第25話「ライジングサン②」
些細な紛争に終わりを告げるように…
光が差し込んできた。
朝日だ。太陽が顔を出し始める。
今日もまた新しい一日が始まる。始まりの朝だ。
昇る太陽を善は眺めて見つめている。
どこが哀愁漂う姿にも見える。
そんな善を心配してからか、大悟が声をかけた。
「さっきはふざけて悪かったよ 善
またあとで俺が買い出し行ってきてやるからよ!」
「いや、そんなんじゃねぇって…」
どうやら落ち込んでいるわけではなさそうだ。
少し照れ臭そうに、善は突然言った。
「なんかさ…うまく言えないけど…
おまえら… ありがとな」
「……?
譲ってやったメシの話か…?」
「いやいや、もうメシの話は関係ねぇよ!
この朝日を見てたらさ… ちょっと思うもんがあってな…」
いつもふざけて、おちゃらけてばかりの善が、急に真面目に語り出した。
見たことない善に、志保も調子が狂う。
「な、何よ急に…」
「この朝日を眺めてると…
今日も一日終わったな…というか、また始まったなというか…」
「何が言いたいのか、さっぱり分からん…」
善が気持ちを伝えようにも、中々うまく伝わらない。
大悟にも理解できない様子だ。
善はそれでも自分なりの言葉で、思いを伝えようと続ける。
「だからさ…朝が来れば、終わるじゃん
ジョーカーの世界がさ
やっと不安やら恐怖から、解放されるんだ
まぁ、また今日の夜になれば、ジョーカーの世界が始まっちゃうんだけどよ…」
善の言いたかったことが、ようやく少し分かってきた。
大悟が善の思いを汲んだ。
(不安や恐怖…
そうだよな…善はついこの間、リミテッドとして目覚めたばかり…
それですぐにジョーカーに狙われて…
そりゃ怖いよな…やつらがやって来る夜が…)
「ここ最近、この朝日を見てると、すげぇ落ち着くんだよね
ほら、ここ何もねぇとこだから、よく日が昇るの見えるじゃん?
太陽ってこんな綺麗だったっけ…
朝ってこんなに気分いいんだっけって、思ったりして…
こんなもんと言うのもどうかだけど…
朝日を眺めてるこのときが、今の俺の一番の幸せ
こんな当たり前のもんが、今の俺にとっての一番の楽しみだ」
「善……」
朝日を眺め続けて語っていた善が、振り返ってみんなの顔を一通り見た。
そして、善が本当に伝えたかった、心の内にある思いをみんなに告げた。
「なぁ…みんな…
作らないか?俺たちのチーム」
「チーム…?」
「あぁ
ジョーカーやキングが、夜の世界を支配しているならば、俺たちはそいつらを終わらせるための存在
あっちがチームで来るなら、こっちも対抗してチームで立ち向かうんだ!
チーム名は…
“ライジングサン”
夜は必ず終わり、次第に朝が来る
俺たちがジョーカーやキングの終止符を打つ!!」
「チーム…ライジングサン…」
やはり照れ臭かったのか、善は少し、はにかんだ。
「どうだ?ちょっと臭かったかな?
俺、レトイン、志保に大悟…
4人いることだし、チームって呼べるだろ?」
恥ずかしながらも、善は熱き思いを、精一杯自分の言葉で伝えた。
不安と戦いながらも、善の口から出た決意表明とも取れる言葉だ。
みんなの心に響かないわけがない。
まず善と同じ熱き男、大悟が善の思いをすんなりと受け止める。
「フン…チームか…
悪くねぇな おもしれぇ!」
レトインが善を茶化しながも、大悟に続くように言った。
「英語の苦手なおまえにしては、よくできた方だ」
そして最後に遅れて志保も、嫌そうに答える。
「もう…仕方ないわね!
あんたのバカに付き合ってあげるわ」
しかし、そうは言っても志保の顔にも笑みが溢れている。
どこか嬉しそうな表情だ。
善の気持ちはみんなに、しっかりと伝わったようだ。
善が手を叩いて喜んで、気合いを入れた。
「おっしゃ!決まりだな!!
俺たち4人、チーム・ライジングサン!!
迎え撃つはジョーカーにキングだ!いつでもかかって来いってんだ!!」
善たちは結束を固め、新たな気持ちで闇の組織を迎え撃つ。
チーム・ライジングサン 誕生の瞬間だった。
そうした善たちに大きな変化が訪れた中、宿敵ジョーカーは……
密かに来るべき時が来るのを、ひっそりと待っていた。
強大な“四天王”がとうとう動き出そうとしている。
ジョーカー・四天王発動まで、あと3日。
第25話 “ライジングサン” 完




