表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/132

第六十七章:可愛いは正義

 次の日の朝、私が学校へ行こうとすると――

「おはよう裕海ちゃん」

 姫華が見慣れない制服を着て家から出てきた。どこの制服だ? それ。

「ああ、これ? 今日裕海ちゃんの学校で受験するから、前の学校の制服で

来なさいって」

 そのいかにも優等生が行ってそう――な制服が姫華の前の制服!?

「何か、綺麗(きれい)だね……」

 姫華はクルッとターンして、

「半年も着てないからね~……一年生の終わりに転校して入った学校だし」

 あまり深く考えて無かったけど、姫華って実は超天才なんじゃ……

「でね……」

 姫華は辺りを見渡してから小声で、

「学校までの道順忘れちゃったから、一緒に行かない?」

 さっきの訂正(ていせい)。やっぱバカだわ。



 姫華は普段と違って肩ほどの髪をポニテ風にしてまとめていた。真面目さ

んな梨花と違って茶髪だから、何か一緒に登校するっていうのは新鮮(しんせん)さを感

じさせる。

「姫華って髪――」

 言いかけたところで、

自毛(じげ)だよ。()めてるわけじゃ無いの」

 だとしたら(すご)く綺麗――

「茶髪でポニテは私あまり好きじゃ無いんだけどね……」

 せっかく()めようとしたのに。



 駅から学校まで歩くことにしたけど――何か視線を感じる。やっぱ違う制

服の子って見ちゃうよね。

「裕海ちゃん、どうしたの?」

 姫華は全く気にして無いらしい。――っていうか、受験するんだよね?

良いの? 登校中単語帳見つめるとかしなくて。

「姫華余裕だね~」

 姫華はしれっと、

「前の学校で習ったところだから、多分大丈夫」

 やっぱ姫華って頭が凄く良かったりするんだろうか……よく親御(おやご)さんがこ

んな高校行くこと許したなぁ……



 教室に着いて、私はドッと疲れが出た。――何故って? 姫華を職員室に

連れて行く間、ずっと男の子の視線を感じていたからだ。別に自意識過剰と

かじゃ無くて、姫華がクセなのか……唇の(はし)っこを()めるんだけど、そのた

びに男の子が振り返って……私じゃなく姫華の方に視線を感じたのだ。

「どうしたの?」

 灯が私の頭を()でた。――ありがとう、心配してくれて。

「返事が無い。ただの……んーと何だっけ?」

 私は顔を上げ、

「何それ」

 灯は(ほお)に指を当て何か考えている様子で、

銀士(ぎんじ)が前にボソッと言ってたんだけど……え~……何だっけ?」

 灯が悩んでいる間にチャイムが鳴り、先生が入って来た。結局何なのか分

からないまま、灯は自分の席へ戻って行った。――後で姫華にでも聞いてみ

ようかな、変な事に(くわ)しそうだし。



 昼休み、私と梨花が空き教室へと向かっていると、職員室からペコリとお

じぎをして出て行く女の子が見えた。

「あら? あの人って……」

 梨花はメガネを取り出し、じっと目を()らしていたが、

「あ! 裕海ちゃ~ん」

 誰なのかを確認する前に向こうからこっちに向かって走ってきた。――っ

て、職員室の前で走るとか!

「あら、宮咲(みやさき)さん」

 梨花はかけたメガネを外し、姿勢を正した。

「本校に何のご用事で?」

 姫華は梨花の前に立ち、

「来月からこの学校に転入させていただきます」

 まだテストの結果出てないじゃん……

 姫華は髪を指でいじりながら、

「大丈夫よ、転入試験前の学校の定期試験より簡単だったから」

 梨花は(うなず)き、

「確かにここの学校の転入試験は簡単だわ……問題見たことあるけど、普段

の試験問題をちょっと難しくした感じだし」

 あのー……じゃあ私は赤点、落第ですか? ――くっ……これが優等生同

士の会話か。

 姫華は私の方を向き、

「ねえ! 一緒にお昼ご飯食べない? 私もうお腹空いちゃって――」

 梨花が身体で(さえぎ)り、

「残念! 裕海と一緒にご飯を食べるのは私よ、あなたは一人でどっかで食

べてればいいわ」

 さっきまでの(なご)やかな空気はどこに行ったんだろう。

「裕海ちゃんは私と氷室(ひむろ)さん――どっちと食べたい?」

「へ? 私っ――」

 梨花が私の肩に手を置いた。

「もちろん私よね?」

 怖い。来年からこれが毎日続くと思うと――うう、胃がキリキリしてきた。

「三人で一緒に食べない? ダメかなぁ……?」

 こんな手使いたく無かったけど――私は二人を上目遣いでじっと見つめて

みた。

「え……ええ、裕海がそう言うなら」

「私は構わないわよ? 裕海ちゃんと一緒に食べられるならっ」

 可愛いは正義! ……別に私可愛く無いけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ