第15話「突きつけられた真実②」
話は数時間前まで、さかのぼる。
志保が善に戦いで敗れた直後。
志保はある一本の電話をかけていた。
その相手はジョーカーのリーダーではなく、大悟だった。
志保は大悟に電話をかけていたのだった。
『もしもし…』
『志保か?どうした?もう任務は終えたのか?』
『負けちゃった…私…』
『なに!!やられたのか!?橘善に!?』
『えぇ…あんたも気をつけた方がいいわよ…
もう一人の“レトイン”と言う男…
こいつには気をつけた方がいいわ』
『もう一人?何者なんだそいつは…』
『私たちジョーカーのこと…色々知っているみたい…
あのね、大悟…
私は情報を与えるためにあんたに電話したんじゃないわ』
『……?』
『私は、ジョーカーをやめる』
『!!!
やめるって…分かっているのか?やめるって言ったって…
俺の次の指令はおまえの抹殺になるだけだぞ!?』
『そんなのは承知の上よ
いい加減あんたも目を覚ましなさいよ』
『目を覚ませだと…?』
『橘善…あいつ中々面白いやつでね…
たいして歳も変わらないくせに、偉そうにベラベラと…』
『………』
『でも、おかげで私は目が覚めた
本当の私を取り戻すことができた
あんたもいい加減、目を覚ました方がいいわよ』
『志保…俺に何を言っても無駄だ
俺にはジョーカーを続けなきゃならない理由があるからな』
『……そう…』
『いいか志保
いくらおまえでも、次会ったときは全力で俺はおまえを倒す』
『えぇ…分かってるわ…』
妹を人質にとられている大悟には、何を言っても無駄。
妹の命を守るためなら何でもする…
「あんたが言ってた事情って…このことか」
「………
悪いな…橘善、志保…
これも妹のためなんだ…悪いが…
おまえら全員死んでくれ!!」
大悟の迷いなき姿に、善は驚いたと共に、ジョーカーに怒りを覚えた。
(こいつ…本気だぜ…
それにしてもジョーカーは、なんて汚ねぇ手段を取りやがるんだ!)
そんな緊迫感が漂う中、突如レトインが笑い始める。
「はっはっは…妹のためにね…
そいつは笑わしてくれるな」
あざけ笑われたかのようで、気分を害された大悟が食ってかかる。
「き、貴様!!何がおかしい!?」
「だって…おかしいじゃないか…
妹を守るだって…?バカな話だ」
「バカな話だって!?この話の一体どこが…
貴様…俺を侮辱するつもりか!?」
大悟はレトインを今にも斬りかかろうというぐらい、怒っている。
それでもレトインは臆することなく大悟に言った。
「そりゃおかしいだろ…
肝心の大事な妹は、とっくの昔に殺されてるだなんてよ
おまえは一体誰を守ってるつもりだ?バカバカしい話だろ?」
「!!!
殺されてる…だって…?」
レトインの放たれた言葉に、大悟の頭は真っ白になった。
そして、同時にまるで自分のことのように善も驚いた。
「殺されてるって…
志保!!そいつは…本当か?事実なのか!?」
「………」
善の問いに、志保は黙った。何も答えることはしない。
しかしその沈黙は
“否定することは何一つない”
そう意味することに等しかった。
「なっ?自分でも分かったろ? 土井大悟
今まで自分がどんなにバカなことをしてたかってことが」
「………」
落胆する大悟…
呆然として、もぬけの殻のようだ。
そんな生気のない大悟を、心配そうな顔で志保は見つめている。
(大悟…だから言ったじゃない…
いい加減、目を覚ましなさいって…)
実は志保は、妹がジョーカーのリーダーの手によって殺されていたことを、随分と前に知っていたのだ。
何度、大悟本人に言おうとしたことか…
“あの時”の電話でも、大悟に真実を話そうとした。
けど言えなかった…
そのことを知らされた時、大悟がどんな気持ちになり、どんな思いをすることか…
それを想像するだけでも怖かった……
だから大悟に言うことは、志保にはとてもじゃないができなかった。
しかし、今、レトインが真実を告げた。
いつかは知ることになる恐ろしい真実を…
たった今、大悟は突きつけられた。
黙り込む大悟に、かける言葉が見つからない…
誰も手を差しのべることができずにいた中、大悟が突然、狂ったように笑いはじめた。
「はっはっは!はっはっは!
そうか…やっぱりそうだったか…」
「やっぱり…?」
「そんな気はしていたんだ…妹は殺されているんじゃないかって…
あいつは…
“ジン”はそんなこと、しでかしてもおかしくない奴だからな」
「ジンって…?誰のことだ…?」
聞いたことのない名前に戸惑う善。
それに対して志保が言う。
「そうね…
あんたジョーカーを壊滅に追い込もうとしてるんでしょ?
だったら覚えといた方がいいわ…
“二階堂 仁”
ジョーカーのリーダー
あんたが倒さなきゃならない相手よ」
「!!!
二階堂…ジン…」
「ジン…くそっ…くそがっ!!
ふざけやがって…許さねぇ…絶対にあいつだけは許さねぇ!!」
大悟は怒りに満ち溢れていた。
ジョーカーのリーダー・ジン
ジンは大悟がジョーカーの一員で居続ける限り、妹には手を出さないと約束した。
それにも関わらず、ジンは妹を殺した。
その約束を守らなかったジンを大悟は決して許せなかった。
しかし…
約束を守れなかったのはジンだけではなかったのだ。
『大悟…約束よ…これだけは約束してよね…』
(ごめん…ねぇちゃん…俺…俺…)
地面にひざまずき、大悟はうつ向く。
大悟の目からは涙がこぼれ落ちた。
(俺はジンを許さない…!!
でも…でも今は…
ジン以上に…
何より自分が許せない……)
第15話 “突きつけられた真実” 完




