表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/132

第六章:図書室

「じゃ、私行くね」


 灯は鼻歌を歌いながら部活へ行った。いいなぁ……好きな人と毎日楽しく過ごせて――。


「まーきなさんっ!」


 後ろから突然抱きつかれた。え? 誰?


「氷室さん……」

「もう教室誰もいないし――思わず抱きしめちゃった」


 ここの所、私の前ではこの表情で接してくれている。普段からそうしてれば良いのに。


「今日もあの教室行くの?」

「私はここで良いかも、蒔菜さんはどうしたい?」


 抱きしめられたまま話すっていうのも――何か嬉しいような照れくさいような、何とも言えない気分だけど。でも悪い気はしないかも。


「私は~――氷室さんと一緒ならどこでも良いよ」

「んぇ!?」


 氷室さんの口から変な声が出た。あれ……私何か変な事言った?


「え……ええ、それじゃあ――」



 ---



 私と氷室さんは図書室に来た。利用者は少ないけど、割と広くて立派な図書室なんだ。


「ここが良いの?」

「うん……私ここ、落ち着くんだ」


 氷室さんは本棚の本をなぞりながら奥まで歩いて行った。


「蒔菜さんは……その、閉所恐怖症とか無いよね?」

「私? 別に大丈夫だけど……何で?」


 氷室さんは私の手を握り、どんどん奥へ連れて行った。何でここの図書室ってこんな迷路みたいなんだろ。


「蒔菜さん……!」

「きゃっ!」


 氷室さんに力強く引き寄せられ、身体が密着した。温かく――お互いに心臓がドキドキしていた。

「蒔菜さん……いえ――裕海、ここで……しよ?」


 何を――なんて聞くのは野暮(やぼ)だよね、分かってるよ


「良いよ――梨花……」


 二人の唇が重なり、身体の密着度が増えた。舌は入れなかったけど、お互いに腕を回し――全身を押し付け合いながら抱きしめ合った。


「んっ……裕海、裕海ぃ……」

「んんっ……梨花ぁ……」


 夕日の差し込む図書室の奥で――私と梨花はずっとずっと……くっつき合っていた……。



 ---



「あれ? 裕海、待っててくれたの?」


 教室に戻ると、帰り支度中の灯とばったり会った。私はまだポワ~ンとしていて、言葉にならないセリフを呟いた。


「何~その(ゆる)みきった顔~……何か良いことでもあった?」

「ん~別にぃ~」


 思わず唇を舐めてしまう、えへへ……梨花の味がする……。


「私もね~良いこと、あったんだ~……じゃん!」


 灯は映画館のチケットを見せた。


「今週末、文田君を誘うことに成功しました~!」

「え~! 凄い。良かったじゃん!」

「もうね~! 可愛かったんだよぉ~……ちょっとツンデレっぽく? 『一緒に行かない?』ってチケット見せたらもう――きゃ~!」


 こんなに嬉しそうな灯は久しぶりに見た。しかし――映画か……梨花……もし私が誘ったら来てくれるかな……? ――っていうか、何で私梨花の事――ここで誘うとしたら倉橋君でしょ! どうした私!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ