第六十章:恋人同士二人きり3
「じゃあ、次は私のしよう?」
口から舌を出して、お互いの舌を舐めあうあれか――絶対大変な事になる
と思うけど――
「良いじゃん! ここ私のベッドだし。お願い! 一回で良いから」
梨花のキラキラした目。もしかして、ずっと前に百合漫画見てたら眠れな
くなったとか言ってた時読んでたのって……
そういえば、あの時梨花はサクランボを舌で転がしていた。
「裕海の舌……食べたいなぁ……♡」
梨花の顔が近づいてきた。こんな期待するような表情されて、断れるわけ
が無い。
「いいよ、一回と言わず。梨花がしたいだけ私もしたい」
梨花は嬉しそうに、
「分かった。ありがとう」
最初はちょっと舌の先が触れ合う程度。徐々に絡み合いながら、最終的に
はお互いの舌だけで無く――唇の辺りまで舐め始め、結局最初に私が心配し
た通りになった。
「はぁ……ベトベト」
「やっぱり、こうなるよね……」
梨花と私の顔の間には――二人の愛の結晶ができていた。表現は何か綺麗
っぽいけど、梨花は枕下のシーツをはがし――洗濯機に入れに行った。
乾くと洗濯面倒だしね……
私が梨花のベッドの上で大の字になって寝転がっていると、梨花が新しい
シーツを持って部屋に入って来た。
「! 裕海ぃ……?」
梨花は一瞬立ち止まり、シーツを持ったまま私をじっと見つめていた。ん?
何か私についてる?
「裕海? え、何? 良いの……?」
待って、私何かした?
――梨花は持っていたシーツを床に捨て、四つん這いになりながらベッド
の上に乗ってきた。息は荒く、顔もさっきより紅潮している。
「裕海――」
梨花は何かを言いかけ――そのまま私の身体の上に覆いかぶさった。何?
待って、梨花――どうしたの?
「裕海、裕海裕海裕海裕海ぃ……♡」
梨花は私の身体に顔をこすりつける。ちょっとくすぐったいよぉ……♡
私は梨花の頭を撫で、
「梨花、どうしたの?」
梨花は嬉しそうに笑い、
「だって……♡ 裕海がそんな大胆な格好してるんだもん♡」
大胆? 大の字で寝転がっている格好が……?
「何か――無抵抗って感じでヤバかった……♡」
梨花は私の身体に人差し指をクリクリとした。照れ隠しなのか、少々目を
そらしている。
「無抵抗だったら……何をしようとしたの?」
梨花は顔を赤らめ、
「え~……♡ 言えないよ~」
言えないような事をしようとしてたの!
梨花の表情がちょっとずつ夜の顔になってきた。毛布を片手でギュッてし
てるし――息遣いもちょっと色っぽくなってきた。
「梨花、そろそろ寝ようか?」
私は枕の下にシーツをひき、梨花はお部屋の電気を消した。私は布団と毛
布をかぶり、梨花はそこに入って来た。温かいベッドの上に二人きり――私
と梨花はお互いに顔を見合わせクスりと笑いあった。
「梨花……愛してる」
「私もよ、裕海」
お互いに身体を近づけ合い――脚を絡め、手を握り合い――今日はもうオ
ールナイトキスなんてのも良いかもしれない。そう思いながら、ゆっくりと
私は梨花との愛にとろけていった。
流石に徹夜は無理だった。結局途中で寝てしまったらしくって――起きた
らお口とお口がくっついたまま目が覚めました。――枕にはまた二人の愛の
結晶が出来ちゃってたし……文字通り乾いて結晶のよう――まで言うと気持
ち悪いのでよしときます。
別に唇が乾いちゃって取れないー。なんて展開も無く、私はボーッと梨花
が起きるのを待った。
「んん~……♡」
可愛らしく身体を伸ばし、梨花は私をちょっと見て――ニコッと笑い――
ガバっと突然起き上がった。
「え? どうしたの? 梨花」
梨花は顔を背け、しばらく黙っていたが。身体ごとこっちを見ると、
「ごめん、裕海と一緒に寝てたっての忘れてて……」
梨花は顔を赤らめ、
「嬉しさと驚きに挟まれた……♡」
私は顔が熱くなるのを感じた。寝起きのせいもあるのだろうけど――そん
な恥ずかしい事を面と向かって言われるとは……
「梨花……」
このムードでやることはただ一つ。
「何? 裕海――むぐぅ……♡」
振り返りざまに唇を奪い、もう一度ベッド上に転がり――身体同士をすり
寄せ、撫で合いながら――しばらくの間幸せな時を過ごした。




