第19話「相性②」
志保との会話の間に、何かを思い付いた善。
「だったら…かわされないようにするまでだ」
「おい…何を二人で、こそこそやってる…」
大悟に気づかれぬよう、善は志保に目で合図を送る。
そして、善は大悟に向かって飛びかかった。
イフリート・ソードで攻撃を仕掛ける。
「そんな攻撃、俺には効かねぇよ!!」
大悟は善の攻撃を大剣で受け止める。
「(よし!かかったな!)
今だ!やれ!志保!」
「えぇ!ウォーター!!」
善の攻撃を大剣で受け止めた大悟
その時、大きなスキが生じる。
そのスキを狙った志保の攻撃は、見事大剣に直撃し
大剣は水の力によって、力は失われていく。
「よっしゃ!うまくいった!もらった!!」
武器を失った大悟に、善が攻め込む。
善達の思惑通りに事が進み、会心の一撃をかませると思ったが…
レトインが一言、ぼそりと呟いた。
「甘いな」
大悟が余裕の表情で善に声をかける。
「橘善…何かひとつ忘れてないかい?」
「!!??」
大悟がそう言った、次の瞬間、突然地面が光り出した。
(そ、そうだ!何もこいつの力は大剣だけじゃねぇ!
“土”の力…そいつがこいつの武器!!)
「気づくのが遅い
ノックアップ グランド!!」
爆発音と共に、地面から土の力が一気に立ち上がる。
「ぐわぁぁっ!!」
「善!!!」
善は土の力に巻き込まれ、数メートルの高さまで飛ばされ、その高さから地面へと落ちた。
「善!!大丈夫!?」
「くっ…あぁ…なんとか大丈夫だ…
(土の力…ちょっとなめすぎていたな…
俺らが足をつけている地面…すなわち“土”!!
この環境が、あいつの力を何倍にも強くさせてやがる!!)」
「リミテッドの力とは…周りの環境によって大きく変わる
この土の力は、リミテッドの能力の中でも
1、2を争うほど、フィールドの恩恵を受けることができる能力だ!!」
ふがいない善の姿に、レトインが渇を入れる。
「甘いんだよ善
ひとつのことに捕らわれるからだ
周りが見えてない証拠だ もっと全体を見据えろ」
「うっせー!!レトインは黙ってろ!!」
「橘善…この俺の大剣をどうにかしたいようだが…
いくらやっても無駄だよ」
大悟はもう一度、新たに土の大剣を作り出した。
「志保の水の力で俺の剣を崩そうが…
また新たに剣を作ればいいだけの話だ」
「チッ…くそ!!」
「もうあきらめろ 橘善
おまえにもすでに結果は見えているはずだ
おまえら二人の力を合わせても、この俺には勝てないってことを」
「………」
黙り込む善。嫌な空気が漂う。
追い討ちをかけるように、突如雲が月の明かりを隠し始めた。
辺りはますます暗くなり、より一層不気味さを増す。
まるで今の善の気持ちを表すかのように…
とうとう、すべての光は居場所を失った。
そんな不穏な空気の中、大悟が情けをかける。
「橘善
俺はおまえのことが心底気に入った!
ここでおまえを殺したくはない…
だから善、志保…
おまえ達はこっから逃げろ」
「!!!」
「今後、一切ジョーカーに関わることをやめるんだ
そしたらきっとリーダーも、おまえ達に手出しはしないはずだ」
まさかの大悟の発言も、志保は賛同しない。
「どうかしらね…リーダーが…
ジンがそんな逃がすなんて生易しいことしてくれるかしら…」
ジンをよく知る二人のやりとりも、もはや善には意味を持たない。
「そんなことは関係ねぇよ 志保
なぜなら俺は絶対あきらめねぇからな
逃げたりなんてしねぇよ!」
一向に引くことをしない善に、おとなしかった大悟も声を荒らげる。
「!!
な、なぜだ!?
無駄死にしたいのか!?善!!
今ここで死ぬよりは逃げた方がマシだろ!!」
「俺たちリミテッドは一度死んでる…
一度そう死を受け入れちまったら、死に恐怖を感じなくなった」
「バカ野郎!!
善…おまえは確か父親が自分の代わりに死んだんだったよな!? 」
大悟の勢いは止まらない。
ヒートアップし、どんどん強い口調になっていく。
「今ここで死んだらおまえの父親の命は!?
父親の想いは!?そいつらは一体どうするつもりでいる!!」
大悟が声を張り上げ、テンションが最高潮に達すると同時に
ピカッ!!
っと、とてつもなく強い光が放たれた。
そして…
「それはおまえも同じだろうが!!!」
ゴロゴロゴロッ!!!
善が大悟と同じくらいの気持ちで、強く叫んだ瞬間、大きな音を立てて、雷が落ちた。
「なんだって…?」
呆気にとられた大悟。
雷の音から一転、辺りは静まり返る。
一気に天候は悪化し、雨が降り出した。
雨に打たれ寂しげな表情で、善が内に秘めた思いを吐き出す。
「おまえだって自分の姉ちゃんが代わりに死んじまったんだろ…?
それに妹だって犠牲になっちまった…
見たくないんだよ…もう…
ジョーカーのジンってやつに踊らされて、いいように使われてるやつを…
もう見たくないんだよ!!」
「善……」
雨の音だけが静かに鳴り響く。
その静けさを打ち消すかの如く、熱い気持ちを善はぶつける。
「俺は決めたんだ!あんたを仲間に引き入れて、俺達はジンを倒す!!
だから…だから!!
俺はここで負けるわけにはいかねぇんだ!!!」
「そんなの…おまえが勝手に決めた話じゃねぇか!
勝手に決めつけられても困るんだよ!」
「確かにな…完全に俺の都合だ
だから力づくでおまえを倒して引き入れるんだ!!」
「力づくか…
この状況でも、まだ力づくとは…
よく言えたもんだ」
突然降り出した雨によって、善のイフリート・ソードは力を失っていた。
「雨のせいで…イフリート・ソードが…」
「実力どころか…運までも味方しなかったな!善!!
おまえの武器はもうなくなった」
うつ向いて肩を落としていた善が、笑みを見せた。
「俺がついてないって…?そうか?
むしろ逆だろ
なぁ!志保!!」
「えぇ
この雨は…勝利の雨よ!!」
「!!!
雨……“水”の力!?」
「形勢逆転ね
覚悟しなさい!大悟!!」
立場は一気に変わった。
善と志保の逆襲が始まろうとしている。
「大悟…
“約束”したよな?
てめぇが負けたら俺達に協力するって!
行くぞ!!志保!!」
「えぇ!!」
この状況下では分かるわけがなかった。
集中力を欠けば、目を離せばやられるであろう、熱戦の最中に…
物陰で何者かが、善達を監視続けていることを…
誰一人として、気付くわけがなかった。
第19話 “相性” 完




