第五十一章:最上級のお昼
「お帰りなさい……♡」
可愛らしく私を出迎えてくれたのは、小さなメイドさんこと――愛理ちゃ
んだった。
「今日のも違うらしいですけど……」
ダメ、解んない……スカートはこの間のよりは長いし――ってこら!
愛理ちゃん、背中背中!
背中にピンク色の大きなハートマークが付いていた。これはかなり目立
つ……
「愛理ちゃん……まさかその格好で、お友達とかに会って無いよね?」
「さっき妹尾君に背中に付いたゴミを取ってもらいましたけど……」
アウトー! これ男の子絶対勘違いするって……!
「妹尾君ったら……顔真っ赤でした――可愛いっ……♡」
愛理ちゃんは両手で頬を包み込んだ。――ああ、妹尾君……不憫な子。
……そうでも無いか。
私はクルクル回っている愛理ちゃんに手を振り、自分の家に帰った。
私はしばらく自室で復習をしていたが――明日に備えて早く寝た方が良
いと思い、私はベッドに潜った。
梨花の夢が見られると良いなぁ……なんてメルヘンチックなことを考え
ながら……
やはり今日も教室内は殺伐とした雰囲気だった。カリカリと何かを書く
音と、紙がこすれ合うような教科書をめくる音――
「さて……私もやるか――」
「裕海」
梨花が私の席の横を通りすがりに、ノートのコピーを机に置いた。私は
手に取って読んでみたが――何これ、凄く分かり易い……
テストに出やすいところが重点的に書かれており、教科書や参考書――
授業で先生がなんとなく言ったような事が全て書かれており、中でも重要
な部分は赤く線が引いてあり、区別しやすい。
ありがとう! 梨花。――私は心の中で梨花に心からお礼を言い、今日
の放課後はいっぱい可愛がってあげよう……なんて事を考えていた。
今日は午前中だけでテストが終わったので、私はお弁当を持ってきて無
かった。――梨花はそんな私を分かってたみたいで、
「お弁当……二つあるから一緒に食べよう?」
本当……あなた天使なんですか、私だけの可愛らしい天使さん――
帰って来れなくなりそうな妄想はここまでにして、私は鞄を持ってここ
のところしばらく行っていなかった空き教室へと向かった。
「今日は時間あるよね……?」
梨花がコソっと聞いた。――まあ時間は確かに……
梨花はお弁当を顔の下まで持ち上げ、
「前出来なかった……食べさせ合いっこしよ?」
「んぇ!? 良いけど……?」
少し前の私なら「えぇぇぇ!?」とか叫んでいただろうけど、今はもう
梨花との恋人生活にも慣れたし――私自身ちょっとやってみたかったんだ
よね~……
「昨日もキス……帰り際にちょこっとしか出来なかったでしょ? だから
――」
私は梨花を抱きしめた。
「ほら? お弁当冷めちゃうよ、もったいぶらないで早く食べよう?」
「裕海ぃ……」
梨花は可愛らしい声で、
「お弁当は最初から冷めてるよ……?」
最もな意見に、私と梨花は声を揃えて笑った。
「はい、あ~ん……♡」
梨花にお弁当を食べさせてもらう……なんて幸せな時間――いつもより
おいしく感じる……これ、梨花が作ったのかな……?
「裕海、これ嫌い? 大丈夫かな~」
梨花はほうれん草を口に運んできた。――嫌いじゃないよ、っていうか
もし嫌いでも梨花が食べさせてくれてるのに食べないわけ無いじゃん!
「裕海ったら……♡ 赤ちゃんみたい」
危うく吹き出しかけた。提案したのそっちでしょうが……!
「ほら! じゃあ次、私がやる」
時間はかかったけどお弁当箱は空になり、私は梨花用のお弁当箱を開け
た。
「ほら、あ~ん……♡」
「はむっ……♡」
ヤバい……超良い……♡ 梨花の顔が近づいて、目の前で幸せそうな顔
を見せてくれる……これ最高……♡
「は~い……♡ 梨花ちゃん」
梨花は同じように口を開けたが、顔がほんのり赤く染まっていた。
「あれ? りんご……?」
お弁当箱が空になりかけて来たところで気づいたけど、端っこの方にウ
サギの形に切ったリンゴが一つ入っていた。
「覚えてる……?」
梨花は優しく目を細め、こっちを見た。――何だっけ……思い出せない
や……
梨花は少し残念そうに、
「じゃあ、それは手で持って食べさせて?」
「うん……? 分かった」
私はよく分からずに、リンゴを手に持って梨花の前に差し出した。
「はい、あ~んだよ? 梨花」
梨花は目をつむり、ゆっくりと顔を近づけ……
「シャクッ……」
ひっ、一口で食べるかと思った。
「サクッ……シャクリ……」
一口一口を味わい、嬉しそうにリンゴをかじっていく――なんかさっき
から顔が赤くなっていくような……
「シャクン……」
最後に小さいかけらが残った。――こんな残し方したら食べれ無いじゃ
ん――
「はむぅ……」
「ー!」
梨花は私の指まで口に入れ、優しくくわえ――指先をちょっと舐めた。
「りっ……梨花!?」
梨花は上目遣いで私を見て、
「まだ思い出さない?」
そう言うと、梨花は私の指をパクっと包み――
「初めて一緒にお弁当食べた時……」
思い出した。――逆に何故忘れていたんだろう……梨花と初めて食事を
共にした……いつになっても忘れちゃいけない思い出なのに――
「梨花……」
「何? 裕海」
私は湧き上がる感情を堪えきれず、梨花を押し倒し唇を塞いだ。――も
ちろん私自身の唇で。
「んむっ……んっ……んー……♡」
梨花は無抵抗のまま私の舌をペロペロと舐めていた。――なんか、凄く
くすぐったい……
「はぷっ……♡」
梨花と私の舌の表面同士がペッタリとくっついた。――ヤバっ……なに
これ、凄すぎる……♡
「んんっ……!?」
お互いの舌がねっとりしているせいもあってか、舌同士が張り付いて…
…凄く気持ちいいけど――はっ、離れない……
「ん~♡」
梨花は幸せそうに目なんてつぶってるし……でもこの舌の向き――少し
疲れてきた。
押し倒したわけで、顔が同じ角度なのに舌だけが張り付き合ってるわけ
だから――最低でもお互いの舌が九十度傾いているわけで……
ダメ……このままじゃ舌がつる……
「んぅ……♡」
私はゆっくりと身体ごと方向転換し、顔の向きは逆になった物の――舌
同士が張り付いた状態でも、ゆっくりその感覚を味わう事ができるように
なった。
ああ……改めて思う――凄く気持ち良い……♡
「つぃー……♡」
案の定、口を開け舌を抜き取ると――見ているこっちが恥ずかしくなる
ような、トロ~んとした表情の梨花と……思わず顔が真っ赤になりそうな、
愛らしい糸が舌同士をつないでいた。
私は舌を二人の愛で作られた糸でつなげたまま、身体を元の梨花の上へ
と戻した。
糸が切れた瞬間、舌にゾクッとする快感が降り注いだ。さっきから気持
ちの良い感覚を続けられていたので――
「あっ……! ああっ……♡」
足に力が入らなくなり腰が砕け、梨花の上にドサリと倒れ込んだ。
「んっ……♡ ごめん、梨花ぁ……」
「大丈夫? 裕海ぃ……?」
梨花の表情は心配しているそれとは違った。まるで無抵抗の獲物を見つ
けた獣のように――
「あぅ……!」
梨花の手が腰周りをなぞった。撫でるように広範囲をなぞり――
「んんっ……♡ んはぁっ……♡」
腰の辺りにゾクゾクする感覚を覚えた。――ヤバいって、これはダメ!
腰周りをマッサージするように、時に優しく――時には強く……摩擦で
少し腰の辺りが温かくはなってきたけど……
「梨花ぁ……! あんっ……♡ もうダメ! 本当に駄目ぇ……!」
梨花は手を止めてくれず、さっきより手の動くスピードが早くなった気
がする。
「あっ……♡ 梨花! 梨花ぁ……むぐぅ……♡」
梨花の唇に私の口は塞がれた。ねっとりした甘~い舌が侵入し、私は精
神的にも身体的にも――もう限界だった。
「んっ……♡ んん~……? んっ!? んー! んーっ!」
梨花に口を塞がれているので、言葉にならない声ばかり発し――私は極
上の快感に身を委ねながら……梨花の身体の上で、私は頭の中身が吹き飛
んだ。




