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第九十章:お掃除

 結局自分の分担場所は自分でやらなくてはならず。

 年末の雰囲気は好きだけど、大掃除が嫌だ――まぁ昔は年賀状書きが終わ

らなくて、泣きながら書いてた事もあったけど――

 今はメールが発達してハガキに書かずにすみ、切手代もかからないので時

間的にも経済的にも楽なんだろうけど。

 ああ! 飽きた。

 十二月二十八日。掃除三昧(そうじざんまい)二日目のことだった。

 たまに帰ってくる父親は、何故か大掃除が大好きでたいして広くも無い我

が家を隅から隅までじっくり掃除するもんで、

 しかも目につかない隙間ばっかりやってるせいで、見た感じ全然片付いて

いなく、母は母で台所の掃除中に調味料のビンを綺麗に並べる遊びを始めて

しまい。

 私一人で玄関の掃き掃除をしているのが、凄くみじめに感じてきた。

「はぁ……外やろう」



 外は寒かったけど、愛理ちゃんや姫華がよくやっているから道端(みちばた)の掃き掃

除は何か面白いことでもあるのか? と思ってやってみたけど、別にそんな

ことは無く、強いて言うなら通行人と出会うため家の中をやっている時より

は達成感がある、というくらいか。

「あれ? 裕海お姉さんも掃除ですか?」

 姫華の家の玄関からメイド姿な愛理ちゃんが(ほうき)を持って出てきた。

「寒くないの?」

「中に新聞紙入れてるんで」

 おばあちゃんの知恵袋か! って突っ込もうかと思ったけど、それよりも

もっと気になることが発生した。

「そこまでして着たいの? それ……」

「はい! 着てみると意外と良かったりしますよ?」

 何となく着てみたい衝動が頭の中をよぎった。

 確かにずっと見ていると、何だか着てみたくなってくるって言うか――

 待ちなさい裕海! ダメよあなた。そんな姿誰かに見られたらどうするの!

 絶対変に誤解を――

「あれ? 宮咲(みやさき)~!」

 聞き覚えのある声。妹尾(せのお)君とは違うもっと堂々とした――

鳴瀬(なるせ)君! 久しぶり~、どうしたの?」

 極上の笑顔でちょこっと首を(かし)げる愛理ちゃん。

 ――これを素でできるところが、世の凡人どもと違うところなんだろうな

……

 鳴瀬君と愛理ちゃんは楽しそうに盛り上がっていた。

 お互いを()めたり笑い合ったり、時には突っつき合ったり――

 あれ? 中学生ってこんな楽しいものでしたっけ?

 私は箒を握りしめてしばらく(なが)めていたが、このまま突っ立っていても道

が綺麗になるわけでも無く、またがって空を飛べるようになるわけでも無い

ので私は静かにその場から離脱した。



 ビンを並べていただけなのに、徐々に昼食がいい加減になっていく。

 だからと言って家族三人分の昼食を作る気にもなれず、私はカップラーメ

ンにお湯を注いで流しの前に立ってズルズルと無心で食べていた。

 ――ここのところおむすびとか炭水化物ばかり食べている気がする。あと

で体重計に乗っておこう、別に乗ったから軽くなるわけでは無いですが。

 父親はまだ窓のサンを磨いているし、母親は掃除を中断して探し物を始め

てしまったので、私は自分の部屋のゴミを捨てて今日はベッドの上でゴロゴ

ロして暮らそうかと思った。

「ああ……退屈だわ」

 だが意味もなくベッド上にいても(むな)しいだけなので、私はしばらく転がっ

たあとで姫華の家で日課のキスを済ませてから、自室のベッドで本格的に寝

る事にした。



 変な時間に寝たせいか、夜の二時という恐ろしく微妙な時間に目が覚めて

しまい、もう一度眠ろうとしてもどうしても眠れないので、私は起きて何か

食べることにした。

 カーディガンを羽織り冷蔵庫の中にあった晩御飯の残りらしき物を温め、

しばらくモシャモシャと食べていたが、おかわりのご飯を温めようとしたと

ころで「あれ? これって太るんじゃない?」という言葉が頭の中に聞こえ

たので、おかわりはよそわずに空になった食器を洗って元に戻しておいた。



 しばらくしてからシャワーを浴びにお風呂場へ行った。

 服を全部脱いでから体重計に乗ると――きっと夜と昼は出る数字が違うん

だな……

 現実逃避しても何も変わらないので、今年はこれから毎日走ることに決め

ました。

 ――とは言っても、明後日はもう大晦日(おおみそか)だけど。

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