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3BECAUSE  作者: Guru
120/131

第120話「あの海の見える場所②」

BECAUSEスリービコーズ


第120話

 「あの海の見える場所」






善は志保をジンの手から届かぬように、安全な場所へと運んでいた。



「この辺りで大丈夫よ 善


私のことはいいから早くレトインの元へ戻ってあげて」



善は抱えていた志保をゆっくりと下ろし、すぐさま戦場に戻ろうとした。


黙って振り返り、走り出そうとする善に、志保は声をかけた。



「忘れてないわよね?善…


あの海の見える場所での約束」



「!!!」



善は志保にそう言われて、はっとした。




これは善達がジンと戦う数日前の話


善はライジングサンのメンバー全員を“あの海の見える場所”へと連れていっていた。



善は水平線の先から見える、昇る朝日を眺めながら、みんなに向かってこう言っていた。




『みんな………



必ずまたここへ帰ってこよう またみんなでこの景色を見よう』




善の言葉には自信がなく、あまりにも小さい声で


打ち寄せる波の音に、かき消されてしまうほどだった。


それでもメンバーの全員は、なぜだか善の言っている言葉が分かった気がした。




志保にその時のことを言われ、善は目が覚め我に返った。



(そうだ……そうだよ……

何やってたんだ俺  



親父の仇を取る?これは復讐!?


違う……違うだろう




まえに誓ったじゃないか!!俺がみんなを守るって!!


俺が…俺がやらなきゃならねぇんだよ!!)



身も心もやられ、すっかり弱気になっていた善は、こう言い返した。



「当たり前だろ志保!!」



いつものように強がった。

そんな言葉、すっかり忘れていたにも関わらず…



しかし、これこそが、この強がりこそがいつもの善だった。

いつも通りの善の姿がそこにはあったのだ。



(ありがとう……志保)



志保のおかげで、善は正気を取り戻す。

駆け足で善はレトインの元へと向かう。




その善の帰りを待つレトインは…


たった一人で、ジンへと立ち向かっていた。


足を引っ張るばかりで、あまり戦力になっていなかった善だったが、いるといないでは大違い。


標的が分散されないため、レトインはかなりの苦戦をしいられる。



「おいおい!どんどんキレが落ちてきてるんじゃないか?レトイン」



「黙れ!!!」



「なかなか善が戻ってこないな…もしかして本当に逃げちまったりしてな!」



ジンの笑いが止まらない。

レトインにも揺さぶりをかけるつもりだ。



「そんなわけあるか!!


(まだか…善…一人で耐えるのもそろそろ限界だ…)」



揺さぶりは効かずとも、体は悲鳴をあげていた。


ギリギリのところで、なんとかレトインは踏ん張り続けている。




「待たせたな!レトイン!!」



そこで、ようやく善が戦場へと舞い戻ってきた。



「なんだ……自ら死にに帰ってきちまったか」



ニヤリとジンは笑い、善の帰還をレトインだけでなくジンも喜んだ。


エレクト同士の戦いを、まだまだ楽しみたいのだろう。



善の顔をふと見たレトインは、善の表情の違いにすぐさま気づいた。


先程とはまるで落ち着きが違う…



この短時間で善の身に、一体何が起きていたのかは分からず驚いたが


決まって、こういった時はだいたい調子に乗って失敗するのが善だ。

レトインは善に忠告をいれる。



「善!!何があったのか知らないがおまえ………



善はレトインの言葉を聞くまでもなく、ジンに向かってひたすら真っ直ぐ突っ走った。



「ブラストナックル!!」



善は炎の拳を作り、ジンに殴りかかろうとしている。


本能の赴くがままに、何も考えずに行動しているようにしか見えない。


そんな単純な動きに、ジンは余裕を見せた。



「どうした?血相変えて?そんな怖えぇ顔すんなって!!」



ジンは善の攻撃を先程同様に、軽々とかわそうとした。


しかし……



「!!!


(は、速い!!!)」




善のパンチの速度はジンの想像を遥かに越えており、ジンは判断を見誤る。


善の拳はジンの顔面に直撃し、爆発しながらジンの体は吹き飛んだ。



何が起きたかまるで分からないまま、ジンはゆっくりと立ち上がった。



(なんだ今の動きは……まるで別人……


さっきまでのは手を抜いていた?


いや、そんなはすがねぇ…そんな余裕はなかったはずだ)



ジンが戸惑う中、善は今度は火の剣を作り、ジンに斬りかかる。



(これも……速い!!!)



こちらの善の攻撃も、先程の数倍速く、ジンは善の繰り出す攻撃を受け止めるだけで精一杯だった。



そして剣を両手で受け止め、動きが止まったジンに、善は蹴りを入れる。


その蹴りは爆発し、またしてもジンの体は吹き飛ばされた。


善の意図を汲んだレトインは唸った。 



「これは…ジンが善に先程やったのと同じ手口!!」



善の攻撃が立て続けにジンにヒットした。


この2発が決まるまで、すべてかわされ続けてきた。

初めて善がジンにダメージを与えたと言っていいだろう。


自分と同じ戦法でダウンをとられたジンは、屈辱でしかなかった。



「貴様……どうやらまぐれじゃねぇみたいだな」



ジンの目つきが変わった。 



今まで人を小馬鹿にするように見下し続けていたジンが

ようやく善を“敵”として認めようとしている。



レトインはジンのこの“顔”を見て昔を思い出していた。



(ジンのこの表情……


こんな顔を見たのは“あの時”以来


9年ぶりだ…)




レトインとジン 9年前に起きた決闘


レトインには思い出したくもない、当時の記憶が甦る。



(ジン…本気だ…!!


善の目覚めにより、どうやらジンを、とうとう本気にさせてしまったようだ…)






第120話 “あの海の見える場所” 完

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