姫いちごと蛇いちごと木いちごと
三姉妹が喧嘩してだれが一番か競うという物語です。
短編なので簡単に読めます。
ある日、大きな鉢に姫いちごと、木いちごと、蛇いちごの三つの苗が植えられていました。
三つのいちごたちは仲が悪く、毎日毎日、自分がいちばんだといって喧嘩ばかり。
そんなとき長女の蛇いちごが、妹の姫いちごと木いちごにこう切り出しました。
「あたしたち姉妹で一番のいちごを決めようじゃない」
妹たちはこたえました。
「それなら、おいしい実をつけて先に食べてもらったほうが勝ちにしない?」
「うけてたつわ。文句のいいっこなしよ」
いちごたちは、みな自信満々です。
あくる朝、姫いちごが「どんな殿方だって満足させて見せるわ」と高笑い。
「この中でどーんなイチゴはよりもわたしはきれいだもの」と自信満々にいいました。
たしかに、姫イチゴは見るからにツヤツヤで、プルプルで、中までみずみずしく、たちまち大人気。
アッという間にいちごミルクをぶっかけられて、みんなもぎ取られてしまいました。
こうして姫いちごの種は、いちごミルクによって、ますます甘くてクリーミーになりました。
一方、木いちごと蛇いちごは、鉢が大きく空いてから、からだが急に大きくなりました。
「姉いちごがいなくなったからね。ご飯もたくさんあるよ」
ところがしばらくたつと、どうでしょう。
木いちごの苗のほうが明らかに大きく、きれいに育ち始めたのです。
「あら、わたしのほうが大きくなってるわ」
木いちごは蛇イチゴに差をつけてこれでもか、とぐんぐんぐんぐん大きくなりました。
「やったわ、やせっぽっちのお姉さまよりも食べ応えのある体よ」
ばく、むしゃむしゃ
おおきく赤々となった木いちごは、犬が一口でたべてしまいました。
木いちごの種は犬の糞の栄養により、ますますでっぷりと、大きく育ちましたが、小便臭くなりました。
結局、最後まで残ったのは長女の蛇いちごです。
「残ったのはアタシだけか、ふん」
「自由で気が楽なだけだし」
「あえて食われないという選択」
「あいつらは馬鹿」
蛇イチゴは負けたことに納得しませんでした。
だんだん一人でいるさみしさからか、どんどん口が悪くなりました。
体がどす黒くなっていき、昔の友達だった蜂や蝶も、しだいに寄り付かなくなりました。
そして、夕立が降った翌朝・・・
「あっ・・・」
べちゃあ、ついに腐って落ちてしまいました。
腐ってしまった蛇いちごは妹たちが、うらやましいやら、悔しいやらで、なみだが止まりません。
すっかり性格のねじ曲がった蛇いちごは、姫いちごと木いちごに呪いをかけました。
「お前たちを酸っぱくしてやる。」
こうして、犬すら食わない腐ったいちごの涙で、いちごがすっぱくなった、というおはなし。
読んでいただきありがとうございました。