第124話「2つの光②」
なかなかゴーサインを出さないレトインに、たまらず善が痺れを切らした。
「迷ってる暇なんかねぇ!!そんなことしてる間にやられちまう!!」
そう善が吠えると、善の右手は光り輝き、ジン同様に、体全身が炎に包まれた。
「ほぅ…できるようになったのか 貴様も!」
ジンは善の急成長に驚きながらも、嬉しそうな表情を浮かべている。
突っ走る善に翻弄されながらも、レトインは一度自分の頭の整理をした。
(あいつ…!!俺が合図出す前にやりやがって…!!
善に待てのサインなど無理な話だったか…
仕方あるまい…
ジンはブレイクの力は無限と言っていたが、そんなことは絶対ない!ありえない!
だが、それほどまでに自信を持っているということは確かなのだろうな…)
善に感化されるようにして、レトインも覚悟を決めた。
「善…おまえの能のない体当たりの行動に何度振り回されてきたことか!
これで最後だぞ!おまえの尻拭いは!!」
レトインの右肩にあるマークが強く光り出し
レトインの体は雷の力に包まれた。
負けじと善も言い返す。
「散々振り回されたのはこっちの方だよ!!
悪かったな、俺は頭より体が先に動いちまう性格でな!!
ぶっ倒れるまで全力で行くぞ!!レトイン!!」
ジンが待ちに待った、エレクト同士の本気の力のぶつかり合い。
その瞬間が訪れる。
ジンは笑いが止まらない。アドレナリン全開、興奮状態だ。
「そう!これだ!!俺はこの時を待っていた!!
三人のエレクト、リミテッド・ブレイク
頂点を決める戦いだ!!
そして、最後に立っているのはもちろんこの俺!これが俺の思い描いていたシナリオだ!!」
「おまえの思い通りになんかさせねぇーー!!!」
笑い続けるジンに向かって、善が突進する。
エレクトの力と力の衝突。
ドーーン!!と大きな爆発を起こした。
大悟達は少し離れたところで戦況を見守っていたが、その大きすぎる力がゆえに戦いに巻き込まれそうになっていた。
「な、なんなんだしこの力!!」
「私達もここにいちゃ、巻き込まれちゃうんじゃないの?」
怯えるエーコと志保。
それに比べて、腕を組ながら落ち着きを保っていた大悟が、二人にこう言い聞かせた。
「俺達も覚悟を決めたんだろ?
見届けよう 最後まで
何があっても善とレトインを」
大悟達はこの場で、戦いの行方を見届けることを決心した。
それと、大悟には何となくではあるが分かっていた。
この強大すぎる力同士のぶつかり合い
ひとつの判断ミス、ひとつの油断が勝敗を分ける
この戦いは……そうは長くはないと
善とレトインは出会ってから長くの間、行動を共にしてきたが、いっしょに戦うのは今回が初めて。
覚悟を決め、二人から迷いがなくなったからか
ここにきてようやく善とレトインのコンビネーションが活きてきた。
「互角……?」
エーコの目には、お互いの力は拮抗しているように見えたが……
「いや、少し
善とレトインがおしている」
善とレトインはジンの想像以上に奮起していた。
劣勢になっているのが分かったジンは、皮肉を込めて言った。
「2対1でやっとか!汚いな貴様ら
どうだ?正々堂々1体1でやりあわないか?
(なんなんだこいつらは…なぜ俺の力についてこれる…?
むしろ、俺の方がおされている…)」
そんな口車に、今更善が乗るわけがない。
「何が正々堂々だ!散々手下をよこして、自分は眺めてただけのくせにしてよ!
(意識が…ぶっ飛んじまいそうだ…体が悲鳴をあげてやがる…持つのか…?俺の体は…)」
ジンの発言から、ジンの置かれている心理状況が、レトインにはよく分かる。
「どうやら相当追い込まれているようだな!ジン!!
善!!今ぶっ倒れたら容赦しないからな!!死んでも足を止めるなよ!!」
レトインは自分の体に言い聞かせるようにして善に言っていた。
レトインも今にも意識が飛びそうなぐらいで、限界をすでに越えていのだ。
(いける……俺達がおしてる!!勝てる!勝てるぞジンに!!!)




