表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/132

第八十七章:回想

 お忘れの方もおられると思いますが、前に私は事故で愛理ちゃんとキスを

してしまった事があるのです。

 その時は姫華が辻褄(つじつま)の合わない話をしだして、結局うやむやになったんで

すが――姫華はその時「愛理は多分キスした事あると思うよ~」なんて事を

言っていたので、すっかり忘れていたのですが――

 マジなファーストキスを(うば)ってしまったのは私のようでした。

「ごめん! 愛理ちゃん」

「大丈夫ですよ、裕海お姉さん……幼稚園の頃とか、多分女の子同士でおま

まごととかの時にキスまがいの事はしたことありますから~……多分」

 最後の「多分」で私の良心がじわじわと(むしば)まれていく。

「あっ……話戻しますけど、それで鳴瀬(なるせ)君が言うには中学生でキスした事無

いのは遅いって言うんですよ」

 それは人によるでしょうね。

「それで何となくそんなムードになって……裕海お姉さんの男の子とのファ

ーストキスはどんなでした?」

 げっ……

 下品だけど妙な声が出そうになった。

 うん? ちょっと待って、男の子とキス? そんな事したことあるわけ無

いでしょ! でもキスしたことあるって言っちゃったし――まさか愛理ちゃ

んに「霊能者さんと仕方なくしましたわ」なんて言えるわけ無いし。

 ――ここは梨花を男の子だと思って……!

「……………」

 梨花と夢中でキスをしている情景が浮かび、思わず黙ってしまった。

 ――どんなだっけ? 確か初めてのがもう舌を入れたヤバいやつで――

「裕海お姉さん、顔がニヤけてますよ~」

 愛理ちゃんが期待の眼差しで私を(なが)めている。

 これは……言わないなんて選択肢が無いということを物語っている。

「えっとね……二人きりの教室で――」

「はい!」

「腰が砕けました……」

「はい?」

 かなりはしょった。あんな夢中で声を出してキスしてる情景なんて思い出

しながら、まともな顔して話せるわけが無い。

 多分頬緩(ほおゆる)みまくりで顔は沸騰(ふっとう)するだろう。

 愛理ちゃんは肩透かしをくらったように、私をボーっと見つめてから、ハ

ッとした表情を見せ、

「大丈夫ですよ。お姉ちゃんには言いませんからっ」

 うん。そういう問題では無いんだけどね。

「高校生のキスがどんなものなのか私気にな――あら?」

 愛理ちゃんがある一点を見つめて動かなくなった。

 ――それは……

「何で裕海お姉さんがこれを持っているんですか?」

 愛理ちゃんが拾い上げたのは、さっき私がみつけた綺麗な石だった。

「愛理ちゃん、それ何だか知ってるの?」

「何なのかは知りませんけど――お姉ちゃんがこれと同じものを持っていた

な~って」

 姫華が?

「大事そうに眺めてるのを、前に見たことが――」

 何だろう……何か大切な事を忘れているような気が……



 結局愛理ちゃんはそれ以上何も聞かずに帰って行った。

 しかし私はまた別の事をずっと考えており、結局掃除は全く進まなかった。

「何なんだろう……私と同じ石……?」

 思い当たる(ふし)は無かった。――だいたい、今日この石を見つけるまで実際

私も忘れてたんだ。

 思い出せるわけが無いだろう。

「姫華が大切そうに見つめていた――」

 私はパーカーを羽織(はお)り、姫華の家に行く事にした。



「姫華!」

 部屋に姫華はいなかった。姫華の母親が言うには今お風呂に入っているか

らちょっと待っててくれとの事だった。

 ――仕方なく私は姫華の部屋で待つことにする。

「無いよねぇ……?」

 ちょこっとキョロキョロしてみたものの、緑色の石は目に付くところには

置いていなかった。

 いったい何なんだろう……

「ひゃぁ!?」

 ドアの方から声がしたので私が振り向くと、可愛らしいパジャマを着た姫

華の姿が――

「ひゃっ……うう、これは違っ! 違うのっ!」

 姫華はそのまま走っていなくなってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ