第六十五章:図書館2
次の日の放課後、私と梨花は普段の空き教室では無く――碧町の図書館に
来ていた。梨花が読みたい本が絶版していて、南町の図書館には置いて無か
ったので、ここにあるか見に来たのだ。
「その本だったら……ああ、書庫にありますよ? 持ってきますので少々お
待ちください」
司書さんに言われ、梨花と私はカウンターで静かに待っていた。梨花が凄
く嬉しそうな顔でカウンター奥の扉を見つめている。梨花がそんなに読んで
みたい本って――どんな本なんだろう。
「お待たせいたしました。これですか?」
「あ、それです」
司書さんから本を受け取り、梨花は借りるためのカードを書いていた。そ
の間暇なので――私はちょっと……
私は手芸やらの本が並んでいる棚を眺めていた。――こんなに本があって
も、触って三秒で簡単に作れる編み物! とか、初心者でも一時間でできる
手芸! とか言う都合の良い本は無いんだなぁ……
「お待たせ!」
梨花が本を一冊片手に、嬉しそうに歩いてきた。手に持っているのは難し
そうなハードカバーの本だった。
「何借りたの?」
梨花は嬉しそうに微笑み、
「昔の戯曲を本にした物よ」
なるほど、外国語が書いてある。私にはさっぱり解らない。
「あ~! 早く冬休みになんないかなーっ」
凄く嬉しそう。っていうか、こんな表情豊かに感情を見せる梨花――二人
きり以外で見たこと無いかもしれない。
「ところで裕海は何探してるの?」
梨花の突然の質問に私は戸惑ってしまった。
――まさかクリスマスの贈り物をテキトーに作っちゃえ! って考えてた
なんて言えないし――
「以外……裕海ってこう言うの好きなの?」
梨花は手芸の本をめくりながら「ん?」と」首を傾げた。
「あれ? 裕海って前、編み物とか超下手って言ってなかったっけ……?」
ぐ……覚えてたか。
「もしかして裕海……」
わー! ヤバいヤバいヤバ――
「苦手を克服しようとしてるの?」
梨花の聖人のような発言に、私は思わずズッコケそうになった。
梨花は手芸の本をパラパラとめくりながら、
「女の子ってのは、一つくらい苦手な物があるほうが可愛いって」
私は苦手な物を頭に浮かべたが、軽く十個はあがるのでこのガラスの精神
の為にも考えるのをやめた。
「梨花……は?」
梨花は可愛らしくウィンクし、
「お料理っ」
そういえばそんなこと言ってたね。
図書館のトイレでこっそりキスをして、私たちは別れた。何だかこの頃梨
花が少し冷たい――まあ、姫華とあんなことしちゃった私が言うのもなんだ
けど。
私は帰りに中学時代の友人に偶然会い、近所の喫茶店でしばらく話した後
家に帰った。――やっぱこの年になると、みんな彼氏作って楽しんでるんだ
なぁ……




