第113話「最後の切り札③」
志保はずっと黒崎の足をすくうために準備をしていたのだ。
地面に水をまき、エーコの力で地面を瞬時に凍らす。
そんな作戦を思い描き、エーコが水の存在に気づくのをひたすら待っていた。
一件、見事作戦がハマり、簡単にいったように思えたが、ここに至るまでに一苦労あったのだ。
嵐の力に水は分が悪い。
何度も水を撒いては吹き飛ばされを繰り返した。
その流れの中で、黒崎が放った竜巻により飛びった水滴が、たまたま屈んだエーコの顔に当たり
そのおかげで、エーコも志保の作戦になんとか気づくことができたのだった。
運も味方につけたビックプレーを生んでいた。
黒崎はエーコの実力を知り尽くしてるがゆえに 『できるはずがない』
そう決めつけてしまっていた。
その油断によって、黒崎は自慢の足を封じ込まれたのだ。
「まぁいい……確かにさっきみたいに走れはしないが、おまえたちを倒すには“これ”で十分だ
エーコ
キングにいたおまえもこの言葉、聞いたことあるだろう…?
やられたならやり返す…それがジョーカーだ!!」
大きな武器であるはずの足を失った黒崎だったが、悲観することはなかった。
むしろ黒崎は笑みを浮かべている。
その笑みの理由の意味が、エーコにも分かる。
「ま、まさかあんた…!!」
実は力を溜めていたのはエーコだけではなかった。
黒崎もずっともう片方の左手で力を溜め続けていたのだ。
「気付くのが遅いよ…エーコ」
その溜めた力を解き放ち、黒崎は先程の何倍もある竜巻を作り上げた。
そして、黒崎は志保を睨む。
「気が変わった…おまえは俺を怒らせた
まずはエーコと思ったが…
おまえが先だ!!志保!!」
今までエーコに向いていた矛先は、今度は志保へと変わる。
エーコの焦りは、どんどん増していく。
(やばい……今度は標的が志保に…!!
あたしの氷の盾じゃどうにもならないけど、どうすれば……
そうだ!!
この溜めた左手…使うしかない!
さっきは数秒でも盾で攻撃を防げたんだ!
溜めた力使えば、きっと巨大な盾でなんとか防げるかもしれないじゃん!!)
奥の手を使おうとしたエーコは、志保のもとへと駆け寄ろうとする。
しかし……
「ばーーーか
俺の狙いは…ずっとおまえだよ!エーコ!!!」
志保を狙うといった黒崎の発言はフェイク。
初めから黒崎の狙いは変わらずエーコだった。
エーコは志保を守ろうと、志保の方に目を配る。
その瞬間に黒崎はエーコに巨大な竜巻を放つ。
エーコが騙されたことに気づいた頃には、時すでに遅し。
目の前まで巨大な竜巻が迫っていた。
(や、やばい!!!
もうほんとにこの左手を使うしかない…!!
防げないかもしれないけど、一か八か氷の盾でこの竜巻を…)
エーコは左手を付きだし、溜め続けた禁断の力を解き放とうとした。
その時
ドン!!
と、何者かに体当たりされ、エーコの体は吹き飛ばされた。
エーコがその体当たりした人物の方を見ると……
「志保!!!」
そこには志保が立っていた。
「あなた…今使おうとしたわね?左手
だめよ…その攻撃…
あなたこそが最後の切り札なのだから」
志保が竜巻に飲み込まれようとしている。
すかさずエーコは志保に手を伸ばす。
すると……
「あれっ……やばいじゃん!あたしまで引き込まれる!!」
その強すぎる嵐の力に吸い込まれるように、エーコの体も持っていかれようとしていた。
「エーコ!!捕まれ!!」
大悟がエーコの手を引き、なんとか竜巻の外へと引きずりだす。
「ま、間に合った……」
大悟はかろうじてエーコの救出に成功し、そのまま竜巻から逃げるようにエーコを連れて走り出した。
「ま、待って!どこ行くし!!
志保が…これじゃ志保が……!!」
「バカ野郎!!志保の言葉、聞こえなかったのかよ!?
おまえが最後の切り札なんだよ!おまえしかいないんだよ!!」
志保に助けに戻ろうとするエーコを押さえつけ、大悟はさらに遠くへと逃げた。
「志保ーーー!!!!」
第113話 “最後の切り札” 完




