第八十一章:いつまでも待ってるから。
私は目を覚ますと、すぐに私服に着替えカーディガンを羽織って駅へと向
かった。カレンダーを見ると先負だったけど、そんな事気にしてたら探す時
間が無くなってしまう。
私は駅ビルに着くと、かたっぱしから店を出たり入ったりした。梨花に似
合いそうで、クリスマスっぽくて――私があげて喜びそうな物。
碧町付近はもう探し終わった。――っていうか十二月二十五日にクリスマ
スグッズをでかでかと売り出す店なんてあるわけ無いか。
私は希望を半分近く失いかけながらも、碧町よりもっと北の方へと電車に
乗って探しに行った。
探したけど無い。っていうか梨花は何をあげれば喜ぶだろう……それすら
分からない。今日が十二月二十四日なら、私が選んだものなら何でも喜んで
受け取ってくれるだろう、でも私は「忘れる」という恋人同士でしてはいけ
ない事ベストスリーに入りそうな事をやらかしてしまったのだ。
一日遅れでも素晴らしく思えるようなプレゼントをあげたいじゃないか。
それで昨日の悲しそうな表情が嬉しさに塗り替えられるような――
……そんな簡単に見つかれば苦労はしないけどね。
梨花にはこの間マフラーをもらって――凄く嬉しかった。
「梨花が身につけて可愛いと思えるもの――」
私はいかにもクリスマス! という物をみつけた。だがこれは少しふざけ
すぎでは無いかな、とも思いつつ……私はそれを身につけている梨花を想像
して思わずニヤけてしまったので、私はそれと可愛らしいクッキー缶を買う
ことにした。
私はクッキー缶とそれを綺麗にラッピングしてもらい、鞄につめるとすぐ
に南町へと向かった。――ここからだと結構かかるけど、梨花は今日の夜い
るかどうか分からないと言っていた。
――早く行かないと。
私は電車を乗り換えながら、南町駅に着くと――丁度来たバスに乗って梨
花の家へと向かった。――もう夕方になっており、辺りはだいぶ暗くなって
いた。
ピンポーン。玄関の呼び鈴を押したが誰も出る気配が無い。
――私はちょっと玄関から庭の方を覗き、梨花の家の車が無いことに気づ
いた。
「そっか……家族で出かけたのか」
だからといって今日までに来る! と言ってしまったのは自分であり、自
分への反省の意味も込め、梨花の家の前でしばらく待つことにした。
――大丈夫。すぐ帰ってくるよ……
私は梨花の家の前で二時間ほど待った。冬だからという事もあり日が暮れ
るのが異常に早く、もう完璧に真っ暗な「夜」だった。吐息も白く――全身
が凍えそうなほど寒かった。
「ご飯でも食べに行ってるのかな……?」
私は少し身体を動かし、近くの自販機で温かいココアを買った。
――それからしばらく経っても梨花は帰ってこなかった。もうココアは一
缶飲んでしまい、あまりその辺りをうろうろして変質者扱いされても嫌なの
で、私は黙って玄関の前にしゃがみこんでいた。
――寒いを通り越して指先やつま先が痛かった。カーディガンをしっかり
留め、自身を包み込むように座ったが――すぐに冷え切ってしまい、そんな
事は全くと言っていいほど意味をなさなかった。
神様が与えた罰なのだろう。私はさっきからそればかりを考えていた。
――どんなに裏切るような真似をしても、絶対信じてくれた梨花。そんな
素晴らしい恋人さんのクリスマスプレゼントを用意し忘れるなんて……
「最低だ。私……」
梨花に会いたい。梨花に……梨花、梨花梨花梨花梨花ぁ……!
「裕海?」
顔を上げると、そこには心配そうな表情をした梨花が立っていた。
「梨花……?」
「どうしたの裕海! 唇真っ青じゃん、どうしたのねぇ! いつからここに
いたの?」
本当私は最低だ……こんなに優しい恋人さんの事を、こんなに心配させちゃ
うなんて。
「梨花……」
「とりあえずお家入ろ?」
梨花は玄関の鍵を開け、私の身体を温めるように抱きながらリビングへと
向かわせた。




