第七十六章:「見られた」
「見られた」
梨花は体育座りをして、膝の上に顔を乗せもう一度、
「見られたぁ……」
普段と違う梨花を見るのは嬉しいし可愛くて、もっと見ていたいけど―
―実親に自分の趣味を暴露しちゃったようなものだから、梨花としてはそ
れどころじゃ無いだろう。
それと、そんな格好をしてると別の物が見えちゃうよ――なんて変なこ
と言う雰囲気では無いね。
「でも梨花のお母さん、別に怒ってはいなかったよね?」
私としてはフォローのつもりだったのだけれど、梨花はそのままの格好
で、
「別に怒られるような事してないし……」
すねた。今言うのも何だけど、可愛い……
「はぁ……人が愛を囁いているところに侵入するとか、信じらんない」
梨花は床の上に大の字になって転がった。――前に梨花がこの格好で寝
転がられるとヤバいって言ってたけど――
「ゴクン……♡」
ヤバい……確かにちょっと……
「裕海? どうしたの」
私は四つん這いになり、ゆっくりと梨花の真上まで移動した。
「え? 裕海? な……」
そっと顔を近づけ耳元で囁く、
「梨花……大好き」
梨花の身体がゾクっと震えた。梨花の行動の一つ一つが魅力的に見えて
くる。
私はそのまま顔を近づけ、そっと耳たぶにキスをした。
「ーっ!」
梨花の表情は見えないけど、何かを必死に堪えているような――凄く可
愛らしい声がした。耳たぶってなんか……唇みたいに柔らかい。
ちょっと唇と比べて冷たいけどね。
「裕海っ……♡ 何するのっ……んんっ……!」
梨花の甘い声が耳に入って来る。ちょこっとくわえてみたりして……
「ーっ!」
梨花は両手で顔を覆った。可愛い……さっきから身体をちょこちょこ震
わせている。くすぐったいのかな……?
「裕海っ……やめてくすぐったい……♡」
もう一舐めだけして、私は梨花の耳たぶから唇を離し、梨花の顔を覗き
込んだ。
「梨花は笑ってたほうが可愛いよ?」
ちょっとびっくりした表情で梨花はしばらく私の顔をみつめ――
「裕海ったらもう……♡」
幸せそうな表情で微笑んだ。
梨花は落ち着いたようで、ベッドの上でトロ甘な時間をしばらく過ごす
と、二人きりの時に見せるネコのような愛らしい声を出した。
「裕海ぃ……♡」
寝転がったまま身体をくねくねし始め、私はそんな梨花を優しく抱きし
める――凄く幸せな時間であった。
「裕海……♡」
「梨花……♡」
時間も場所も気にせず、ゆっくり気が済むまで愛しい相手とくっついて
いられる――まさに天国だよね、最上級の幸せを感じる事のできる時間。
愛らしい音をたっぷり出して、目いっぱい気持ちの良いキスをしたり―
―逆に音をたてないように、口の中だけで舌を暴れさせてみたり。
大好きな恋人さんと一日中一緒にいられるという幸福――私は夢のよう
な感覚へ身体も心もとろけていった。




