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第九十三章:新年最初の失敗

 今年ももう終わりだ。

 お蕎麦(そば)を食べながら某歌合戦を見るのは毎年の恒例行事(こうれいぎょうじ)

 これをしないと年が終わるって実感が()かない。

 家族三人でお蕎麦を食べ――ゆっくりとテレビを眺めていると、時計の針が

十一時五十八分を指した。

 梨花にメール……届くかなぁ?

 軽い新年の挨拶(あいさつ)メールを梨花に送る。

 ――混んでるだろうからちょっと早いほうが良いよね?

 送信ボタンを押してから数十秒後、テレビで除夜の鐘が鳴った。

「~♪」

 携帯の着信音。

 私は発信者の名前を見てから、急いで自分の部屋に戻って電話に出た。

「もしもし。梨花」

『あけましておめでとう。でしょ? 裕海』

「ん~。あけおめ~……ねぇ、私のメール届いた?」

『届いたよ~。でも気が早いよ、除夜の鐘鳴る前に着信あったよ?』

 しまった。ちょっぴり急ぎすぎた。

「あっちゃー……失敗失敗」

『裕海は今年は失敗の年になるのかな?』

 嫌なこと言わないでよ~。

「ああ。そういえばさ……今日のお昼のあれ、大丈夫だった?」

 一瞬の間。

『う? うん……あの後結構大変だったけど、何とかなったよ?』

「何作ってたの?」

 あんな大惨事になるんだから――苦手なりに結構難しいのにでもチャレンジ

したのかな?

『お蕎麦ゆでてたの……』

 はぇ? 蕎麦ゆでるだけであんなことに?

『お湯ひっくり返すわ火は強すぎるし……やっぱり私にはお料理無理だよぉ……』

 もし電話越しで無ければ優しく頭を撫でてあげたい。

 そんな甘えるような声出さないでよ……

 梨花に会いたくて私我慢できなくなっちゃうよ。

「怪我はしなかった?」

『それは大丈夫。でも味見したときに舌をやけどしちゃったから――当分キス

は無理かもしれない……』

「えええ!?」

 叫んだ。

 声を出したあと我に返って周りをキョロキョロしてしまうくらい素で叫んだ。

「ど……どどどどど、どうするの!?」

 電話口からクスリと笑い声が聞こえた。

『嘘だよ~♡ でも良かった。会わないうちに裕海が別の子に気を取られない

か心配だったんだよ』

 私は脱力して座り込んだ。

 ――ああ。びっくりしたぁ……

『……っていうかだって、お蕎麦ゆでて味見してやけどって――どう考えても

起こりえないことでしょ』

 言われてちゃんと考えると確かにそうだ。

 蕎麦ゆでたお湯でも飲むのであれば別だけど。

「梨花とキスできないって思ったら……そんな深く考えられなかったよ」

『年末と違って時間空くから新年はどこか行こうか?』

「賛成! とりあえず初詣(はつもうで)の時にでも考えよ?」

 梨花の「了解」という声が聞こえ、私は梨花との通話を切った。

 窓から外を見ると、普段に比べて人通りが少し多い。

 ――あけましておめでとう。

 私は心の中で呟き、新年最初の睡眠を堪能した。



 お正月の朝。

 私は昼過ぎまでベッドでぐっすり眠っていた。

 目が覚めて階下に下り、食卓に広げられたおせちの重箱を見るまで私は今日が新年最初の日であることをすっかり忘れていた。

 父親がまだ起床(きしょう)していなかったので、家族三人でおせちを食べるのはまだ先になると言われ――

 私はお腹が空いていたので新年早々お(もち)を焼いて食べた。

 ――ああ。また太りそう。



 その日は特に何事も無く過ぎた。

 ――霊能者さんに会ってから初めてキスをサボっちゃった……

 でも大丈夫だよね?

 この間会った時に一日や二日空けても大丈夫って言ってたし。

 明日梨花と会ったら――思う存分キスをしよう。





 一月二日。

 朝からもうテンションがヤバかった。

 今日は梨花と初詣に行く――今年初めて梨花と出会う。

 まあ。今年初めて外出するんだから当たり前なんだけど――

「あら裕海。おしゃれしてどこ行くの?」

 今の私服姿を母に見られてそう言われた。

 ――やっぱり……? ちょっと張り切りすぎてるかな?

 とりあえず……このリボンは外そう。

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