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第七十九章:クリスマスの朝

 朝目が覚め、私は口が疲れるという表現を初めて身体で理解した。あの

後の二人の高揚感(こうようかん)はもう言葉では言い表せないぐらいに高まっており、私

たちはベッドに入ってからもずっとずっとお互いに愛を注ぎ込んでいた。

 梨花はまだ寝ているし、一人で起きていても(ひま)なので梨花が何か寝言で

も言わないかな~なんて思いながら、愛しい恋人さんの寝顔をじっくりと

眺めていた。

「ゆ……」

 梨花が何か(つぶや)いた。――もしかして、寝言?

「ゆーみぃ……好きぃ……」

 軽く顔が沸騰(ふっとう)しかけた。――でも私はそこまで簡単にはひっかかりませ

んよ。

「梨花起きてるでしょ」

 梨花は可愛らしいお目目を薄く開き「えへっ♡」と笑った。――本当も

う可愛いなぁ……♡

「梨花……♡」

 梨花も(ほお)を染め、顔を近づけたが――

「あ! そうだった、朝の口の中は汚いんだよ!」

 そう言って洗面所へと走っていってしまった。――んもぅ……律儀(りちぎ)だなぁ

……



「お待たせ!」

 梨花は顔も洗い髪も整え――ちゃんと着替えてきてた。――ちょっと待っ

て、私だけこんな格好でキスとか嫌だよ?

「私も着替えてくる……」

 立ち上がろうとした私を、梨花はベッドに押し倒し軽くキスをしてきた。

「大丈夫……そのままでも十分可愛いから」

 ニコッと笑うと、両手で顔を包み込み私が逃げられないようにして、深く

甘~いキスをされ口中が梨花味へと染まっていった。

「んぅ……♡ んっ……んんっ……♡」

 私も梨花の口内へと舌を突っ込み暴れさせた。梨花の舌と私の舌が絡まり

合い、愛らしい音をたてながらゆっくりと快楽の世界へと(みちび)かれていった。

 ――ただ私はそこで重大な事を思い出した。

「んんっ!?」

「痛っ……!」

 思わず梨花の舌を()んでしまった。――ヤバい、クリスマスプレゼント結

局あれから用意するの忘れてた!

「どうしたの……? 裕海ぃ……」

 ヤバいよどうしよう。つい四日前に誕生日にってマフラーもらったばかり

なのに……クリスマスプレゼント忘れちゃうとか、私何でこんな事……

「あ! そうだ忘れてた」

 梨花はゴソゴソとベッドの下をあさり、綺麗にラッピングされた箱を取り

出した。

「裕海! メリークリスマスっ♡」

 梨花のとろけるような笑顔。私は……思わず涙をあふれさせ、梨花を抱き

しめた。

「もぅ……裕海ったらすぐ泣くんだから」

 梨花は優しく私を抱きしめ返し、顔を向き合うと手で私の涙を(ぬぐ)ってくれ

た。

「どうしたの? 泣くほど嬉しかった?」

 私は泣きながら首を横に振り、梨花の目を見た。

「ごめんなさい……プレゼント、買い忘れちゃっ――」

 悲しそうな梨花の表情を見ていると、私はもう立ち直れそうになかった。

何故いつも私は他人を悲しませることしかできないんだろう……

「私は必要無いんだ……」

「ちょっと……大袈裟(おおげさ)――」

 梨花は私をもう一度抱きしめ、

「裕海は私にとって凄く大切な――かけがえのない恋人さんなのよ、あなた

がいなかったら……私は今でも冷たい女を演じていたかもしれない」

 梨花は精一杯笑顔を作り、

「必要無いなんて言わないで……裕海は私にすごく必要なんだから」

 明日までには必ず用意する。――言葉には出さなかったが、私は心に刻み

込んだ。

「梨花、明日は家にいる?」

 梨花は少し考え、

「分からないわ、父さんがどこか行くって言えば行くし」

 いるかもしれないのか。なら私は今日と明日二日かけて、梨花へのクリス

マスプレゼントを選びに行くわ!

「梨花! 今日はもう帰るわ、明日……もし会えたら――」

「待って裕海」

 梨花に(うで)(つか)まれ、振り返った瞬間

「ちゅっ……♡」

 優しくて甘いキス。梨花は笑顔で、

「いってらっしゃい」

 帰ってくる事を願って……いや、見越(みこ)してるんだろうな……

「いってきます」

 私は涙を()き、梨花に手を振ってから部屋を出て行った。

 ――こうとしたが、おっと危ない……着替えなきゃ。

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