パラディンはハーレムを望まない
「だーかーらー―――聞こえてますか?」
額に立った青筋に手を当て、なるべく平静を保つように、感情が篭もらないように聖騎士は言う。
真面目で若くて見栄えのする容姿、前途洋々のエリート(要するに同性から「このリア充め!!」ギリッと歯軋りされているタイプ)である黒髪の青年は王都中の女性から熱い眼差しを送られていて、王女にすら想いを寄せられていたが、
「私には最愛の妻がいます。貴女方の想いは受け取る余地は無いのです」
王女の求愛を拒絶し続けていた。
王女だけではない。
王女の乳姉妹。
女官長。
新米侍女。
獣人(獅子)の少女。
「グレヴィア様。リリ=ルーも奥さんにしてあげて」
傍らの妻が獣人(獅子)の少女も娶れと言ってくる。
小柄な妻、アム=ネネの頭には兎の耳が揺れている。銀糸のような髪に赤い瞳の美少女に見上げられ、その目が僅かに潤んでいたとしても、グレヴィアは頷くつもりはない。
何故なら、
獣人(獅子)の少女は妻の同性の恋人だった。
新米侍女は女官長の。
王女の乳姉妹は王女の。
皆、同性カップルだった。
ただ、妻に限っては結婚した翌日から彼が留守にしていた6年弱の間にできた恋人なのでわかる。が、何故、恋人のいる彼女たちが揃いも揃って、自分に想いを寄せてくるのか、グレヴィアには理解できない。
何故、恋人と共有したがる?!
聖騎士グレヴィアについて上司や同僚からの人物像―――
寝ても覚めても術と剣の腕を磨くことしか興味が無いと言われている朴念仁。勤務時間外は鍛錬と睡眠しかしていないと言われるトレーニングマニア。