第123話「2つの光①」
「見せてやろう
これが…“エレクト“の真の使い方だ!!!」
そうジンが叫ぶと、ジンの左手にあるマークは光り、全身は炎に包まれた。
3BECAUSE
第123話
「2つの光」
とうとうジンは、エレクトの奥義ともいえる
“リミテッド・ブレイク”を使った。
「おまえにこの力が操れるか?橘善」
善とレトインの二人に、一気に緊張感が走る。
(ついに来たか…リミテッド・ブレイクが…)
強敵ジンとの戦いにおいて、善とレトインの二人はひとつの決め事をしていた。
それはどんなに追い込まれても、ジンより先にリミテッド・ブレイクを使わないこと。
なぜなら、この力は強力な反面、体への負担が大きすぎるからだ。
特に善は、まだこの力をマスターしたばかりで、長時間の使用は不可能。
熟練者のレトインですら、もって数十分…
ジンより先に力を使うものならば、必ずこちらが先にバテて朽ち果てるだろう。
ジンのリミテッド・ブレイクに焦る内心、レトインは僅かではあるが、勝利の可能性を感じていた。
(この奥の手をジンから先に出させたんだ
やつも相当追い込まれている証拠…
来るとこまでは来た…あとは勝ちきるのみ!!)
不覚にも先にブレイクを使用したジンだったが、二人の歯切れの悪さに戸惑う。
ジンに対抗して、善とレトインもブレイクを使ってくるかと予測していたが
いっこうにその素振りを見せない。
その理由を少しばかり考えたところで、すぐにピンと来てジンは察した。
「なるほどな…ブレイクを躊躇うのは怖いからだ…!
俺と張り合って使ったところで、先にぶっ倒れちまうんじゃないか…ってな
そうだな…俺にブレイクを先に使わして逃げ回り、ガス欠したとこを狙う
作戦はそんなところか…?」
図星だったのか、二人は沈黙を貫いた。
その二人をあざけ笑うようにしてジンは言った。
「でもそんなことしても無駄だぜ?
俺はこのブレイクの力を無限にコントロールできることに成功した!!」
黙り続けていたレトインだったが、たまらず反論する。
「ばかな!はったりだ!そんなことあるわけがない!!」
「言ったろ?俺は日々強くなっているとな!
嘘かどうか…それはおまえ達の目で確かめればいい!!」
ジンは善の目の前まで猛スピードで移動した。
身の危険を感じた善は距離を取るため、横っ飛びをする。
ジンの手からは火の力が解き放たれた。
善の判断力が功を奏し、攻撃は当たることはなかったが…
その強力な力の存在に善は度肝を抜かされる。
それもそのはず、ジンが繰り出した火の力は、善が普段手から放つファイヤーの10倍くらいの大きさがあったのだ。
「な!なんだこの力は!!!
(こんなのをくらったら 一発で……)」
ジンがニヤリと笑い、白い歯をこぼす。
「だから言ったろ?
エレクトの力を持つものと持たぬものでは、次元が違うと!!
まだまだこの力も序の口 もっともっと力を溜めて更に……」
ジンの左手は強く光り輝きだし、力を溜め始めた。
それにいち早く気づいたレトインは、手にしていた雷の槍をジンめがけて投げた。
「させるか!!!」
ジンは力を溜めるのを一旦止め、飛んでくる槍の回避に専念する。
華麗に回避したジンは、今度はレトインに近付いた。
一気に距離を詰められ、目の前まで来ていたジンに、レトインは再び雷の槍を作り上げ、ジンの体を貫こうとした。
「そんなちんけな力では…無駄だ!!」
ジンは体に纏っていた炎の火力を更にあげる。
その炎に触れた雷の槍は、溶けるようにして一瞬にして消えさってしまった。
丸腰になったレトインはバックステップをし、ジンから離れ、呼吸を整えた。
ブレイク状態のエレクトの力をまじまじと見せつけられた善。
「力が違いすぎる…レトイン、あいつの力のまえでは何もかも歯がたたない…
俺達も…やるしかないんじゃないのか!?」
「し、しかし………
(確かに善の言う通り、エレクトの力のまえではすべてが無力化されてしまう…
やるべきか…いや、まだだ…!
まだ粘ってここは……)」




