第四十八章:幼馴染としてのステータス
「んぅ……?」
玄関の鍵がガチャリと音を出した気がした。――母が帰って来たのかな。
私は気にせずまた眠ろうとしたが、単調なリズムで階段を登っている音が耳に入って来た。――まてよ、真っ先に階段を登って来るわけ無いよなぁ。
ガチャっと音がする。今度は部屋のドアが開く音だ。
「誰!?」
私は起き上がり、ドアの方を見ると――
「あー良かった、裕海ちゃん生きてたー……」
ホッと胸をなで下ろしているが、まずあなたには聞きたい事があるんだけど。
「何で勝手に入って来たの?」
突然の進入者――姫華はキョトンとした顔で、
「だって昼過ぎになっても起きた様子が無いんだもん、何かあったかと思うじゃない!」
私は呆れて何も言えなかった。――将来この子がストーカーか何かで捕まらな
いように今から祈っておくわ。
「それにしても……」
姫華は唇を舐めた。前もやってたけど、癖なのかな。
「本当に、可愛らしい格好で――」
別に普通の室内着なんだけど……。
「ああ! 裕海ちゃん!」
姫華が両腕を広げ、ベッドの上の私に向かって飛びかかって――
「こら! また、あなたという人は!」
梨花が直前に私に覆いかぶさり、姫華に背中を向けたので――その後姫華がどこに着地したのかは、私からは見えなかった。
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「幼馴染ってのは、朝起こしに来るって大体決まってるんです……」
姫華は正座したまま、梨花の尋問を受けていた。
「私の可愛い可愛い裕海に何かあったら、許さないからね!」
可愛い可愛い裕海本人は、自分のせいでいつも喧嘩になるこの二人に対して凄く申し訳無い感情でいっぱいだった。
「お願いします! 裕海ちゃんを私にください」
結婚の挨拶かー!
「だが断る」
梨花は梨花で、いつの間に私の漫画そこまで読んだの!?
「私が最も好きな裕海を――」
「とりあえず二人とも落ち着いて!」
ついさっき感じた申し訳無い気持ちは撤回するわ……。この二人って、何でこう負けず嫌いなのかしら。
姫華は家に帰らせ、私たちはテスト勉強と息抜きのキスでその日は終わった。またあんなことになって覚えたこと全部忘れちゃった――なんて事になったら大変なので、今日は別々にお風呂に入った。――梨花に冬休みは一緒に入ろうって予約された。
「さて、今日は随分やったし――寝ましょうか?」
時計を見るとまだ夜の十一時だったが、多分このテンションの梨花と一緒に寝たら、すぐには寝かせてもらえそうに無いと思うので、私は盛大に伸びをして梨花の提案に同意した。
てっきり梨花はお布団の中でもっとキスしてくれるのかと思ったのだけど、本当に疲れているらしく布団の中に入った瞬間、寝息をたて始めた。
「梨花ぁ……」
精一杯の甘え声で名前を呼んでも返答が無いので、私は梨花の可愛らしい寝顔に軽くキスをして、しばらく梨花の顔を眺めてから、ゆっくりと夢の世界へと落ちていった。
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「……んぁ」
梨花とぺったり密着して寝たからか、物凄く幸せな夢を見た。朝起きてからも梨花を見るたびにドキドキして来る――これはヤバイぞ……。
「んんー……」
梨花はまだ気持ちよさそうに眠っている。――今の私はこの状況で我慢できるだけの精神力は無い……!
「梨花ぁぁぁ! 大好きだぁ!」
寝顔に一回キス、ほっぺたにキス、身体に腕をまわし抱きしめる――もう一回唇にキス、唇の隙間から舌を入れ――。
「んむぐっ……!」
梨花が妙な声を出して目を開けた。――ヤバい! 起きた?
梨花はにやーっと笑い、私が突っ込んだ舌を舐めとりながら、どんどん奥へと押し込んでいった。
「んむっ……んー!」
私はちょっとした悪ふざけのつもりで突っ込んだのに――梨花は私の舌を夢中で味わっている。……でも、悪く無いかも。
「んっ……、ちゅっ、くちゅっ……」
今日のキスはなんか激しい。凄く愛らしい音が、部屋中に響いている―
―梨花の舌、凄く気持ちいいよ?
「んっ……ぷはぁっ……!」
お互いに舌が抜き取られた。ねっとりと糸を引いて真ん中で切れた。こんな深いの、初めて。
「裕海、朝の口の中は汚いんだよ?」
梨花は「めっ!」とでも怒るような顔をしたけど。梨花、頬が緩みまくってるよ。
「梨花の舌は朝でも甘かったよ?」
梨花は顔をほんのり赤らめ――下を向いた。
「……もぅ」
そんな可愛らしい声を漏らしながら。