志保の方に向かって一歩近づいた。


すれに気づいた志保が、一歩綾音から離れる。


一定の距離を保ったまま、お互いが探り合いを続けた。

じれったい二人のやり取りに、レトインは焦る。



(これでは…なかなか攻撃をこっちから仕掛けられんな…


しかし、志保は“ウォーターエリア”を張っている…

こんな悠長なことをしていたら、メンタルを切らして終わってしまうぞ…!?)



何かいい策はないか、レトインが知恵を絞り出す。

志保のメンタルが切れる前に、何か案はを見つけなければならない。


レトインがじっと考えている中、突如綾音が一言呟いた。



「ねぇ…飽きたんだけど」



「!!!


なに…?」



「飽きたって言ってるの


これくらいで十分でしょ

もう、終わりにしていいかしら?」



「終わりにするって…一体…



!!!」



レトインが呆気に取られていると、綾音が“左手”をそっと挙げた。


志保と大悟が綾音の謎の行動の意味に気づいた。

志保の額から大量の汗が流れ落ちる。



(嘘でしょ…いつからよ!!一体いつからなのよ!!)



ようやく気づかされたのだ。


この“大きな力の存在”に……



(!!!

この力は…まさかこいつ…今までずっと…?)



大悟も自分と綾音にある力の差に、驚きを隠せない。



(そんなバカな…四天王のレベルとなると、こんなことまでできると言うのか!!??


あいつは…今まで“右手”でギターを弾いていた…

俺達を術にかけるために、“右手”でギターを…


しかし、その間に、あいつは動かしはするが、力を放つことのない“左手”で…



今までずっと力を溜め続けていた!!!)



事の重大さを理解したところで、綾音がぼそりと告げた。



「じゃあ…終わりにしようか…」



綾音は左手をギターの弦に手をかけようとする。


大悟は必死に叫んだ。


なんとしても、志保だけは…志保だけは守らないと……



「離れろ!!志保!!

今すぐヤツから!!!


遠くに逃げるんだ!!!」



その言葉を聞いて、綾音はニヤリと笑った。



「逃げても意味はないね

今から放つソニックブームは



“そんなレベル”じゃない



バイバイ」



綾音は力を溜め続けていた“左手”でギターを強く弾いた。


何倍も威力が上がった、ソニックブームが放たれる。


身動きの取れない善と大悟はソニックブームを直撃し、二人は崩れ落ちた。          


レトイン、志保は逃げようとするも、もはや無駄。

ダメージに耐えきれず倒れる。


ライジングサンのメンバー全員に、強大な“衝撃”が体中を走った。

四人全員が、地面へと倒れこんだ。



数秒間、沈黙が流れる。


誰も起き上がる気配はない。

だが、綾音も察している。



「まだこんなんもんじゃないんだろ?

ライジングサン」



まだ終わらない。

こんなところで終わるわけにはいかない。


血だらけになりながらも、まず善が立ち上がった。



「ぐっ…くっ…なんちゅう力だ…」



志保が倒れたため、ウォーターエリアの効果も切れている。


善に続き、大悟、レトインがゆっくりと起き上がる。



「やっぱりな…しぶとい連中だよ」



「こんなところで…くたばってたまるかよ…!!」



綾音が感心している隙に、大悟はすぐさま志保のところへとかけよった。



「志保!しっかりしろ!!」



志保だけが唯一、目を覚まさない。


大悟は自分の身より、志保の体が心配だった。

今までずっと一人で戦ってきてくれた。


何より志保の安否が気になる。

善も大悟同様、気が気でなかった。



「大悟!志保は?志保は大丈夫か!?」



「あぁ…かすかに息はある…

死んではない…


けど…相当のダメージを受けてる

もう限界をとうに越えてる


恐らく…この戦いで目を覚ますことはないだろうな」



ほぼ瀕死に近い状態ではあったが、生きていると分かり、善は肩をなでおろした。


それを聞いて、なぜか嬉しそうに笑う綾音がいた。



「ははっ!今の攻撃を受けて死なないだって?

あいつは本当に人間かい!?


なんてタフなやつなんだ!


溜めた力が足りなかったか?

今のでトドメを刺せなかったのは残念だけど…



でもさぁ…

この勝負、見えたね!!」



綾音がまた、ギターに手をかける。

そう。綾音が笑うのも無理はない。


また振り出しに戻る。

始まる。綾音の魔術が…



“怒りのメロディー”



「これは退屈だね…


あとはあんたらが勝手に潰しあうのを眺めてるだけだからね!!」



ライジングサンは、最後の希望である、志保を失った。

そんな一同に、もう望みはない。



(終わるのか…?俺達…


どうすれば…どうすればいいんだよ!!!)






第33話 “失われた希望” 完

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