第108話「0から始まる一言②」
「レイはレトイン、おまえのことが好きだったんだ」
初めて知る事実に、レトインは驚きを隠せない。
「そ…そうだったのか…
(し、知らなかった!!)」
そのジンの話を聞いて、レトインより先にまず善がキレた。
「まさかてめぇ…それが理由で…
自分のもんにならねぇからって
レイを殺したんじゃねぇだろうな!!?」
「ん?なぜおまえが怒る?橘善!!
おまえには関係のない話だろ?」
「うるせぇ!関係あるとかないとか、そんなの
知るか!!
例え自分のものにならなかったとしたら
その先の相手の幸せを考えてやるってのが
本物の男だろうがよ!!」
「あぁ?何くだらねぇこと言ってやがる…
フン…別に、そんなどうしても欲しかったわけでもねぇ…
自分のものにならなければ、そんなものどうでもいい
その辺にある、ゴミと一緒…
なにせ、俺は選ばれた者なんだからな!
ふははは!!」
善は改めて、ジンには何の道理も通じないと悟った。
「呆れてものも言えねぇよ!!
しかし、自分の好きな女だろ…
それを…
信じられねぇ!!」
怒りのおさまらない善を無視し、ジンは話を続けた。
「それだけじゃねぇ…
それともうひとつ……」
ジンはレトインに人差し指を立てて、指を差す。
「試してみたかった…
一体どちらが強いのか?
果たして、どちらが本当に神に選ばれた者なのかをな!!」
レトインは当然知っていたとばかりに、小さく頷いた。
「やはりな…
だいたい、その理由は分かっていた
俺と戦う理由付けとして、レイを殺したということはな…
まぁ…もうひとつの理由は、知りもしなかったが…
いい加減気づくべきだジン…」
「なに……?」
「どちらも選ばれてなんかいない
俺達は、至って普通の人間だってことをな
レイにトウマ
その二人だけじゃない…
その他、数多く苦しめてきた人達全員に、今すぐ詫びろ…!!
すべてが自分の思い違いでしたとな!!!」
そうレトインが吠えると、レトインの体が強く光り輝き始めた。
それに反応するかのように、ジンの体も光りだす。
そして、ジンも負けじと言い返した。
「フン…それはおまえが俺を倒してから言え!!
おまえ達は俺を認めざるをえなくなるんだよ!!
すべてを受け入れ、俺に服従しろ!!
俺が新しい世界をお前達に見せてやるよ!!!」
空気は一気に引き締まった。
遂に、ジンと戦う、“その時”が訪れたのだ…
ひとつ遅れて、善が気合を入れる。
善の体も光輝き始めた。
しかし、善はレトインの心境を心配し、一声かける。
「大丈夫かよ?レトイン!
レイの話…相当ショックなんじゃ…?
そんなんで平気かよ…!?」
「まぁな…
だが、もはやもう嬉しい気分だよ」
善はレトインの発言に驚いて、聞き返した。
「えっ…?嬉しい…?」
「長年想ってた恋が、ようやく実ったって感じだ…
俺のことは心配するな!!
善、この戦いが終わったら、レイに会ってやってくれ」
「!!?」
「墓参り…だがな…
きっと、あいつも喜ぶだろ?」
「あぁ!!分かった!!
(レトイン…平然を装っているが…
内心、辛くて仕方ないだろうに…
レイ、ヤコウ、そして…親父!!
みんなのためにも、何としてでもジンを倒す!!!)」
正真正銘の最終決戦。
勝者だけが見ることが許される未来に向け
すべてを賭けた戦いが
今、始まろうとしている。
第108話 “0から始まる一言” 完




