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異能力者の苦悩  作者: plastic
エスペルト討伐編
2/3

久しぶりの長期依頼

俺の名前は佐藤心。異星人の能力を持つ異能力者だ。


異能力者はそれぞれ「ギルド」というグループをつくりモンスターの討伐や猫などの捜索まで幅広い依頼をうけてその報酬で儲けをだしている。

ついさっき俺がモンスターを討伐したのも依頼があったからだ。

そう、俺もギルドに所属しているのだ。名前が「ヴィルムギルド」という日本で一番強いと言われているギルドだ。俺はそのギルドの副団長をしている。


そうして俺は今、ギルドの事務所につく。

少し古い小さなビルだ。


「ただいま〜」


「あっ、心どうだった?」

こいつは九条暦。俺と同い年で数年前からこのギルドで一緒に活動をしている。能力のこともあり、今は二人で一緒に暮らしてるほどだ。能力は「氷結」。


「倒せたよ。でもあんなカスモンスターほっといてもよかっだろ。」

俺の問いにすかさず部屋の奥にいた人物が反応する。


「ごめんね心君。でも依頼を受けて、報酬も貰ってしまっていたんだ。だから断れなくて...」

この人は和田さんといってこのギルドの団長だ。「なぜこんな人が団長なのだろう?」と思ってしまうほど気が弱く、謙虚な性格だ。能力は「神雷」。


「団長をあまり困らせるなよ心。そいつは自分の意志を持てない女々しい奴なんだから。」

こいつはレベッカ。本名は知らないが外見からして外人だということはわかる。とてもきれいな金髪金眼だ。能力は「能力解除」。


「おい、団長何とか言い返してやれよ。」

俺の呼びかけに反応しながら団長はオドオドしている。その反応を見てレベッカがニヤニヤと笑いながら楽しんでいる。

「そうやってみんなで団長をからかわないの」

暦が少し怒ったような口調で言う。

「ははっ、すまないね団長さん。」

「ごめんごめん。」

謝ると団長は安心したかのようにホッと息をつく。


「明日から学校なんだし、モンスターも討伐出来たんなら帰ろう心。」

「うん。」

今日は週末で明日から学校がある。なので俺達が早めに帰ろうとすると、

「ちょっと待って!」

団長が大きな声を出して俺達を呼び止める。

「どうした?団長?」

「さっき依頼が入ったんだ。」

「へぇ、また随分と今回は次の依頼がくるのが早いね〜」


レベッカがもの珍しそうに言う。そうなるのも仕方ない。最近はモンスターが少なく、依頼もあまりなかったのだ。

「で、どんな依頼なんだ?」

「あぁ、それがちょっと不思議な依頼でね。大量のモンスターが一点に集まっているだ。それを討伐して欲しいというこさことなんだけど...頼めるかな?」

団長が申し訳なさそうに言う。さっき俺が依頼を面倒くさがったのを考えての事だろう。

「うん、いいよ。」

俺より先に暦が反応する。

「ありがとう!」

「で、場所は?」

「丸山工場跡地だ。」

丸山工場跡地。そこはもう誰も近寄らないような今はもう使われていない廃工場だ。

「なんでそんな所に?」


暦が不思議そうに言う。それもそのはずモンスターは普通、人の多い所に出没し、人間を襲う。

「分かった。心、帰りに寄っていこう。」

「え!?俺も!?」

「当たり前でしょ?いやなの?仕事なんだしちゃんとやったら?」

暦が少し威圧のある言い方で言う。

「あはは、行きます。行きます.....」


「壊斗君にも一応知らせておくよ。」

壊斗というのは、このギルドのメンバーで本名は本田壊斗。俺より少し歳が上で能力は「爆破」。

「壊斗が来ると証拠や原因が破壊されそうだからいいよ団長。」


暦が軽快に物事を進めていく。そうして、俺達は事務所を後にする。





工場跡地に向かっている途中にモンスターと遭遇する。

「ねぇ心このモンスター丸山工場跡地の方向に向かってる。」


(確かにこのモンスターが向かっている方向は丸山工場跡地だ)


「あぁ、少し急ごう。」


(なにか嫌な予感がする...)





ーーーーー工場跡地に着いた。今はもう使われていないこともあり、大きなフェンスがいつもはつけられている。だが、

「フェンスが壊されてるね。心。」

「うん。確かにここ一点にモンスターが集まるのは異常だな。」

そして、工場跡地に入る。すると、

「え!?」


思わず声が漏れる。想像以上のモンスターの数だ。俺は勝手に数十体ぐらいかと思っていた。だが、

「なにこれ!八十体位いるんじゃないの!?」

暦も驚いているようだ。しかし、最も不思議なのはこれだけのモンスターがただ立っているだけで、歩きも動きもしていないというところだ。

「こいつら何で?」


俺達が驚いていると一体のモンスターが俺達の気配に気づく。そして、

「オオオオオオオオオオオオーー」

大きな雄叫びだ。それに反応し、次々とモンスター達が俺達の存在に気づく。

「異能力、氷結!」

暦がいち早く反応し、異能力を発動させる。すると、暦の周りには冷気が発生しそれでモンスター包み込む。そして、そのモンスターは完全に凍りつく。


暦の能力「氷結」は、自身の周り冷気や氷塊などを発生させ攻撃を行うことができる。


「心!私が工場に原因を調べて来るから心はこのモンスター達よろしく」

「え!?ちょっと待て!!」

あっという間に暦は、モンスターの頭の上を移動して行き工場の入口に到達する。

「くっそ、あいつ。この為に俺を連れて来たのか...それに、流石にこの数は...」

つい苦笑いしてしまうような数だ。


「異能力、異星人!」

俺の能力「異星人」は、自身の身体能力を上げたり自分の体に触手を生やしたりなど人では出来ないような人ならざる事ができる能力だ。


身体能力を上げたことによって容易にモンスターを殴り飛ばせるようになった拳でモンスターを次々と倒していく。


しかし、背中に衝撃的な痛みが走る。炎だ。一体のヘルハウンドによる炎の遠距離攻撃。その後ろにはまだ数体のヘルハウンドがいる。

「やばいな、完全に囲まれた。」

ヘルハウンドを含め数十体のモンスターに囲まれるという絶望的な状況。

そして、一体のモンスターが襲いかかって来る。それに釣られるように次から次えと襲い来るモンスター。完全に身動きが出来なくなる位まで押し倒される。

「あぁ〜めんどくせぇなぁ。」

瞬間、何か黒い影が数体のモンスターを一気に倒す。


ーーーーーーーーー俺の触手だ。

二本の腰から伸びる太い触手がモンスターの頭を貫いていく。

そして、軽くなった体を起こし触手によって数体、数十体と倒していく。

その姿はもう人間ではなかった...。





心が触手によってモンスターを次々と倒している頃、暦は工場の最上階に着いた。

「中にはモンスターいないなぁ。」


暦は1階からこの5階の最上階に来るまで一体もモンスターと遭遇していなかった。

「いや〜心に悪いことしたなぁ。」

少し罪悪感を覚えながら一番奥の部屋に辿り着く。

「ここで最後だ。ここには流石になんかあるかな?」

ドアを開ける。たが、見渡す限りそんなに目立つものは無い。少し歩いてみると「トンッ」と足に何かが当たる。


「なんだろ?これ?ピエロ?」

二十センチほどの小さなピエロの人形だ。

「なんでこんなところに?」

暦がピエロの人形を手にし、伸ばしたり縮ましたりしていると、「ガシャンッ」と正面の窓ガラスが割れる。そこから、下の工場前にいたであろう鳥型のモンスターが数体、中に入って来る。


「え!?なんでこんな急に?」

驚きを隠せず一旦引こうと再びドアを開けるとそんなこには、牛の頭に人間の体。ミノタウロスだ。

「え!?ミノタウロス!?」

ミノタウロスといえばかなり上位のモンスターだ。普段はそんなに見かけることは少なく、出現率はかなり低い。


「異能力、氷結!」

能力を発動させ、ミノタウロスの目に氷塊を直撃させる。

「ウオオオオオオオオオオオオーーー」

混乱するミノタウロス。巨大な体を大きく左右に揺らす。

「いまのうちに...グッ」

動き回るミノタウロスの拳が腹に直撃する。大量の血が口から出てくる。


異能力者の体は能力発動時であれば普通の人間よりも少し頑丈になっている。そして、自己回復も少しだけ早い。

(やばい、やばい、逃げなきゃ...)

暦がそんな事を思っている間にミノタウロスの目が少しずつ回復していき、ミノタウロスは目を開く。そして、


ーーーーードンッドンッバンッ


殴り、殴り、蹴りとミノタウロスの攻撃が暦に直撃し続ける。暦の意識は一発目の殴りでほぼ消えかけ、能力の発動も消えて生身の身体で攻撃を受けていた..。





暦が人形を手にしていた頃、心はまだモンスター達と戦っていた。

「なんだよ、そんなに手応えある奴いないな。」

そんなことを思っているとモンスター達がざわつき始めた。

(なんだ?やっぱりなにかが変だ)


そして、次の瞬間モンスター達が一斉に工場に近づいて行った。空を飛べるモンスターは最上階へと、陸のモンスターは工場の入口へと向かっている。

「お、おい!お前ら?どうした?」

嫌な予感が的中した。奴らが向かったのは暦の居る場所だろう。

「急ごう。」


工場を手と触手を使って登って行く。俺が着いたのは暦が居るであろう場所から少し離れた所だった。

走る。そして、暦の声が聞こえる。とても鈍い声だ。唸るような...。何があったのか考えることをやめる。やめておく。段々とはっきりと聞こてきた。


「グフッゴホッ」

それは考えていたよりも遥かにひどかった。

ミノタウロスにタコ殴りにされる暦。左腕はもう折れてしまっているのだろうか。ありえない角度に曲がっている。

「チィッぶっ殺す!!」


触手を利用し、かなりの早さでミノタウロスまで距離を縮めて、不意打ちを打ち込む。ミノタウロスの頭が音を鳴らして曲がる。そして二発目、右腕に蹴りを打ち込む。次に 空中で回転し、右腕に蹴りを数発打ち込み右腕がやっと折れる。

ミノタウロスが体制を立て直し、頭をぐらつかせながらこちらを睨む。

「フッ馬鹿が」


二本の触手で両目を潰す。その反動でまだ完全に回復しきってしなかった頭が吹き飛ぶ。

そして、ミノタウロスの大きな体が倒れるとともに工場が崩れていく。

(あんなにモンスターが一気に入るからだ!クソッ!)


倒れる暦の体を持ち上げ、触手を使い、工場から脱出する。すると、工場は俺達が脱出すると共に崩壊する。


そのまま俺は暦をおぶり事務所へ直行した。

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