表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/132

第五十二章:梨花の部屋

「ヤバいわ……」

「ヤバいわね……」

 さっきの究極(きゅうきょく)の快感を感じてから、もう五分以上が()った。――だが、

私は大変な事になってしまい……動くことが出来なかった。

「どうしよう……」

「ごめんなさい、私もはしゃぎすぎたわ……」

 そう――私は、明日のテストの勉強したところが……さっきので頭から

全部吹き飛んでしまったのだ。

「明日って何のテストだっけ……?」

「今すぐは思い出せないけど……科学はあったわ」

 何で!? 私科学に嫌われてるの? 授業はやってくれないし、苦手だ

し――今回のテストの一番の赤点教科だったから、(すご)く勉強したのに……

「本当にごめんなさい」

「いや……別に仕方無いけどさぁ……」

 梨花は顔を赤らめ、

「嫌じゃ無かったらなんだけど……今日、私の家で勉強しない?」

 梨花の家? 嫌なわけ無いじゃん! 私は真剣な表情で、

「行かせていただきます!」

 多分言った後、軽く(ほお)(ゆる)んだと思う。



 私は一旦家に帰り、勉強道具などを持って駅まで行き電車に乗った。駅

で梨花が待っていてくれるらしいから、私は道に迷うこと無く梨花の家に

行くことができる。

 私は南町に着き改札を出ると、制服姿の梨花が(たたず)んでいるのを見つけた。

「梨花っ!」

 危ない……いつものノリで抱きつくところだった。――私は踏み出した

ところで足を止め、肩をポンと叩いた。

「こっちよ――行きましょうか」

 梨花は冷徹(れいてつ)な表情で、駅前に停まっていたバスに乗った。

「遠いの?」

「バスなら十分よ、歩くと……三十分くらいかしら?」

 そんなこんなで世間話などをしているうちに着いたらしく、梨花はボタ

ンを押し、私に降りるよう(うなが)した。

「ここよ」

 梨花の家は普通の一戸建て住宅だったが――私ん()と違って駐車場に屋

根はあるし、庭も手入れされていて広い。

「あがって……今日は家族誰もいないの」

 梨花の冷徹な表情は玄関に入り、ドアを閉めるまで続いた。

「はぁ……(つか)れたわ」

 梨花の表情が元に戻った。何でこんなに警戒(けいかい)してるんだろう……

「私の部屋二階だから――早速科学から勉強しましょう、少しでもやれば

徐々に思い出せるわよ」

 大丈夫、多分そうだろう――別に記憶喪失(きおくそうしつ)になったわけじゃ無いんだか

ら。

 階段を登り、梨花に連れられて部屋に入った。――へぇ~……これが梨

花のお部屋かぁ……

 しっかりと整理された(たな)、ゴミ一つ落ちていない綺麗な絨毯(じゅうたん)(しかも絨

毯の毛が綺麗に揃っていた)、小説や参考書の並んだ本棚――の下に(かぎ)

かかった中身の見えない戸棚があるから、ひょっとしてここが――

「テスト終わったら読んでいいわよ、でも今は駄目――読んだら多分……

集中出来なくなっちゃうわ……♡」

 梨花は顔を赤らめ、目を下にそらした。――何だって? そんなに(はげ)

い百合漫画がしまわれているのか、ここには。

 私は思わず唾を飲み込んだ。……テストが終わったら――これを読みな

がら……りっ、梨花とっ……!

「だから今日はだ~めっ!」

 梨花に鼻先をツンと突っつかれた。このお姉さんみたいな表情――いい

なぁ……可愛い。



 梨花の教え方が上手いのか、私の理解力が凄いのか分からないけど(多

分前者だろうけど)、一応一時間程復習したら昨日までやったところを徐

々に思い出してきた。――これなら大丈夫、私なりには多分出来る。

「ねぇ……梨花ぁ――そろそろぉ……♡」

 私は梨花の制服の(すそ)を引っ張った。――精一杯甘えた声を出して。

「ふぅっ……」

 梨花は溜息(ためいき)をつき、

「もぅ……しょうが無いなぁ……♡」

 梨花は椅子(いす)から降り、ベッドの(はし)に座った。

「明日で最終日なんだから、ちょっとだけだよ?」

「分かってる」

 ……とは言ったものの、始めてしまえば止められる物でも無く――結局

どちらかの腰が砕けちゃうまで続けてしまった。

「ぷはっ……♡ もう一回いく?」

「ごめん……流石にもう、帰らないと……」

 窓から見える景色は真っ暗だった。――多分今日は母が家にいる、無断

外泊(がいはく)は少々まずかろう。

 私はやっぱり、最後にお別れのキスと(しょう)し一回だけ軽く優しいキスをし

て、梨花の家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ