第127話「レトイン②」
レトインにお別れを告げた善は、気持ちを切り替えてカッと目を見開いた。
そして、ジンの方を振り返り睨み付けた。
その視線を感じたジンは、もやもやした気持ちを一度吹き飛ばし、気合いを入れ直す。
再び戦闘モードとなったジンは、すかさず善を挑発した。
「火と雷の力 それに加えエレクトの力…
かまいやしねぇ!これでようやく俺の相手になるレベルか?善!!」
レトインの死を、悲しむ素振りすら見せないジンに善は呆れ果てた。
「おまえは…悲しくないのかよ
レトイン “友達”だったんだろ?」
「俺とあいつがか?仲良くしたフリをしてただけだ
俺はあいつらを利用してただけ
誰が死のうが関係ねぇ!!
それどころか善
おまえは父親までもか今度はレトインまで殺した!!
おまえのせいで死んだんだレトインは!!」
悲しむどころか、ジンは次の一手を攻めた。
また善に“揺さぶり”をかける。
もう善が惑わされるわけないが、それよりも善には確信めいたものがあったのだ。
「俺のせいか…確かにそうかもしれねぇ
俺がヘマしなきゃ、またリミテッドになるなんてことはなかった…
でも…でも…
レトインは死んでない!生きてる!!」
「あぁ?何を訳の分からねぇことをぬかしやがる
あいつはもうこの世にいないんだよ!おまえの代わりになって死んだんだよ!!」
「あいつは生きてる!俺の中に!!心の中にいる!!
感じるんだあいつを “レトイン” を
あいつの気持ちが、想いが…ひしひしと伝わってくる」
善には不思議な感覚があった。
自分の体の中に、もう一人いる レトインがいる。
決して気のせいなんかではない。
「ジン 知ってるか?
“レトイン”
この名前の由来
おまえは聞いたことあるか?考えたことあるか?」
善に名前の由来を聞かれたジンは、一度考えてみたのか、少し黙った。
そして、数秒間の沈黙のあと、冷たくあしらった。
「知らん 興味がないからな
俺には関係ない話だって言ったろ!?」
「あるんだよ…おまえにも…な」
話は遡る。
これはエレクトの力を身に付けるために、善とレトインが二人で特訓をしていた時の話。
その特訓を終え、善はレトインから
善がやらねばならぬ3つの理由の
最後の理由を聞いた。
ここで話は終わったと思われたが、実はその後、善はレトインにもうひとつの頼み事をしていたのだ。
『レトイン!!それともうひとつ
まだ教えて欲しいのものがあるんだ…』
エレクトの力に耐えきれず、倒れこんでいた善が起き上がり、レトインを引き留めた。
『なんだよ…またか!
大悟達がジョーカーの四天王と戦ってる最中なんだよ!
急いで向かえと言ったのはおまえの方だろ?』
『そうなんだけどよ
全部今聞いときたいんだ
考えたくもねぇが、もしあとで聞けなくなったと思ったら後悔すると思って…』
うつむく善。
善の諦めの悪さはよく知っている。
先を急ぐレトインは、渋々受け入れた。
『ったく…なんだ 早く用件を言え』
『名前だよ
教えてくれよ おまえの本当の名前
日本人のくせに “レトイン” なわけないだろ』
『………俺の名前か
教えてやってもいいが、笑うなよ?』
『笑うわけねぇだろ!親がつけてくれた大切な名前だ
そんな失礼なことするかよ!』
レトインはため息をついて、嫌そうにしながら答えた。
『俺の名前は
雷鳴 純一郎 だ』
『じゅんいちろう?
はっはっは!!』
名前を聞いた途端、腹を抱えて笑い転げる善。
話が違うとばかりに、レトインは怒る。
『だから笑うなと言ったろ!!』
『いや、別に名前がおかしいわけじゃねぇよ!
だってレトインなんてカッコつけといて、本当は純一郎だったなんてギャップがよう……
って、あれ?』
レトインの本当の名前を聞いて、善は不思議に思った。
『そしたらなんで“レトイン”なんだ?
何も名前と、かかってないよな』
『あぁ…それか……』
レトインはどこか遠くを見つめるようにして、寂しそうな表情を見せながら言った。
『俺の大切な仲間達の名前だ』
『仲間……?』
『そう
“レイ” “トウマ” “ジン”
ReiToumaJin
Retoinレトイン だ』
「ジン!!そこにはおまえの名前も入ってたんだぞ?
レイを殺したおまえと決闘をして敗れ、そのあとに名乗った名前が レトイン
ヤコウも手にかけ、レトインからすべてを奪った………
そんなおまえを今でもレトインは“仲間”だと思ってたんだぞ!!!」
第127話 “レトイン” 完




