第28話「残されたメロディー①」
「気付くのがほんと遅いねぇ…
“サウンド・リミテッド”
音の力さ!!!」
3BECAUSE
第28話
「残されたメロディー」
数時間前。
ライジングサン一同は、ジョーカー四天王の対策会議を開いていた。
善が情報を求め、元ジョーカーの二人に問う。
『なぁ、志保に大悟
おまえら元ジョーカーだろ?
だったらその四天王ってやつらは、一体どんな能力を持ってるのか分かんねぇのかよ?』
少し考え志保が答えた。
『そうねぇ…四天王の何人かには、何度か会ったことはあるんだけど…
残念ながら分からないわ』
志保同様に、大悟も曇らせた表情で答える。
『悪いが俺もだな…
やつらがどんな能力なのか、よくは知らないんだ』
『大悟は幹部の中でも、ほとんどトップクラスだったけど…
大悟が知らなければ、私なんかが知ってるわけがないか…』
『チッ!!一切情報はなしかよ』
四天王の情報を何一つ得られないと思われたが、レトインが呆れながらも言った。
『やれやれ…ジョーカーにいた二人も知らないとはな
四天王の一人に、女がいる
もしその女のやつが現れたら…』
ジョーカーのことをどこまでも深く知るレトイン。
その情報量は、元ジョーカーの大悟達をも上回る。
『待てレトイン!
女?四天王に女がいるのか?』
『あぁ、いる
“七瀬 綾音”
そいつと戦う際には…
まず自分を信じろ 相手には惑わされるな
何があっても自分だけを信じるんだ』
『はぁ…?自分を信じるって…
意味分かんねぇよ 何だそれ』
『いいから それだけは覚えとけ』
『お、おぉ…』
(惑わされるなって、こういうことかレトイン…)
四天王・綾音が笑みを溢しながら得意げに語り出した。
「人とは、いくつもの“感覚”というものを持つ生き物だ
大きな役割を果たすものとして“視覚”、“嗅覚”、そして…
“聴覚”
この聴覚は、視覚や嗅覚とは違い、自ら防ぐすべを持っていない
ゆえに私の奏でるメロディーを、おまえ達は聴かざるをえない!!」
「けっ!そんでその耳障りな音楽が、どうしたって言うんだよ!?」
「私のリミテッドの力で生み出された、この“音”は…
おまえ達の感情に様々に影響する」
「感情…?」
「今私が奏でるメロディーは“怒り”を表す音楽
何から何までもが、腹が立って常にむしゃくしゃする気分じゃないかい?」
「!!!」
善が無意識のうちに大悟に攻撃を仕掛けてしまっていた理由が、ようやく分かった。
(そういうことだったのか!
無性に腹が立つなと思ったら…
この音楽のせいで俺は大悟に斬りかかっちまったってわけか…)
自らカラクリを暴き、綾音は自信満々の表情だ。
「さっきおまえら言ってたよな?チームだって!
そんなもの、私のまえでは無意味さ
逆にそれを利用して、おまえら同士で仲間割れでもしてもらおうか!」
「くっ……」
「さぁ!始めな!おまえら同士で楽しく戦っているがいい!!」
綾音は、先程より強くギターを弾き出した。
激しさを増したメロディーに、吊られるように善の体は動き出す。
「ぐっ…くっ…
(止まらねぇ…体が勝手に動き出しちまう…
目の前の相手をぶった斬らなきゃ気がすまねぇ!!!)」
善は目の前にいた大悟に向かって、イフリートソードで斬りかかる。
そして、その攻撃を大悟が大剣で受け止める。
「おい…善
貴様、俺を殺す気か?」
「あぁ…今ここで死んどけ」
「!!て、てめぇ!!!」
善と大悟が怒りにまかせて、二人の斬り合いが始まってしまった。
その光景に綾音の笑いは止まらない。
「はっはっは!始めな始めな!
何がチーム!これがあんたらのチームワーク?
一体どこが?笑わせてくれるわ!」
善は怒りに満ちていた。
それはきっと、綾音の術にかかっているからではなく…
心の底から、自分に本当に腹が立っていたのだ。
(くそっ…これじゃ、まったくもってあいつの言うとおりじゃねぇか!!
あいつの能力に踊らされて、大悟と斬りあってる始末…
くそっ!何が仲間!何がチームだ!!)
そんな善の思いとは裏腹に、体は言うことを聞いてくれやしない。
思っていても…だめだと分かっていても…
善は綾音の奏でるメロディーの魔術から、逃れることはできなかった。
善より精神力が高いであろう、あの大悟とて同じ。
綾音の力のまえでは、体を思うように動かすことができない。
(まずい…まずいぞ!これではどうすることもできん…
やつの思うツボではないか!!)
四天王・綾音の力に苦戦する善、大悟。
“怒り”がおさまることを知らず、いてもたってもいられない。
そんな二人をよそに、涼しげな表情で立つ人物がそこにはいた。
「貴様…なぜだ!?なぜなんだ!!」
綾音が驚きを隠せず、慌てている。
その視線の先にいたのは……
「レトイン!!?」
なんとレトインは、善達が苦しむ音の力に、まったくひるまず
堂々と腕を組みながら立っていた。
「フン…おまえらがだらしないんだよ」
「なっ、なんともないのか?」
「俺が言っただろ?何があっても
“惑わされるな” “自分を信じろ”と」
ありえない…綾音は未だこの事実を受け入れられない様子だ。
「そんなバカな…おまえだって私の“音”は聞こえてるはず!?
なのに、そんな平然としていられるわけが…」
「音?それがどうした
確かに俺の耳は、貴様からの雑音を感知してるのかもしれんな
だが、貴様自身も体験したことがあるはずだ
『何か物事に集中してる際、他に何か音が流れていたとしても、
その音には全く気付くことはなかった』
そんな体験をな
要は自己さえしっかりしてれば、音に関心を持つことさえなければ
貴様の能力なぞ皆無に等しいってわけだ」
善にももちろん、レトインの言った体験は感じたことがあった。
単に、自分が未熟なだけ…
レトインが綾音に向かって放った言葉により、善はそう思い知らされる形となったのだった。
この時、堂々とたち振る舞うレトインを見て善は思った
『あぁ…
こいつ、かっけぇー…』 と。
善の怒りはヒートアップする。
「だぁ~!!くそ!!情けねぇ!!
何やってんだ俺は!!」
レトインと自分との差を見せつけられ、余計に腹が立っているようだ。
大悟も同様に、自分に怒り、自分を恥じているようだ。
「同感だ 実に情けない…
だが、このうっぷんも全て、おまえにぶつけてしまっている!!」
「あぁ、そいつは俺も同じだ」
意識はしっかりしているのに、体はまるで別の動きをとる…
この何とも言えない歯がゆさが、怒りを増大させ、悪循環を生み出している。
「動け俺!!言うこと聞きやがれバカ野郎!!
レトイン一人で涼しい顔して、何やってんだ俺たちは!!」
今の善のセリフに対し、レトインがニヤつきながら言った。
「どうやら…俺一人だけではないみたいだがな」
「えっ!?」
レトインがそう言いながら指をさす、その先には…
「志保!!?」
そう、忘れてはならない、ライジングサンのメンバーの一人、志保だ。
志保も、レトイン同様、音の力にものともせず、平然とした表情で立っていたのだ。




