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3BECAUSE  作者: Guru
116/131

第116話「サイン①」

ジンの巧妙な手口にかかり、善は自分を見失っていた。


レトインは何度も注意を促していたが、それでもジンの話術が上回った。

レトインには焦りの色が見える。



(まずいぞ…善はただでさえジンの攻撃をかわすので精一杯

それにも関わらず、精神まで崩れたら…


このままでは…善は簡単にやられてしまう!!)



すかさずレトインが善のサポートに入る。


もちろんレトインにもそんな余裕はない。



「ジン…善はおまえの相手になってなかったんだろ?

だったらなぜそこまで追い込む…


ここまでする必要はなかったはずだ」



レトインの問いに対し、ジンは満面の笑みを浮かべて言った。



「あいつの絶望する顔が見たくてな!


俺のせいにして勘違いしてやがるから教えてやったのさ!!」



不敵な笑みを浮かべたまま、ジンは善に狙いを定めて攻める。


それを庇うように、レトインが善を守る。


しかし、レトインに善のカバーをするのも無理が生じる。

レトインに大ダメージが入る。



「ぐっっ!!」



ジンの笑いが止まらない。



「くっくっくっ…

レトイン おまえに善を守る余裕なんてないはずだ


善を見捨てなきゃ、おまえもいっしょに殺られるぞ?」



ジンにもレトインが明らかに無理をしているのは分かっていた。


それでもレトインはこうするしかない。

善が正気を取り戻すのを、ひたすら待ち続けるしか手はない。



(チッ……これじゃどうすることもできない…


善 乗り越えてくれ…!!

そうでなければ、このままでは俺も……)



善はただただ、レトインがやられるのを見ていた。

善にももちろん、レトインが自分を守るために無理をしていることは分かっている。


頭では分かっているのに、必死にどうにかしようとしているのに、体がうまく動かない…



一度途切れた緊張の糸は、そう簡単には戻ることはない。



“その時”が訪れるのは、そこまで時間はかからなかった。


ジンがレトインの攻撃を掻い潜り、善の後ろへと回り込む。

善の背後を完全にとらえた。



「!!!


善!!後ろだ!!」



慌ててレトインが叫ぶ。 


善はレトインの声に反応し、とっさに後ろを振り返った。




「今更気づいても、もう遅ぇよ



じゃあな 橘善!!!」



ジンはエレクトの力を使う。


すべての力を一点に集中

0から一気に100の力を放出。



時すでに遅し。

善が今更反応して何かしたところで、それは何の意味も持たない。


この攻撃をまともに受けたものなら




間違いなく善は…………死ぬ





「善ーーー!!!!」










「アクアウイップ」




レトインの叫び声と同時に、もうひとつの声と“水のムチ”がどこからともなく飛んできた。


そしてそのムチはジンの手に当たり

善に直撃するはずだったエレクトの攻撃は軌道をそらし、善の体をかすめた。



ジンの全力の一撃を受けずに、死を免れた善は唖然とした表情で、そのもうひとつの声の主の名を呼んだ。




「志保!!!


ど、どうしておまえがここに…?

おまえ黒崎のところにいたんじゃ…」



そう、黒崎と戦っていたはずの志保が、突如善達のまえに姿を現したのだ。



「私がここにいる理由…?そんなのどうでもいいでしょ…」



志保の声はかすれていた。声を出すのもやっとといった様子だった。



「おまえ…どうしたんだよ…そのひどい怪我…


もしかして立っているのもやっとなんじゃないのか…?あまり無理するな…」



「なにそれ…私がいなかったら、今あんた死んでたんじゃない?


そんなあんたに心配される筋合いないわ…」



自分が命の危機にあったことなど、すっかり忘れて志保の心配をする善。


それも無理はない。

それほどまでに、志保の体はボロボロだったのだ。


志保はすでに限界を迎えていた。




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