第125話「2つの光③」
明らかにこちらの優勢。
善はトドメとばかりに、最後の力を振り絞る。
そして、善だけではない。
あのレトインでさえも
“勝てる” そう思った。
(このまま…このまま攻め続ければ…
勝てる!!ジンに!!!)
この均衡状態がしばらく続いたが……
とうとう崩れ去る時がきた。
ひとつの“油断”が勝敗を分ける………
「これだからあっけない エレクトの対決は……
どんな接戦でも、一方的な戦いでも…
勝負が決まるのは “一瞬”だ!!!」
そう笑って力を解き放った者は
二階堂 仁
“勝てる“と油断を見せた 橘善…
そのわずかな隙をジンがとらえた。
「死ねーー!!!善!!!」
ジンの炎の力が善の体を貫いた。
善の体は焼き尽くされ、火の粉を撒き散らしながら、数メートル先まで吹き飛ばされた。
「善ーーー!!!」
レトインはすかさず善のところへと駆け寄った。
レトインの緊張の糸が解けたのか、がくっと崩れ落ち
纏っていたエレクトの雷の力は消えた。
そして、レトインの口から血反吐が飛び出た。
「がはっ、ぐっ……」
「レトイン!!!」
大悟達は善、レトインの身の心配をしたが
レトインは耳を傾けることなく、まだ燃え続ける善の体を抱きかかえ、体を揺らした。
「善!!しっかりしろ!!善!!!」
レトインの声に、善はまったく反応することはない。
「レトイン!!大丈夫か!!それに善は……」
ようやく大悟の声が聞こえたレトインが、かすれるような声で応じた。
「はぁ…俺は…大丈夫だ…
だが…善…善は………」
未だ燃え続ける善の体を、火傷しながらも抱えるレトインはうつ向いた。
言葉を詰まらすレトインの代弁をするかのようにジンが言った。
「橘善は 死んだ
なかなか楽しませてくれたよ
エレクト同士の対決
やはり結末は、一瞬だったがな!はっはっはっは!!」
ジンの笑い声と炎の燃え盛る音だけが響き渡る。
橘善 死亡
ジンの笑い声を遮るように、エーコが大声を張り上げた。
「う、嘘でしょ!善が死ぬわけないじゃん!!」
志保も続く。
「善はどんな絶望的な状況でも必ず立ち上がってきた!
そ、そうよ!善の体が燃えてるのだって、あれは善のエレクトの力に決まってるんだから…!
またきっと、善は立ち上がって………」
そんなエーコと志保の願いも儚く
善の体はぴくりとも動くことはない。
(善……死んじまったのか?本当に……善!!)
大悟はすでに察していた…
それでも心の底から願った。
ジンが活き活きとした表情で、軽快な口調で喋る。
「橘善が死んだ今、あとはレトイン
貴様を殺すのみ!!
今度は貴様だけ 簡単だ!
その次は志保、大悟、キングの女!!
なーに、悲観することはねぇ!安心しろ!!
全員すぐに善のところへ送ってやる!!
あの世へな!!はっはっはっは!!」
今のレトインにジンの言葉など、もちろん聞こえてはいない。
一切動くことのない善に、思いよ届けとばかりにレトインは心の中で話しかけた。
(死ぬな…善…まだ死んじゃだめだ…善…)
ひたすらレトインは願った。
死ぬな…生きろ、善
何度も何度もレトインは語りかけた。
すると突然、炎に燃えていたはずの善の体が、強く光り輝き始めた。
これまでにないほどの大きな光が現れ、善の体を包み込んだ。
そして次に、レトインの体も善と同じようにして強く光り、レトインも光りに包まれる。
「こ、これは………!!!」
レトインはすぐに、この見覚えのある光の正体に気がついた。
時を同じくして、ジンも“それ”に気がつく。
レトインはチラッとジンの方を見て、少しばかりにやついた。
「なぁジン この光が何を意味するかおまえにも分かるだろ…?
分からないわけがないよな…
散々俺達が研究し続けてきたんだからな!!」
ひたすら笑い続けていたジンが笑うのをやめ、目を点にしながら、その光を見続けている。
そして、声を震わせながらジンは言った。
「“リミテッド”
この光はリミテッドが生まれる時に起きる光……!!
そんなバカな…善は1度死んで、すでにリミテッドとなっているばず…
ありえるはずかない!!
リミテッドの…更にリミテッドだと!?」
善とレトインから放たれる2つの光は
合わさり1つの光となり
善とレトインは大きな光に包みこまれた。
第125話 “2つの光” 完




