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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪魔は少年に契約を交わす

作者: モコモコ君

「うむ……あの者は我の儀式を邪魔したのだ!いつか報いが来るだろう」

「馬鹿犬。机に落書きしたらそら怒られるに決まってんだろう?」

 黒髪を一直線にそろえたおかっぱの髪型の少年の方向違いな怒りを眼鏡をかけた少年が嗜める。

 それに対しムッとした黒髪の少年はポケット中から取り出したカラーコンタクトを装着し、声高らかに宣言する。

「犬ではない!我の名前はサタン。地獄から舞い降りし漆黒の大悪魔であるぞぉ。それにあれは我が所有する一品我がどうしようと我の自由ではないか!」

「……馬鹿。そんなことやってて恥ずかしくないの」

「我に恥ずかしいことなどない!そのような常識に囚われる存在など……あぁまっておいてかないでよー」

 すぐ襤褸がでる健をみて涼は大声で笑う。

「あっはは。健を揶揄うのはいつやっても楽しいなぁ」

「むむむ。涼君の鬼!馬鹿!インチキ軽薄似非眼鏡!」

「ほぅ。もっと虐められたいらしいなぁ」

 そういって建の柔らかい頬を引っ張る。その触り心地はコットンよりも柔らかく、餅のように伸びると一部マニア(?)の間で評判な健の頬をつまみ上げる。

「縦縦横横丸書いてちょん」

「あぅあぅひぅひぅあーうあっ……ってらにすんだよ!」

 そういって建がつねられた頬を抑えながら抗議の声を上げる

「これに懲りたらもうあんなことしない事。もし次やったらあと10セットやるからな」

 建は真っ赤に膨れ上がった顔を想像しながら真っ青な顔になり声細に反省する。

「わかった。もうやらないよ……。」

「わかればいいんだよ。わかれば。大体かっこよくなりたいんだったらそんな妄想に浸ってないでもっとこういう本をだな」

 そういってカバンの中からファッション誌を取り出す。涼はそれを白い目で見た後鬱憤を晴らすように石ころを蹴り飛ばす。

「むぅ……そこにある本の服、僕着れないじゃん」

 自分の小さい背丈にコンプレックを感じる。それを見た涼は追い打ちをかける様にして―――――

「似合わないしな。制服着てるからぎりぎり中学生に見えるけど、制服脱いだらただの小学生にしか見えな――ごっふ」

「涼君のあほんだらぁぁぁぁ。うわあああん」

 そういって健は涼に華麗な跳び蹴りを喰らわせ泣きながら夕日の向こう側へと駆け出して行った。


「むぅ、涼君の馬鹿。そりゃ背は小さいかもしれないけど、あんな事いわなくてもいーじゃん」

 そう言いながら健はスマホの画面をスライドして画面に映るブロックを消していく。しかし怒りに震える手は冷静さを欠いておりあまり芳しくない結果に終わりそのスマホをベットに投げ飛ばし、後を追うようにして

 自分もその身をベットに倒れこむ。

「あぁ、もうイライラする」

 そういってスマートフォンを覗くとゲーム画面からいつの間にか知らない画面になっていた。

「ん……なにこれ。広告バナーでもふんじゃったのかな」

 スマートフォンの画面には黒い背景と赤い文字という怪しいという言葉以外で形容したら逆に失礼な――――限りなくよく表現すれば夢見がちな中学生が好奇心の好奇心を煽るには十分な何かが

 そこにはあった。

「えっと何々『大嫌いなあいつを見返す大チャンス!自分の能力を飛躍的に向上させる魔法』。ふむふむ、なるほどなー。まってろ似非眼鏡!今日我に行われた様々な無礼千万な数々。この大悪魔……公爵だっけ?伯爵だっけ?まぁいいや。我の呪いで100万倍にして返してやろうぞ!」

 健は一人部屋で仰々しく笑った。3回も。大きな声で

「うるさい!静かにしなさい!」

 そして怒られたのである。



時は草木も眠る丑三つ時、健はすべての物をどかした自室の押入れの中で先ほど見た怪しげな儀式の準備をしていた。

チョークで魔法陣を描き、アプリコットの匂いがするだいだい色のアロマキャンドルを置く。

「『最後に月の光がささない暗室に魔法陣を描きます』っとこれで準備完了なのだ!あとは火を灯すだけ!」

昂揚感に包まれた少年は自己を抑える事が出来なかった。少年は、ライターの火をつけ、キャンドルの火を灯す。

「ふぅ、これで召喚の儀式は終了したのだ!あとは明日になるのを待つだけ!楽しみなのだ!」

少年は、部屋から出ようと戸に手を掛ける。しかし……

「あれ、開かないのだ。なんか引っかかってのかな。」

少年は力いっぱい戸を押したがびくともしない。


そのとき、首筋に湿った感触を感じる。少年は後ろを振り向く。そこにはアロマキャンドルと

怪しげな魔法陣があるのみでほかには何もない。少年は身震いした。本能が危険だと感じる。


「開けるのだ、開け、開けよ」

少年の声は徐々に切迫した物に変貌する。体にまとわりつくぬめりとした湿った感触の面積が広がり

続ける。

少年は、初めてここで後悔した。自分は呼び出してはいけないものを呼び出してしまったのではないのだろうかと。

少年は戸を蹴る。が、戸は開かない。全身が得体のしれない何かの感触が首筋から背中へとうぞうぞと移動を始める。少年の瞳に涙が浮かぶ。

「いやだよぉ……。だれか、おかあさん、おとうさん、涼君。誰でもいいからここをあけてよぉ」

少年が涙を流し始める。不思議と体が動かなくなっていった。まるで石になってしまったかのように。

ぬめりとした何かが耳に振れる。そして、闇に囁かれた。

「契約成立だね。君の形、貰うよ」




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