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第八十三章:両親との顔合わせ

「んー……?」

 私が目を覚ますと、見慣れない天井――いやここ最近見たことのある天井

が目に入った。

「目、覚めた?」

 梨花の温かい手が私の(ほお)をなぞった。ええと……私どうしちゃったんだっ

け?

「寒い中ずっと外にいたから……」

 ああ……梨花のご両親の目の前でキスしてるとこ見られて、その上気絶し

て倒れちゃったんだ。

「本当ご迷惑をかけて……」

 梨花は両手を振り、

「そんな、迷惑だなんて……」

 私は梨花の顔を見ながら別の事を考えていた。――怒られたりしたんだろ

うか、もう会うなとか言われたのか、もしかして手を上げられたりしたのだ

ろうか――

「ちょっと裕海大丈夫!? 顔色悪いよ」

 私は梨花の両肩を(つか)み、

「梨花……あの後、親に何か――」

「裕海。その話は裕海も聞いたほうがいいと思う」

 梨花は私の腕を下ろし、ベッドから立ち上がった。

「ついてきて、裕海」



 姿勢良く廊下を歩く梨花の後ろを歩きながら、私は必死に言い訳と謝罪の

言葉を考えていた。

 ――背後霊の話もしなくてはならないだろうか? 梨花が女の子を恋愛対

象として見ている事が知られてしまったのではないか。

 梨花は黙ったままリビングのドアを開け、私に先に入るよう(うなが)した。

 中から声や物音は一切せず。複雑な表情の梨花の両親の顔が、開いたドア

隙間(すきま)から見えた。

「――えっと……蒔菜(まきな)です」

 知ってる。とでも言うように黙ったまま座る梨花の両親と、後ろからソファ

に座るよう指示する梨花。

 黙ったまま向かい合うこと数十秒。私には数年間ほどに感じる長い時間だ

った。

「蒔菜さん……だったかな」

 やっと梨花の父親が重々しく口を開き、とりあえず居心地の悪い沈黙から

は開放された。

「梨花とその……どういう関係なのかな?」

 私はチラリと梨花を見た。――だが梨花はいつも通り真っ直ぐ前を向いた

ままで、私の助けを求める視線には気づいていない様子だった。

「えー……」

 私は脳内をフル回転させ的確な言葉を選ぼうとしたが、バクバクな鼓動(こどう)

邪魔して考えがまとまらなかった。

「私は梨花の恋人です!」

 突発的に出た言葉がそれだった。――言ったあとで「ああ~!」とはなっ

たけど、まさか目の前で顔を(おお)うわけにもいかずグッとこらえた。

「あら……」

 梨花の母親が口に手を当てた。――だよね……私何言ってんだろ。

「ううむ。恋人なら仕方が無い……梨花ももうそんな年か」

「お父さん! 別に結婚するって言ったわけじゃ無いんだから!」

「でも将来的にはそのつもりなんだろ?」

「お父さん。梨花も困ってるじゃ無いですか、それにこの間梨花が言ってた

のは結婚じゃなくて同棲――」

 あの……家族三人で盛り上がっているところ悪いんですけど――

「あの、私は……」

 梨花の父親に頭を下げられ、

「どうぞ娘をよろしくお願いします」

「だから結婚じゃないんだから~」

 梨花は可笑(おか)しそうに笑い、可愛らしく私にウィンクをした。

 ポーッと梨花を見つめていると、梨花の母親がコホンと咳払いをした。

「でも。ちょっとやりすぎよ? あんな深いキスを往来(おうらい)でやられたら――お

母さん目のやり場に困っちゃうわ」

 あの……ちょっと良いですかー!

「えっと、梨花と私が恋人同士っていうのを聞いても……(おどろ)いたり変だって

言ったりしないんですか?」

 梨花の両親は顔を見合わせ、

「まぁ確かにちょっと驚いたが――別に変だとは思わないな、梨花も裕海さ

んの事を大切に思っているみたいだし」

 梨花は私の頭を()で、

「大丈夫よ。私の両親は別に女の子が女の子好き、とかを変だって言ったり

はしないわ」

 梨花の父親がソファにドサりと座った。

「梨花が本当に好きな相手なら、別に性別なんて関係無いんだよ。私が許せ

ないのは梨花を(おど)したりして、無理やり関係を作るような人間だね」

 梨花の母親も私に微笑(ほほえ)み、

「だから、梨花の事をよろしくね?」

 なんだ良かった……私は別に非難されたのでは無く、むしろ歓迎(かんげい)されてい

るんだ。――梨花のご両親にも梨花との仲を認めてもらって……

 今私凄く幸せ――

「梨花」

 梨花が嬉しそうに首を(かし)げた。

「なに? 裕海」

「大好き」

 私は梨花のご両親の目の前で、これでもかと愛を込めて梨花を思いっきり

抱きしめた。

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